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決戦の幕が開く


 翌朝、クリムは欠伸をしながら起き上がった。昨晩は深夜まで負傷者の治療を行っていたため、疲れが溜まっていたのだ。そのせいか、クリムはぐっすり眠っていた。だが、起き上がった直後のクリムの顔は少々不機嫌だった。


「何ですかもう、まだ疲れが残っているのに……」


 そうぼやきながら簡易に作られた休憩室から出ると、何かの理由で騒いでいるギルドの戦士たちの姿が見えた。その中に、レースンが混じっていた。レースンの姿を見たクリムは驚きの声を上げ、その声に気付いたレースンがクリムに近付いた。


「クリムさん、あなたもいたのですね。じゃあシュウも」


「ええ。昨日から見回りに行きましたが、まだ姿が……」


「クリム!」


 と、ここでシュウの声が聞こえた。シュウが無事であったことを確認したクリムは安堵の息を吐き、シュウが来るのを待った。


「はぁ、はぁ……お、レースンもいたのか」


「ああ。今回の騒動は各地のギルドに要請が出ているからな。その話はあとだ、お前もあれを見たのか」


「そうだ。クリム、大変なことになった」


 神妙な表情でシュウはこう言った。その後、バカップルとレースンは外に出て、目的の場所に向かった。その場所にはすでにタルトやジャックがいた。二人はクリムたちに気付き、振り向いて簡易に挨拶をかわした。


「何かあったのですか」


「朝一番で見せる光景じゃないが……」


 タルトがこう言うと、クリムは一体何があったのか気になり、現場を見た。そこにはバラバラになり、激しく損傷した人の手足が散らばっていた。それを見たクリムは驚きの声を上げ、シュウの方を向いた。


「ここからうっすらと魔力を感じます。兵器の爆発でこうなったわけじゃありません」


「俺たちは今回の騒動でバカをやっているバカ共がやったと考えたけど……」


「その通りです。それと、今回の騒動の黒幕が誰だか分かりました」


 クリムの言葉を聞き、シュウたちは一斉にクリムの方を向いた。クリムは少し間を開けた後、話を続けた。


「昨日の夜、突如強い魔力を感じました」


「その魔力の主が今回のバカ騒動を起こした奴なのか?」


 レースンの問いに対し、クリムは頷いて返事をした。


「ええ。まだこの目で姿を確認していないのですが、恐らく今回の黒幕はアロウ。先輩とタルトさんは知っていると思いますが、私のチュエール修業時代によくケンカを売ってきたバカです」


 クリムの話を聞き、シュウとタルトはやはりと言い、ジャックとレースンは互いに顔を見合わせた。


「クリムの知り合いだってさ」


「チュエールにもとんでもない奴がいたのか」


「皆さん。奴の魔力はセントラルタワーから感じました。奴も私が来たと知り、本気で私の命を狙いに来ると思います」


「ここからがマジの戦いってわけだな」


「ジャックさんの言う通りです。奴の狙いは私を殺し、賢者の称号を奪うこと。この前、奴と対峙した時は自分で私を殺さないと気が済まないと言っていました」


「ケッ、気取りやがってよー」


 話を聞いたジャックは舌打ちをし、セントラルタワーの方を向いた。


「敵の居場所が分かったのなら、早く奴の元に行こうぜ」


「気持ちは分かりますが、皆さんを倒すために恐らく奴の部下が襲ってくるでしょう。それと、一点だけ気になることがあります」


「それは?」


 クリムはタルトの方を向き、話を続けた。


「思い出してください。この前の奴との戦いで、私は奴を半殺しにしました。全治半年はかかると思いましたが、半年もかからないうちに奴は復活しました。そして、この前の新聞で奴とポーカーが行動している写真が小さく載っていました」


「あのクソ医者……」


 そう呟きながら、シュウは左手を握った。今回の出来事にポーカーが絡んでいる。そのことを知り、怒りが爆発しそうになったのだ。


「奴を治療したのはポーカー。可能性の話ですが、奴がアロウの部下を改造した可能性があります」


「強化されたってわけか。厄介だな」


「ええ、厄介です」


 クリムはこう言った後、深呼吸をしてシュウたちにこう言った。


「さっきも言ったとおり、ここからが正念場です。こちらも十分な戦力を持たないと、奴らを倒せません。皆さん、一致団結して奴らに痛い目を合わせましょう」


「おう!」


 クリムの話を聞き、シュウたちは一斉に力強い返事を返した。




「これは酷い……」


 シェラールの入口で一人の武人が呟いた。門番に話をして町の中に入った直後、アロウの部下に襲われた。


「おいおい、ここが今どんな状況か分かっているのか剣士のおっさん」


「ケケケケケケケケ、強そうだな。少しは楽しめそうだ」


 その剣士はため息を吐き、腰に携えている剣を握った。


「どうやらお前らがこの町を崩壊させた元凶のようだな」


「だったらどうする? 斬るのか?」


「ケーケケケケケケケケケケケ! 斬れるものなら斬ってみろ!」


 アロウの部下の挑発の直後、剣士は素早い居合を放った。一閃されたアロウの部下は小さい悲鳴を上げた後、その場に倒れた。


「さて……外道はまだいるようだ。早くこの町を直さなければ、世界が大変なことになる」


 そう言った後、剣士は頭を覆っていたフードを外した。その剣士、カーボンは周囲を見回し、行動を始めた。


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