力の代償
タルトたちエイトガーディアンの面々と共にセントラルタワーへ向かうバカップルだったが、突如大きな魔力を感じたため、動揺した。
「何? 今の魔力?」
キャニーは強くなった魔力に驚きつつ、後ろを振り返った。
「恐らく、アロウの部下です。これだけ強くなったのは、ポーカーの手によって改造されたのでしょう」
「改造って……」
「まさか」
クリムの話を聞いて、フィアットとハヤテはプラモデルのような改造を思い浮かんだ。二人の顔を見て、ボーノは呆れながらこう言った。
「多分お前らが思っている改造とは違うぞ。クリム、お前が言いたいのは人体の改造だろ」
「はい。体を改造して、魔力や体力を異常に上昇させたのです。その代償として、死ぬ恐れがあります」
「やはり……」
タルトがそう呟いた直後、リナサがシュウに近付いてこう言った。
「ねぇ、クリムお姉ちゃんの友人がこっちに来ているけど……」
「ストブたちが?」
「嘘でしょ、ジャックさんたちと一緒にいると思ったのに」
クリムは飛んで来るストブたちが来るのを待ち、到着したと同時にストブたちに近付いた。
「ちょっと! どうしてこっちに来たの?」
「お前の親友として、あの野郎をぶっ飛ばしに来たぜ!」
「チュエールの汚点をぶっ飛ばしたいのよ。お願いクリム、今回だけ私たちのワガママに応えて」
あまりわがままを言わないクララの言葉を聞き、バカップルは動揺した。そして、クリムがこう言った。
「分かった。守れるかどうか分からないけど、自分の身は自分で守ってね」
「分かっているよー」
「フハハハハハハハハハ! 汚点は我らの手で取り除く!」
「無茶はするなよ」
タルトは笑い始めたヴァーナを見て、こう言った。
ラックは異常に体が膨張したブランズを見て、動揺していた。立ち止まっているラックにブランズは接近し、大きくなった右腕をラックに向けて振り下ろした。ラックは強烈な一撃を盾で防いだが、盾から攻撃の衝撃が左腕に伝わり、痺れ始めた。
「グッ!」
「どうやら今の一撃は効いたようだなぁ」
苦痛の表情のラックを見て、ブランズは笑みを浮かべた。ラックは距離を取って左腕の痺れが収まるのを待とうとしたが、ブランズは両手に魔力を発し、巨大な塊を作り出した。
「おお……少しだけ魔力を出しただけなのに、これほどの塊が作れるとは」
ブランズはポーカーの改造に感謝しつつ、巨大な塊の魔力をラックに向けて放った。猛スピードで飛んで来る魔力の塊を見て、剣を使って空に向けて斬り飛ばそうと考えた。しかし、剣を構える隙にブランズは猛スピードでラックの背後に回り、ラックを蹴り飛ばした。
「そうはさせねぇぜ! あの塊喰らってぶっ飛びな!」
蹴り飛ばされたラックは、態勢を整えることができず魔力の塊に命中した。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
魔力の塊の中は熱く、そのせいでラックの肌は焼け、炎が発した。このまま焼かれたら死ぬ。生きていても大きな痛手を負うと考えたラックは、魔力を開放して何とか塊から抜け出した。焼けるように熱い空間の元から脱した直後のせいか、ラックの体には火が残り、煙が出ていた。
「ぐ……うう……」
「どうやら虫の息のようだな!」
ブランズは大ダメージを受けたラックに近付き、再び巨大な魔力の塊を作り出した。
「フッフッフ、これはさっきよりも強い魔力で作った塊だ。入ればあっという間に丸焼けだ」
「そうは……させるか!」
ラックは気合で立ち上がり、水の魔力を使ってブランズに攻撃した。飛んで来る水を見て、こんなのが効くはずがないと思ったブランズは、避けることも防ぐこともせず、飛んで来る水を受けた。その直後、水が触れた個所が破裂し、大量に血が流れた。
「なっ……おわああああああああああああああああ!」
何が起きたか分からなかったブランズだったが、破裂して数秒後に腕に激痛を感じ、作っていた魔力の塊も消えてしまった。突如破裂したブランズの腕を見て、ラックは動揺した。
「まさか……」
ラックは痛み苦しむブランズに近付き、右足を突いた。その直後、ブランズの右足は小さな破裂音を発し、血が流れた。
「ギャアアアアアアアアアアアアア! 触らないでくれよ!」
「す……すみません」
苦しむブランズの声を聞き、思わずラックは謝った。ラックは察した。ポーカーの手術で魔力、体力が強化できたブランズだったが、体がちょっとした衝撃で風船のように破裂する体になってしまったのだ。
「これはもう……手遅れか」
これ以上ブランズに攻撃をしたら、殺してしまう。そう思ったラックは剣を鞘に納め、ブランズの元から離れて行った。去って行くラックを見て、ブランズは叫んだ。
「おい! 俺から逃げるな! 俺との戦いはまだ終わっていないぞ!」
「終わったよ。君が体を改造したその瞬間に……君の負けは確定していた」
ラックがそう呟いた後、ブランズの上の瓦礫から雨のように小さい瓦礫の粒が落ち、ブランズに向かって落ちて行った。小さな粒に気付かなかったブランズは、その粒を体に当ててしまった。その直後、花火が連発して爆発するような音が周囲に響き渡った。




