最強のバカップル誕生
ハリアの村西方面。今そこでジャック達が巨大鳥獣型モンスターと戦っていた。しかし、相手は空を飛んでおり、ジャックが手にしている剣や弓では届かないのだ。
「あの野郎、ふざけた真似をしやがって‼」
ジャックは弓でモンスターを狙っているのだが、そのモンスターは矢の軌道を読んでいるのか、ジグザグ動いて矢を避けている。
「おい、援軍はまだか?」
「まだのようです」
共に戦っているギルドの団員の答えを聞き、ジャックはため息を吐いた。
「まずいな……これ以上長引くと武器がなくなるぞ」
「どうします? 俺達、皆銃を持ってないんですぜ」
「ちっくしょー‼ 常にハンドガン位持っておけばよかった!」
ジャックがこう言った直後だった。団員が上を見て何かを見つけたのだ。
「おーい‼ なんか来てるぞ‼」
「何あれ? え……シュウじゃねーかあれ?」
「シュウが来てるのか? どうやって……え? ええええええええええええええええええ!?」
ジャックは空を飛んでやって来たシュウとクリムを見て驚いた。その後、シュウとクリムは地面に降り立ち、ジャックに近付いた。
「お待たせしました」
「お待たせしましたって……どうして空なんか飛んで来てんの?」
「その方が早かったので」
と、クリムがモンスターを見ながら返事をした。
「ふむふむ。どうやらクルーベルクックのようですね。まさか、こんな所で遭遇するとは思いませんでした」
「知ってるの?」
「はい」
クリムはジャック達の方を向き、説明を始めた。
「あいつは寒冷地に生息しているでかい鳥のモンスターです。ハリアの村は少し寒いので、ここに来たんでしょう」
「寒冷地のモンスターか。めんどくさい奴が来たな」
シュウはスナイパーライフルを構え、クルーベルクックに向けて発砲した。
「おいおい、すぐに撃って大丈夫か?」
「先制攻撃です。じゃあジャック先輩達は散開してください」
「わーったけど、無茶すんなよ」
その後、シュウの言う事を聞いたジャック達は、散り散りに去って行った。銃で撃たれたクルーベルクックは、攻撃の主がシュウだと察し、怒り狂ったように鳴き出し、シュウに向かって突っ込んで来た。
「ナイスです、先輩‼」
クリムは魔力を使って高く飛び上がり、クルーベルクックに向けて何発もの火炎弾を放った。それに交じり、電撃も氷柱も風の刃も放っていた。
「すっげぇ……流石賢者……」
クリムの魔法の総攻撃を目の当たりにし、ジャックは目を丸くして驚いていた。しかし、これだけの攻撃を喰らっても、クルーベルクックはまだぴんぴんしていた。
「あらら、結構タフな奴ですね。普通のクルーベルクックだと、あの攻撃で倒してましたが……」
クリムがこう言っていると、今度はクリムに照準を合わせたクルーベルクックは、猛スピードで突っ込んで来た。ジャックは危ないと声を出そうとしたが、その前にクリムはバリアを張って攻撃を防いでいた。
「せんぱーい。今のうちにやっちゃってくださーい」
「ああ」
クリムの言葉を聞いたシュウは、スナイパーライフルを再び構えていた。そして今度は、銃口をクルーベルクックに向けて放っていた。銃弾は猛スピードで回転しながら、クルーベルクックに向かって飛んで行った。弾丸が自分を狙っていることに気付いたクルーベルクックは、その弾丸をかわそうとしたのだが、弾丸はクルーベルクックの頭を貫いていた。
「クリム、今だ‼」
「はい‼」
クリムは溜まった魔力を空に向けて放った。その魔力は炎の隕石となり、クルーベルクックに激突した。隕石に激突したクルーベルクックは悲鳴を上げながら、そのまま地面にぶつかった。
「あ……あの……もうやったのか?」
ジャックは恐る恐るクルーベルクックに近付き、生死を確認した。
「……やったみたい」
ジャックの言葉を聞き、他の団員は歓喜の声を上げた。
その後、ギルドに戻ったシュウとクリムは待機していた団員から滅茶苦茶褒められていた。
「やったなおい‼」
「さすが賢者様‼」
「俺達にできないことをやってしまうとは……」
「そこに痺れるッ! 憧れるゥ‼」
「えへへへ~、そんなでもないですよ~」
褒められているクリムは、少し照れながらこう言っていた。そんな中、シュウは女性陣に囲まれていた。
「シュウ君頑張ったみたいね」
「お姉さんがご褒美をあげましょうか?」
「こっちの方がより過激でエロいご褒美があるわよ」
「ねぇ、遊びましょ」
「えと……その……」
クリムはその方向を見て、物凄い形相でギルドの女団員を睨んだ。クリムの勢いに負けたのか、女性達はすぐに散って行った。
「全く、私と先輩が付き合っているってのに……」
「悪いなクリム。助かったよ」
「では報酬金も貰いましたし、今日は帰りましょう」
「そうだな。早く風呂に入って寝よう」
その後、二人は手をつないで去って行った。その光景を見た女性達は羨ましそうにクリムを眺めていた。
「いいなー、クリムちゃん」
「私もあんな風にシュウ君と手をつなぎたいなー」
「幼馴染になれば、私もああいう風に……」
「はぁ……何言ってんだか……あほくさ」
ジャックはビールを飲みながらこう呟いた。その呟きを聞いた女性達が豹変し、一斉にジャックに襲い掛かった。
その後、部屋の小さなシャワールームで、二人は体を流していた。
「後ろ失礼しまーす」
「ああ。頼むよ」
クリムは泡だったタオルを手にし、シュウの背中を洗い始めた。
「先輩の背中、あの時よりも大きくて頼もしいです」
シュウの背中に抱き着き、クリムはこう言った。その時、クリムの胸がシュウの背中に当たった。
「お前もいろいろと成長したようだな」
「うふ。先輩もエッチですね」
クリムは後ろからシュウを抱きしめ、自分の胸を強く押し当てた。
「もっとこの感覚を楽しんでもいいんですよ」
と、ノリノリでこう言ったが、シュウの右腕を見て少し動きが止まった。今は泡でどうなっているか分からないが、過去にあった事を思い出し、クリムは少し泣きそうになった。
「クリム、右腕の事は気にするなよ」
「先輩……」
「今はさ、あの事なんて忘れようぜ。やっと会えたんだ。楽しくやろうよ」
シュウはそう言って、クリムにキスをした。
「えへへ……そうですね」
「クリム、これからよろしくな」
シュウは笑いながらクリムと一緒にシャワーを浴びた。




