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狙われたバカップル

 翌日、バカップルは二人で町の探索を行うことにした。クリムはバカップルとして有名な自分たちの姿を見て、何かしらの行動をとる不審者がいるだろうと考え、そいつが何かを知っている、あるいは今回の妙薬騒動に加担している可能性があるとクリムは思っている。


 町に出て数時間が経過した。バカップルを見た町の人たちがバカップルにサインや写真を求め、それに応対しているせいで仕事を行うことができなかった。本来なら仕事中と言って断るのだが、もし変に応対してハリアの村のギルドの評判が下がったら自分たちのせいになるのだ。そう思ったため、バカップルはファンサービスに答えていた。


「結構時間がかかりますね」


「ああ。どうしたものだか……」


 クリムは少し照れながらも、シュウと話をしていた。そんな中、クリムは遠くにいる男性と目が合った。服は黒、目立たないような立ち振る舞いをしていた。そんな男性はクリムと目が合った瞬間、すぐに後ろを向いて走って行った。


「先輩、今変な男がいました」


「追ってみよう」


 バカップルはファンたちに急な仕事が入ったと言い、逃げた男性を追い始めた。男性が逃げ込んだのは細く、迷路のような路地だった。


「クッ、結構狭いな。走りにくい」


「先輩、走りにくいのであれば、飛びましょう」


 と言って、クリムはシュウの手を掴み、魔力を開放して空を飛んだ。飛び上がってすぐ、クリムは逃げた男性の姿を見つけた。


「見つけました。行きますよー!」


「頼むぜ、クリム」


 バカップルは空から男性に向かって飛びかかった。だがその時、シュウは男の不自然な動きを見て叫んだ。


「気を付けろ! あいつ、銃を持っている!」


 男性は懐から小型拳銃を取り出し、クリムに向けて銃口を構えていた。クリムはバリアを張って弾丸の防御をしようとしたのだが、突如魔力を感じ、ジグザグに動き始めた。


「あの銃、魔力を使う銃か」


 シュウも魔力を探知しており、男性の持つ銃が魔力を火薬のように利用する物だと察した。男性の魔力が強ければ、安い弾丸でもバリアを貫いて破壊することができるのだ。男性はクリムに狙いを定め、引き金を引いた。


「来る!」


 発砲音がした瞬間、クリムは横に移動して弾丸を回避した。放たれた弾丸は猛スピードで飛んで行き、離れた所にある廃ビルに命中した。


「クソッ!」


 男性は二発目を放つため、再びクリムに狙いを定めた。だがその前に、クリムの氷の弾丸が男性の右手を撃ち抜いた。


「ガアアアアッ!」


 男は撃ち抜かれた弾丸を抑えながらその場にうずくまり、近付いてくるバカップルを睨んだ。


「さ、これで追いかけっこは終わりです。どうして私たちを狙うのか、教えてもらいましょうか」


 クリムは男性に向かってこう言ったその時だった。黒い服の集団が突如現れ、バカップルを取り囲んだ。


「何だお前ら? こいつの仲間か?」


 銃を手にしたシュウは、集団を睨むように見つめた。その直後、集団は突如叫び声を上げた。


「何だ何だ」


「嫌な予感がします」


 と、冷や汗をかきながらクリムがこう言った。集団が叫び声を上げた直後、体の一部分が化け物のように変化した。




 ポーカーは町の至る所に隠してあるカメラから、この映像を見ていた。机の上のぶどうジュースを一口飲んだ後、にやけながら呟いた。


「さぁシュウ君、久しぶりの再会の前にお楽しみの時間よ。この二年間、あなたが成長した姿を私にはっきりくっきりと見せて頂戴」


 そう呟いた後、ポーカーは笑い声を上げた。その時、部下の一人がポーカーに近付いた。


「ポーカー様。お話したいことが三点あります」


「一つは?」


「改造実験用のストックが少なくなってきました」


「男? それとも女?」


「両方です」


「夜、素晴らしい健康体の男女をさらって来なさい。で、他の話は?」


「さっきまでポーカー様が手術をしていた実験体が死にました」


「いつものように処分しなさい。それとも、何かイレギュラーなことが起きたの?」


「はい。左半身が急激に変化し、破裂して異臭を漂わせています」


 この話を聞き、ポーカーは少し考えてこう言った。


「臭いを消す道具で何とかしてみて。分かっていると思うけど、絶対に死臭を外に出してはダメよ。この町のギルドやシュウ君たちにこの場所がばれちゃう。シュウ君には、サプライズとして私からこの場所を案内したいの」


「了解しました。それともう一つ、町に出た改造異変体が負けた後の処理を教えてください」


「大丈夫よ。こういう時を予測して、奴らがくたばったら爆発するように改造してあるの」


「そうですか……ですが、シュウが爆発に巻き込まれるのでは?」


「大丈夫よ。爆発と言っても人体がバラバラになるような爆発。巻き込まれても少しぶっ飛ぶ程度の強さよ」


 そう答えた後、ポーカーはモニターを見つめなおし、戦うシュウを見つめていた。


「さぁ、戦う姿を私に見せて。二年前とは違うその顔、その強さを私に見せなさい……」


 ポーカーはもう戦うシュウに夢中だ。そう思った部下は失礼しましたと小声で言った後、ポーカーの部屋から去って行った。


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