表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

408/448

反撃の糸口


「これで一応大丈夫かな」


 ティラはミゼリーの腹を包帯で覆った後、治療用の道具をしまった。ミゼリーの手当て中に襲われるだろうと考えていたティラだったが、敵は攻撃を仕掛けてこなかった。


「ふぅ、敵の様子が気になるねぇ」


「多分、幻に苦しめられているのでしょう」


 ミゼリーの言葉を聞き、ティラは反撃の糸口がどういう意味であるか察した。


「幻だね」


「はい。ただ、相手との距離が離れているため、幻覚症状に陥るまでは時間がかかると思います」


「いや、もう相手は幻覚症状になっている可能性があるよ」


 ミゼリーにそう言うと、ティラは敵がいる可能性がある場所に視線を向いた。




 ティラとミゼリーと戦っている敵、ラリオとモンスは下品な笑い声を発しながら会話をしていた。


「ヘッヘッヘ、あと少しで敵を殺せるぜ」


「どうやって殺そうか。裸にひん剥いてズタズタにするか、俺の銃でハチの巣にするか」


「どっちも素晴らしい殺し方だな」


 ラリオはモンスが持つ改造アサルトライフルを見て、にやりと笑っていた。ラリオとモンスが攻撃を仕掛けてこなかったのは、余裕の気持ちを持っていた。確実に倒せるだろうと思い、あえて攻撃を仕掛けてなかったのだ。


「さーて、そろそろぶっ殺しますか。どこにいるのかな?」


 ラリオは目をつぶり、神経を集中させてティラとミゼリーの位置を探知しようとした。しかし、ラリオは目印としているティラとミゼリーの魔力が多数あることに驚き、声を上げた。


「おいラリオ、声を出すと居場所がばれるぞ」


「わ……悪い……おい、俺はこっちだぞ」


 と、ラリオは別方向を向いているモンスにこう言った。ラリオの声を聞き、驚きの表情を見せながらモンスはラリオの方を振り向いた。


「あれ? お前いつの間にこっちに」


「俺は移動してないぞ。どうした、疲れで神経がいかれたか?」


「疲れてないし、いかれてもない。んー? どういうことだ?」


 何かがおかしいと二人は感じた。今まで普通に戦っていたのに、突如相手の魔力を多く探知してしまい、別の方向を向いて話をするという変な行動をとってしまうのだ。どうしてこうなったと考えている中、発砲音と共に弾丸は二人が隠れている岩盤を貫通して飛んで来た。


「敵だ!」


「クッ、俺たちの居場所を察知したのか!」


 二人は別々の岩盤に隠れ、ティラとミゼリーの様子を伺った。離れてしまった二人は手で合図をし、次にどう動くか相談した。相談の結果、二人は接近戦を仕掛けることにした。ミゼリーが銃弾を受けて傷を負ったことを魔力の探知で知っており、ティラとミゼリーは隠れている場所から一歩も動いていないことも察している。傷を受けて動けないのだろうと考え、慣れない接近戦で戦うことにしたのだ。


「一気に距離を詰めるぞ、モンス!」


「ああ! このままやっちまおうぜ!」


 そう言って走り出した二人だが、突如周りの景色が歪んだ。


「なっ……」


「何だ……こりゃ?」


「まさか……お前も?」


「それじゃあラリオも……」


 二人は察した。今、二人同時に周りの景色がおかしくなっていると。


「う……敵の一人が……何かやったのか?」


「可能性はある。ぐ……幻術を使うか……それとも変な薬か……」


「幻術かもしれない。幻を使う奴が……相手だったかも……」


 その直後、発砲音が聞こえた。ラリオは身構えようとしたのだが、その前にモンスの悲鳴が聞こえた。


「モンス!」


「ぐ……足をやられた……」


 モンスが足を抑えながら、うずくまっているのをラリオは目にした。治療しようとしたのだが、急にだるさを感じ、体が急に重くなった。


「体がだるい……おかしいな、さっきまでは動けたのに……」


「ラリオ……」


 モンスは不安そうにラリオに声をかけた。だが再び発砲音が響き渡り、倒れているラリオの腕を弾丸が貫いた。


「ギャアアアアアアアアアアア!」


「チクショウ! よくも俺たちをこんな目に……」


 何が何でもぶっ殺してやる。そう思いながらモンスは動こうとした。しかし、発砲音が連続して響き渡り、弾丸が二人の体を撃ち抜いた。


「ガハッ……」


「クソ……」


 追い打ちを受けた二人は、魔力を開放することなく気を失った。




「ふぃー、どうにかなったね」


 ティラは倒れているラリオとモンスに近寄り、気を失っている二人を動けないように縛った。ミゼリーは傷を抑えながらティラに近付き、ラリオとモンスの様子を見た。


「私の魔力が効いたみたいでよかったです」


「恐ろしいねぇ。ただの幻覚じゃあないよね」


「はい。いつも使う魔力に少し手を加えて、相手の体に負担がかかるように調整しました」


「幻術にかかったと同時に、体に異常を与えて動けなくさせる。恐ろしいねぇ」


「今回は相手が相手です。こちらとしては命を奪いたくないので、どうやって相手の動きを止めるかと考え、今の技を編み出しました」


「ハハッ、熱心なことで大変よろしい」


 ティラはそう言ってラリオとモンスを縛り続けた。そんな中、ミゼリーは大きな魔力を感じた。


「ティラさん、早くしましょう」


「分かっているよ。でかい魔力だろ。それもとんでもない強さの」


「シュガーの元に近付いています」


「戦闘能力がないシュガーから潰すつもりだね」


「呑気に話している場合じゃないですよ、早く行かないと」


 焦っているミゼリーに対し、ティラはこう言った。


「大丈夫だよ。どうやら助っ人がいるみたいだ」


「え? 助っ人って……」


 その直後、別の大きな魔力をミゼリーは感じた。この魔力を感じ、ミゼリーはカーボンがいることを察した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ