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愚か者の叫び

 クリムが放った光と闇の光線は、クルーガーの足元に命中して爆発した。


「うわあああああああああ‼」


 爆風と共に、クルーガーは後ろへ吹き飛んだ。


「クルーガー様‼」


 ミルチは倒れたクルーガーを起こし、後ろの避難口へ急いで向かおうとした。しかし、シュウがミルチの足元に向けて銃を撃った。


「逃げれると思うなよ」


「チェックメイトだ」


 シュウの後ろにいるティラが、不敵な笑みを浮かべてこう言った。クルーガーはその場でうずくまりながら、大きな叫び声をあげた。


「何故だ!? 何故誰も私の研究を理解しようとしない!?」


 クルーガーは立ち上がり、シュウ達に向かって叫ぶように話し始めた。


「私の研究は未来の為に役に立つ‼ 私の研究で新種の細胞が見つかったらどうする? それが人類の更なる進化につながるんじゃないか? 君達はそう思わないのか!?」


「思いませんね‼」


 クリムがクルーガーに向かって叫んだ。クリムの声を聞き、クルーガーは茫然とした。


「未来の為の研究? それはあなたがとっさに考えたそれらしい言い訳じゃないですか?」


「言い訳? 何を言うんだこのガキは!?」


 クルーガーはクリムに言い返そうとしたが、ある事に気付いてクルーガーは笑い始めた。


「そうか……そうか。君はまだ子供だから理解できないのか、この私の高度な研究を」


「何が高度な研究ですか、あなたの研究は自己満足のための研究じゃないですか?」


 この言葉を聞き、クルーガーの額に青筋が浮かんだ。


「あなたの情報はここに来る前に聞いて来ました。とても危険な研究を行って追い出されたと」


「それはあの研究所のゴミ共が私の研究を理解しようとしなかったからだ。上の役人が、きっと椅子を取られると嫉妬して私を追いだしたんだ」


「その研究内容が、人やモンスター、動物を合成させる実験。あなたは、モンスターや動物と人を合成させ、危険な生物を作ろうとしたんじゃないですか?」


「危険な生物? 違う‼ 違う違う違う‼」


 クルーガーは取り乱しながら、近くの柵を手で叩き始めた。何度も強く叩いたせいか、彼の両手から血が滲んでいた。


「あれは危険な生物なんかじゃない‼ 次世代の新たなる人間だ‼私の手にかかれば、長年の夢であった空を飛ぶ人間や、猛スピードで走る人間、更には人が何千年でも生きられるようになれるんだぞ‼ それのどこが危険なんだ‼」


「その考えが危険なんです。人は空を飛べません、人は走れても車以上に速く走れません、人の命は約百年で結構です」


「……君は進化を拒絶するのか?」


「あなたの言う進化は違います。ただの改造です」


 この直後、クリムの頬をかすめるように銃弾が飛んできた。ミルチが銃を持ち、震える手でクリムを狙ったのだ。


「黙りなさい小娘‼ この人がどれだけ苦しんだか理解できるの!? 人の進化の為に、どれだけ頑張ったか理解できるの!?」


「あなたもその目で見たはずです‼ 危険な実験の為に犠牲になって行く温厚なモンスターや、罪のない人の悲鳴を‼ それが進化の為になる? 人の命を使って進化するなんて、私は御免です‼」


「人の命? モンスターの命? バカげたことを言うな‼ あいつらは近くにいたホームレスだ‼自業自得で破滅した馬鹿野郎どもだ‼ そんな奴らの命を使って何が悪い? モンスターだって、貴様らギルドの戦士が倒してしまうではないか‼ あんなゴミ共の命を使って何が悪い‼」


「あなたは勘違いしています。私達は凶暴なモンスターを倒しますが……その命を無駄にしないためにいろいろと活用しています……」


「クリム、落ち着け」


 その時、シュウが激高したクリムを優しく抱きしめた。


「ああいう馬鹿には何を言っても言う事を聞かないぞ。こういう時は……ちーっと痛い目に合わせてやらないとな」


 と言って、シュウはクルーガーの足を撃った。


「ぐああああああ‼」


「小僧‼」


 ミルチは持っていた銃でシュウを狙ったが、キャニーが撃った銃弾がミルチの銃を弾き飛ばした。


「グッ……」


「さ、大人しく我々に付いて来てください」


 キャニーは銃を構えながら、クルーガーとミルチにこう言った。クリムは何度も呼吸をしながら、シュウに抱き着いていた。


「すみません先輩、少し熱くなってしまって……」


「誰だってそうだ、自分の為に命を奪う奴のくだらない説教を聞いてたら、誰だってブチ切れる。俺だって、あいつの口を閉じるためにどのタイミングで銃を撃つか考えてたんだ」


「先輩……」


 シュウとクリムが抱き合ってる中、ティラがクリムの頭を撫でた。


「さ、あの馬鹿野郎を捕まえに行くぞ」


「……はい」


 その後、バカップルはティラと共にクルーガーの元へ向かった。




 迫ってくるシュウ達を見て、クルーガーの体は震えていた。恐怖ではなく、怒りで体が震えているのだ。自分の考えを叫んでも、シュウ達は言う事を聞かなかったからだ。


「この低能共……目に物を見せてやるわ……」


 小さく呟くと、クルーガーは胸ポケットから紫色の液体が入った注射器を手に取った。それを見て、ミルチは悲鳴を上げた。


「クルーガー様‼ それは‼」


「うるさい‼ 私の言う事を聞かない奴は……全員ぶっ殺してやる‼」


 そう叫びながら、クルーガーはその注射器を自分の腕に突き刺した。

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