ブチコワーシ君をぶち壊せ!
バカップルを狙うメッズーニが乗るブチコワーシ君。だが、その後ろにいるレースンの動きを察しすることはできなかった。レースンがシュウから託された大型スナイパーライフルの引き金を引くと、爆発したかのような音を立てながら弾丸が放たれた。
「何? 今の音?」
爆音に気付いたメッズーニが、モニターを利用して音の元を探した。モニターに映ったのは、大型スナイパーライフルを構えているレースンの姿だった。
「何じゃあのライフル。デカすぎない? というか、もしかして今の音って……」
その直後、コクピットが大きく揺れた。メッズーニは悲鳴を上げながら揺れを耐えようとしたのだが、まだシートベルトを付けていなかったため、壁や床に体や頭をぶつけた。
「あだだだだだ……最初にコクピットにシートベルト付ければよかった……そんな場合じゃない!」
メッズーニはモニターを切り替えながらどこに異常が発生したか調べた。しばらくモニターをいじっていると、ブチコワーシ君の体が映った。そして、ジェット部分に異常が発生したと表示があった。
「まさか、あのライフルでジェットを……」
冷や汗をかきながら、メッズーニはジェット噴射のレバーを入れた。だが、ジェットは動かなかった。
「いやああああああああああああああああああああああん! ジェットが壊されたーん!」
猛スピードで動くことができないと理解したメッズーニは、泣き叫んだ。そんな中、コクピットの入口付近で何かを焼くような音が聞こえた。
「ま……まさか……」
嫌な予感を感じつつ、メッズーニは後ろの非常口へ向かおうとした。だがその前に、音を立てながらコクピットの入口の扉が倒れた。
「さぁ観念しなさい。変態さん」
そう言いながらクリムがコクピットに入って来た。メッズーニは後ろに逃げながらクリムにこう聞いた。
「ちょっと! どうやって扉をぶっ壊したのよ? 魔力は効かないはずよ!」
「闇の魔力と電気の魔力を合わせて使いました。闇の魔力で刃を作り、電気の魔力で回転させれば簡易的なチェーンソーの完成です」
「そんなのありなの?」
「ありだ」
そう言ってクリムの後ろにいたシュウがメッズーニの足元に弾丸を撃ち込んだ。
「ヒィッ!」
「さぁ観念しろ」
「ここであなたを捕まえます。大人しくしてくださいね。暴れるとどうなるか……分かりますよね?」
バカップルの言葉を聞き、メッズーニは観念したようにその場に項垂れた。
その後、バカップルはメッズーニが何か変な道具を持ってないか調べ、ないと分かった後、足首から肩のあたりまで入念に縄で縛った。
「ちょっと、これじゃあ動けないじゃない!」
「これでいいんです。また逃げられるのは嫌なので」
「さぁ、蛇のように動け」
「無茶ぶりしないでよ!」
バカップルに連れられ、メッズーニはギルドの戦士に引き渡された。戦士は敬礼をした後、縛られたメッズーニを持ち上げて去って行った。レースンはバカップルに近付き、大型スナイパーライフルをシュウに渡した。
「こいつが役に立つなんて思わなかったよ」
「クリムを守る時に持っておいてよかった」
返事をしながら、シュウは大型スナイパーライフルを受け取った。その後、シュウはレースンにこう言った。
「油断するなよ。今はああして縄でぐるぐる縛りにしているけど、縄をほどいた後、奴は何かするかもしれないぞ」
「ああ。奴はスエランのギルドの地下牢獄にぶち込んでおくよ」
「お願いします」
と言って、クリムが頭を下げた。レースンは慌てながらクリムに頭を上げるように告げた後、言葉を続けた。
「礼を言うのは俺たちの方だ。シュウとクリムがいなかったらこの騒動を解決できなかった」
「いえいえ、私たちはお手伝いに来ただけです」
「現に、あの変なデザインのロボットを倒したのはレースンじゃないか」
「武器はシュウのだけどな」
そんな話をしながら、三人は笑っていた。それから、催眠状態の女性たちも催眠が解け、病院で治療を受けた後、無事に家に戻ったという。そして、メッズーニは部下と共に一緒に御用になった。
それから数日後、スエランのギルドの戦士は地下牢獄のメッズーニの元へ向かっていた。
「大人しくしているな」
「当たり前よ。こんな所で暴れられるわけないじゃない」
メッズーニは憎しみを込めて言葉を返した。牢獄は狭く、小さなトイレがあるだけで、窓はなかった。ギルドの戦士はにやりと笑い、鍵を出した。
「俺ですよ、メッズーニ様」
その言葉を聞き、メッズーニは笑顔になった。
「部下の一人。どうしてここに?」
「助けに来たんです。新聞であなたの事件を知ったんです。すみません、助けに来るのに時間がかかって」
「でもどうやって?」
「変装してきたんです。前に教わった変装術が役に立ちました」
そう言って、部下は牢屋を開けた。そして、仲間が捕らえられている牢屋を開けた後、メッズーニたちと共に外に出て行った。その途中、メッズーニは不安げにこう聞いた。
「ねぇ、あいつら追いかけて来るんじゃないのかい?」
「大丈夫です。ギルド中のウオーターサーバーに超強力な睡眠薬を仕込みました。あれで半日は夢の世界の中です。それに、脱走しやすいようにあのギルドの監視機材をぶち壊しました」
「でかした! さーて、次のバカップルへのリベンジに動くわよ!」
メッズーニがこう言った後、部下たちは活きの良い返事をした。その翌日、スエランのギルドからメッズーニ一味が脱獄したと話題になった。




