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本気の力VS改造の力


 本気を出したドゥーレは圧倒的な魔力でヴァルザーを追い込んだ。自身のプライドを守るため、ヴァルザーはポーカーから受けた改造の力を使った。


「お前を……殺す……」


 改造の力を使った直後、白目を向いたヴァルザーはドゥーレに向かって走った。


「私を殺したいって気持ちは残っているのか」


 ドゥーレは殺戮本能だけで動いているのだと思っていた。しかし、ヴァルザーから感じる殺意で多少なりとも理性はあると察した。


「おらああああああああああああああ!」


 叫び声と共に、ヴァルザーはドゥーレに殴りかかった。大振りの拳はドゥーレに当たらなかったが、拳がドゥーレの頬をかすり、切り傷を作った。


「ふむ。攻撃速度が上がったか……」


 この行動でヴァルザーがどれだけ改造で強くなったのかをドゥーレは認識した。攻撃を放った際、待った風で地面の小さな砂の粒がヴァルザーの皮膚に当たった。その瞬間、ヴァルザーの血管が破裂した。


「ぐああああああああああああああああああ!」


「攻撃力を上げたけど、その分防御力が犠牲になったか」


 悲鳴を上げるヴァルザーを見て、冷静にドゥーレは改造した後の不便な点を確認した。だがその時、ヴァルザーは歯を食いしばり、右手から紫色の炎を発してドゥーレを睨んだ。


「お前を……殺してやる!」


「はぁ、殺意だけは一人前だね」


 ドゥーレはそう言って、ヴァルザーの炎をかわした。




 シュガーはストブたちに改造の力のことを話していた。


「流石シュガーさん。この短時間でポーカーの改造手術のことを見抜いたのですね」


「わたしだけではありません。カーボンさんが見張っていなければ不安でした。カーボンさんがいてくれたからこそ、この時間で見抜けたのです」


 と、シュガーはクララにこう言っていた。だが、カーボンはシュガーが改造のことを調べるためにとんでもないことを行っていたのを思い出し、少し冷や汗を流していた。そんな中、ストブとヴァーナは強い魔力を感じた。


「ドゥーレの奴、苦戦しているようだな」


「いや、この魔力だと……相手が改造の力を使ったかもしれない」


 二人の話を聞き、シュガーはストブたちの方を振り向いた。


「急ぎましょう。ドゥーレさんに改造手術のことを話せば、きっと打開策を見つけるはずです」


 その後、シュガーたちは急いでドゥーレの元へ向かった。




 ドゥーレは風を使い、ヴァルザーの攻撃をかわしていた。


「クソが! 何故だ、何故当たらない!」


「そんな大振りな攻撃、簡単に見抜けるよ」


 と、ドゥーレはこう言葉を返した。だが、その顔には冷や汗が流れており、焦りの表情も見えていた。このままヴァルザーが攻撃を続けていれば、出血多量で息絶えてしまう。攻撃の際に発した風で小さな砂粒が体に当たり、血管が破裂して血を流すことをヴァルザーは気にしていなかった。血を流した時の妙な温かさと、痛みをヴァルザーは感じていないのだ。


「参ったね。戦っていたら相手が死にましただなんて、後味が悪いよ」


 避ける中、ドゥーレはそう呟いた。その時、シュガーたちがやって来た。


「ドゥーレさん! ポーカーの改造手術のことは私が解明しました! 今の私なら、あの筋肉ダルマを治すことができます!」


「傷つけるのはしょうがないから、あのデカブツの動きを止めて!」


 シュガーとクララの言葉を聞き、ドゥーレはにやりと笑った。


「待っていました! あいつが死なないなら、こっちから動けるよ!」


 ドゥーレは風を発し、ヴァルザーの動きを止めた。


「が! うおおおおおおお!」


 周りの風を振りほどこうとしたヴァルザーだったが、体を動かすことはできなかった。


「おい、無理矢理あいつの体の動きを止めているように見えるが……大丈夫か?」


「ええ。ドゥーレ、上手く風を使っています。傷つけないよう、ただの強い風で体を抑えつつ、地面から飛んで来る小さな砂の粒も体に当たらないように調整しています」


 カーボンにこう説明したクララは、シュガーがヴァルザーに近付いて行くのをドゥーレに伝えた。


「そろそろ止めて、シュガーさんが手術するから」


「オッケー」


 ドゥーレはヴァルザーの周囲に発している強風を止め、上下から強い風を発し、ヴァルザーの動きを固定した。


「今のうちに手術して」


「はーい。分かりました」


 シュガーは両手にメスを持ち、愛らしい笑顔でドゥーレに返事をした。理性が少し残っているヴァルザーは、その時のシュガーの笑顔を見て、恐怖心を抱いた。




「ふぅ……これだけ戦えばもういいだろう」


 レースンは銃をしまってこう言った。セントラルタワーへ向かったクリムたちの無事を祈りつつ、周囲の片付けを行おうと思っていた。その時だった。


「ふぃー。なーんだ、皆やられちまったのか?」


 大きな欠伸と共に、大きな男が姿を現した。ギルドの戦士は大男を見て、驚きつつも武器を向けた。


「誰だ、貴様!」


「何者だ? 話せ!」


 武器を向けられたが、大男は笑いながらこう言った。


「ガッハッハ。そんな安物の武器を向けられても驚かねーよ。それに、武器なんて頼る奴の質問なんて、答える気にはならないさ!」


 そう言って、大男は蚊を潰すように大きく両手を広げ、目の前の戦士の頭に両手をぶつけた。戦士は小さく悲鳴を上げ、白目を向き、目や鼻や口から血を流した。


「あらま、弱い頭だな。頭は頑丈じゃないと死ぬぜ」


 大男はそう言うと、倒れた戦士の頭を踏み潰した。別の戦士は武器を使わずあっさりと殺された仲間を見て、恐怖で震えていた。大男は震えている戦士を見て、にやりと笑ってこう言った。


「大丈夫だ。運が良ければこいつと同じ場所に逝くことができるぜ!」


 と言って、左手の手刀で戦士の顔を貫いた。突如現れた大男、そして彼の残虐な行為を見て、レースンは驚きのあまりその場で立っていることしかできなかった。


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