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武器使いの戦い


 ミゼリーとティラは、強い魔力が消滅したのを察し、誰かが戦いに勝利したと確信した。


「誰かが勝ちましたね」


「ラックだね。ジャックとシュガーの魔力はまだ強いままだ」


 ティラの言葉を聞き、ミゼリーは魔力の探知を行った。ティラの言う通り、ラックの魔力とぶつかっていた何かの魔力が消えていた。


「無事かしら」


「無事だと思うよ。ま、この目でちゃんと無事を確認しないとね」


 ティラがこう言うと、魔力の弾丸が頬をかすめた。出来た擦り傷を触り、血を拭ってティラは舌打ちをした。


「よくも私の顔に傷をつけやがったな。女の顔に傷をつけたこと後悔させてやる」


 傷を受けたことでティラは少し本気になり、スコープを付けたライフルを構えた。そんなティラを見て、ミゼリーは心の中でいつも本気で依頼に取り掛かってくれればいいのだけど。と、思った。




 ジャックは手斧を使い、目の前の敵を攻撃していた。敵は両手に盾を装備し、ジャックの攻撃を防いでいた。


「ふん。そんなものか?」


「黙っていろよ!」


 ジャックは手斧をしまい、槍を装備して連続攻撃を仕掛けた。敵は盾をしまい、ジャックと同じように槍を装備して振り回した。


「グッ!」


 連続攻撃の途中でジャックは攻撃を止め、後ろに下がった。敵が槍を振り回したせいで、連続の突きが妨害されたのだ。


「槍の扱いは俺の方が上のようだな」


「そうでもねーさ」


 ジャックは魔力を開放し、高く飛び上がった。敵はジャックが上空から落下し、その勢いをつけて攻撃すると予測した。敵の予測通り、ジャックは落下時の勢いをつけて攻撃を仕掛けてきた。しかし、上空に飛び上がった際にジャックは槍から大剣に装備を変えており、そこまで予測できなかった敵は強烈な一閃を体に受けた。


「ぐおおおおおおおおおお!」


「ヘッ、ようやく一発入ったぜ」


 攻撃後、ジャックは敵の反撃から身を守るため、後ろに飛んで敵から下がった。だが、攻撃を受けた敵は血を流しながら悲鳴を上げていて、反撃する余裕がなかった。


「どうやらあの一発が効いたみたいだな」


「グッ……このバツメウにダメージを与えるとは……気に入ったぞ、お前」


 バツメウはにやりと笑った後、魔力を使って傷を治した。ジャックは少し動揺したが、バツメウの傷はまだ完全に癒えてないことを察しし、冷静になった。


「傷は残ったがまぁいい。もっと楽しもうぜ!」


 そう言って、バツメウは両手に剣を持ってジャックに斬りかかった。ジャックは攻撃をかわしながら、バツメウにこう尋ねた。


「おい、仲間が一人死んだのに、お前は敵を討つとか俺が憎いとか感情はないのかよ」


「多少はあるさ! ブランズが死んだのは悔しいが、ポーカーさんの改造でああなった! 俺はああならないようにお前をぶっ殺す!」


「おいおい、お前みたいな脳筋が、俺を殺すことなんてできないぜ!」


 ジャックはバツメウの攻撃の隙を狙い、ナイフを装備してバツメウの脇腹に深く突き刺した。この一撃で少しは動きが鈍るだろうとジャックは思ったが、ナイフが刺さったバツメウはにやりと笑い、ジャックにこう言った。


「こんなちっぽけな攻撃で俺を止められると思っているのか?」


「あぁん?」


 ジャックが不審そうに声を漏らした直後、バツメウは鼻を鳴らし、体の筋肉を膨張させた。その勢いで、刺さっていたナイフが飛んで行った。


「な……体が……」


「俺は鍛えまくったせいで、筋肉がモリモリだ! 更に、長年のトレーニングのおかげで、魔力で筋肉を操ることに成功した! 筋肉を操れば攻撃力も防御力も自由自在に操ることができるのだ! こんな風になぁ!」


 バツメウは右腕に魔力を使い、膨張させた。動揺して身動きが取れなかったジャックはバツメウの攻撃に反応が遅れ、強烈な一撃を受けてしまった。


「グフッ!」


 バツメウの一撃を受けたジャックは物凄い勢いで飛んで行き、少し離れたビルの残骸に激突した。


「が……がぁっ……」


 瓦礫から動こうとしたジャックだったが、バツメウは魔力で両足の筋肉を強化し、猛スピードでジャックに飛んで行った。その時、バツメウは刀を装備していた。近付いてくるバツメウを見て、ジャックは少し驚いた。


「教えてやるよ。力があれば技とか考えとかなくても、戦いに勝てるって!」


 バツメウは叫びながら、居合斬りを放った。バツメウは居合斬りを放った瞬間、勝利を確信していた。勝利に酔いしれ、刀を鞘に納めようとしたが、近くで金属片が落ちる音が聞こえた。何が落ちたのか確認すると、それは刀の刃だった。


「え?」


 もしかしてと思い、バツメウは手にしている刀を目にした。そして、言葉を失った。刀の先端は、折れていたからだ。


「え……いつの間に……」


「驚いたよ。俺が何もしないって思っていたのか脳筋野郎」


 瓦礫にいたジャックはバツメウに接近し、腹に槍を突き刺した。奇襲を受けたバツメウは口から血を吐き、ジャックの方を向いた。


「ど……どう……し……て……」


「お前は俺を半殺しにするだろうと予測した。お前みたいな奴は、一撃で敵を始末するよりかはわざと手加減してなぶり殺しにするだろうって思った。だから、居合で斬るのは一撃で敵を仕留めることができる首や、心臓付近じゃなく、へその辺りだと俺は予測した。だから俺は、腹全体に魔力を集めて防御力を固めた。その結果、腹が鉄みたいに硬くなった」


「だけど……俺の居合は……何でも……斬ることができるのに……」


 ジャックはバツメウの腹から槍を引き抜き、こう答えた。


「答えは簡単だ。お前は力で敵を斬ろうとした。剣や刀は力じゃなくて技で扱う物だ。力で斬ろうとしたら、何も斬れないぜ」


 と言って、ジャックは槍をしまった。


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