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事件が終わった後

 クルーガーの事件から数日が経過した。キャニーは自室で事件の事をまとめた報告書を書いてる途中、リラックスの為に背伸びをしていた。そんな中、扉からノックする音が聞こえた。


「はい」


「俺だぜキャニー。話があるから入っていいかい?」


「ボーノさんですか。どうぞ」


 キャニーの返事の後、金髪アフロの男性が入って来た。


「この前の事件、お疲れさん。小物かと思ったが、結構大物だったらしいな」


「ええ。最初はマフィア絡みの薬物事件かと思っていましたが」


「ほんとは俺も行きたかったが、別件が重なったからねぇ」


「しょうがないですよ。我々は他とは違って特殊な依頼がわんさか入ってきますし」


「ま、今日は珍しく全員いるんだけどな」


「え……」


 この直後、水色の三つ編みをした少女がうざそうな笑い声と共にキャニーの部屋に入って来た。


「聞いたわよあんた‼ 結構デカい依頼をこなしたらしいじゃないの‼ 田舎のギルドの戦士と一緒に‼ それに、あんまり活躍できなかったらしいじゃない‼」


「うるさいわよフィアット。それ以上騒ぐとその口が永遠に動かなくしてやるわよ」


「あーれー、殺されるー」


「落ち着け馬鹿。ま、田舎にも俺達みたいに優秀な戦士がいるってこった。キャニー、落ち着いたらでいいからあとで皆に顔を合わせに来いよ」


「ええ。分かりました」


 その後、ボーノはキャニーを挑発するフィアットを引っ張り、部屋から出て行った。数分後、資料をまとめ終わったキャニーはエイトガーディアンが集まる部屋へ来ていた。キャニーは開いている机に座り、他のメンツが来るのを待った。


 しばらくすると、黒髪で長髪の男性と、銀色で長髪の少女がやって来た。


「よー、キャニー」


「数日ぶりです……」


「スネックさん、リナサちゃん」


 スネックとリナサと呼ばれた二人は、それぞれキャニーの横の机に座った。


「資料はまとまったのか?」


「ええ。今持ってますが、目を通しますか?」


「タルトさんの話の後で見るよ。リナサ、お前も興味あるだろ?」


「うん……」


 リナサの返事の直後、後ろから怒鳴り声が聞こえた。この声を聞き、スネックはため息を吐いた。


「まーたあいつらケンカしてるのか」


 この言葉の直後、金髪の少年と濃い青でポニーテールの少女が言い争いをしながらキャニー達の方へ歩いて来ていた。


「だーかーらー‼ お前の邪魔が入らなければ楽に依頼を片付けられたんだって‼」


「あのままあんたが突っ込んでたら、確実にあの倉庫は爆発してたのよ‼」


「俺があのくらいの爆発でくたばるわけねえだろ‼ 俺はお前と違ってタフなんだよ‼」


「何そのセリフは!? あーあ、あんたの命なんて救わなければよかった‼」


「おい、静かにしろよハヤテ、ナギ」


 丁度後ろにいたボーノが、ハヤテとナギの頭を叩いて注意した。


「相変わらず仲がいいね~」


「「黙れフィアット‼」」


 茶化すフィアットに対し、ハヤテとナギは同時にこう言い返した。その後、キャニーを含めた七人が机に座っていた。


「タルトさん遅いわね」


「トイレか?」


 そんな話をしていると、慌てて廊下を走る音が聞こえた。その直後、扉が開いた。


「すまない、身だしなみを整えていたら遅くなってしまった」


 そう言って出てきたのが、エイトガーディアンのリーダー的存在、タルトである。タルトは頭を下げながら、自分の机へ向かって行った。




 その後、キャニーはエイトガーディアンの会議でこの前の事件の事を伝えた。フィアット以外のメンバーは真剣にキャニーの話に耳を通していた。話が終わり、タルトが口を開いた。


「そうか、あの最年少の賢者がハリアの村のギルドに属しているのか……」


「はい。彼女はあそこの出身らしいです」


「ねえキャニー、このカッコイイ人は誰?」


 ナギがシュウの写真を指さし、キャニーに聞いた。


「この人はシュウ・バイソン。ハリアの村のガンナーで、かなり優秀な人です」


「へぇ。彼女は?」


「最年少の賢者、クリム・カスタードと付き合っています。相当なバカップルです」


「……チッ」


 ナギの舌打ちが流れる中、タルトはシュウの写真をずっと見ていた。それに気付いたボーノがこう聞いた。


「タルトさん、この坊主がどうかしたのか?」


「いや、行方不明の息子と同じ名前だったから……」


 この言葉を聞き、キャニー達はある事を思い出した。


「そうでしたね……」


「あんた、妻と子供を無くしてるんだよな」


 17年前、タルトは妻と生まれたばかりの子供と旅行に行くつもりだった。だが、旅行中にタルトが病気になり、タルトはずっと外出先のホテルで休んでいた。妻にはお前だけでも楽しんで来い。と言って、妻と子供だけでも旅行を楽しませたいと考えていた。


 しかし、妻と子供は外出中に盗賊に襲われてしまったのだ。タルトの妻は殺され、タルトの子供は行方不明になってしまった。


 病気が完治したタルトはその盗賊団を襲撃し、子供の事を聞いた。だが、子供の事は盗賊団にもわからなかった。盗賊団曰く、妻を殺したグループが金目の物を奪って先に戻り、自分達が処理をしようとしている時に現地のギルドが通りかかり、戦いになった。そのあとの事は分からないと。


 それから、タルトはずっと行方が知らぬ子供を探していたが、何も情報は集まらなかったのだ。


「……まさか……な」


 タルトはシュウの写真を見て、小さく呟いた。その呟きを聞いたフィアットが、タルトにこう言った。


「そんなに気になるなら、ハリアの村に行けばいいじゃないですか‼」


「え……」


「休みを取って行ってきてくださいよ‼ タルトさんがいない間、私達で何とかします‼」


 その後、他のエイトガーディアンもフィアットと同じようなことを言った。


「皆……ありがとう」


 タルトは頭を下げ、礼を言った。

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