下劣な炎
ドゥーレはクララたちとその敵の魔力の衝突が弱まったことを察し、炎を操る男にこう言った。
「後は私たちだけだね」
「クケケケケケケ。そのようだな。だが、勝つのは俺。その後でお前の仲間も灰にしてやるよ」
「私の友達は滅茶苦茶強いよ。それと、今思っていたこと、言うね」
ドゥーレはそう言うと、敵の目の前に接近してこう言った。
「あんた弱いよ」
「あ?」
いきなり弱いと言われ、炎を使う男は茫然とした。少しして男は笑い出した。
「何言っている? 俺は強い! 貴様のような小娘など相手にならん!」
「小娘の挑発に乗っかっているようじゃあ器が知れるよ」
怒りだした男を見て、ドゥーレは呆れてこう言った。そんな中、男は魔力を開放して炎の輪を作り出した。
「受けるがいい。俺、ヴァルザーのファイアーチャクラムを!」
ヴァルザーは炎の輪、ファイアーチャクラムをドゥーレに向けて投げた。この時の攻撃を見て、ドゥーレはあることを察した。
「避けないと輪切りにされるぜ!」
「ならないよ」
ドゥーレはそう言うと、下から強風を発した。強風を受けたファイアーチャクラムは炎を消しつつ、そのまま消えた。
「俺のファイアーチャクラムより強い風で消したというわけか」
「もう一度やってみなよ。今のファイアーチャクラムだっけ? 見切ったから」
と言って、挑発するようなしぐさでドゥーレはこう言った。その言葉を聞き、ヴァルザーは苛立ちながら叫んだ。
「ならお望み通りやってやるよ! 今度のファイアーチャクラムは避けられぬぞ!」
挑発を受けたヴァルザーは、無数のファイアーチャクラムを生み出し、ドゥーレに向けて投げた。今度のファイアーチャクラムは不規則に動くため、風で消すのは困難だった。
「フハハハハハハハハハハハハハ! 消せるものならやってみろ!」
「分かった」
ドゥーレはヴァルザーの後ろに回っていた。ヴァルザーはファイアーチャクラムを生み出すのに集中していて、ドゥーレの動きを見ていなかったのだ。ドゥーレの声を聞いたヴァルザーは後ろを振り返ったが、ドゥーレの風を纏った拳が放たれていた。
「グボォッ!」
風により、切り傷ができたヴァルザーはそのまま後ろに倒れた。それと同時に、宙を飛んでいたファイアーチャクラムが地面に落ちた。
「ぐ……」
「あんた、見えない火の糸であれを操っていたね。私の動きを見て操作して、攻撃しようと考えていた。似たような技を使う奴と何回も戦っていたし、クリムもあんたと同じ似たような技を使えるから、大体の弱点とか分かっているから」
「く……クソッたれが! ならこいつでぶっ飛ばす!」
ファイアーチャクラムが破られ、無意味だと考えたヴァルザーは、両手に火の魔力を開放し、巨大な炎の大剣を作り出した。
「バーニングクレイモア! 本物のクレイモアと同様、威力があるぜ!」
「そんな重い物振り回すだけで疲れると思うけど」
「そうでもない。こいつは炎でできている。炎だ! 炎に重さなどない!」
次のヴァルザーの攻撃は炎の大剣、バーニングクレイモアによる攻撃だった。重さのない攻撃を見て、ドゥーレは動揺した。軽い剣のように素早く攻撃を放ってきたため、攻撃をかわすことができなかったのだ。
「うっ!」
「やーっと一発入った! このままお前を斬り刻んで、焦がしてやる!」
悲鳴を上げたドゥーレを見て、このまま攻撃をすれば勝てるとヴァルザーは思った。だが、突如ドゥーレの魔力が変わった。
「これはまずいね……仕方ないか。本気を出させてもらうよ」
「何?」
少し動揺していたヴァルザーだったが、ドゥーレの目つきを見てさらに動揺した。
セントラルタワー内。バカップルとエイトガーディアンは周囲に警戒しながら移動していた。その時、クリムがドゥーレの魔力が変わったことを察した。
「何だ、この魔力? ドゥーレ……なのか?」
「ええ。久しぶりにドゥーレが本気を出すみたいです」
と、静かにクリムはシュウにこう言った。シュウはこれまでのドゥーレの言動を思い出したが、マイペースでおっとりしているドゥーレの印象しか思い出せなかった。
「うーん……本気を出したドゥーレのイメージがつかめない」
「あの子もやる時はやります。本気を出すとかなり疲れると本人は言っていましたが……少しこの場が荒れるかもしれませんね」
「え?」
クリムの言葉を聞き、シュウは驚いた。
戦いを終えたストブたち三人も、ドゥーレの魔力が変わったことを察し、行動に移そうとしていた。しかし、倒した敵がいつ起き上がるか分からないため、傍にいないと止められないのだ。
「くっそー、すぐにドゥーレの元に行きたいけど……こいつらをほっとけないし」
「止めを刺すか?」
ヴァーナは左手の手刀に電気を発してこう言った。それを見たクララは慌てながら叫んだ。
「止めなさい! そんなことをしたら裏ギルドのバカと同じよ!」
「冗談だ。それに、我にいい案がある。二人がこいつらを見張り、誰か一人がジャックたちを呼びに行く。それでいいのではないか?」
珍しいヴァーナの名案を聞き、クララは声を上げた。
「いい案だとは思うけど、二人で三人を止められる?」
「先ほどの戦いでそれなりに傷を受けたし、完全な状態じゃないだろ」
「そうだけど……」
三人が話をしていると、シュガーとカーボンの姿が見えた。
「あ! シュガーさん! カーボンさんもいる!」
「来てくれたのか」
シュガーとカーボンが来たのを察した三人は、安堵の息を吐いた。




