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おとり作戦の行方

 その日の夜、クリムは変装して人の気配がない所を歩いていた。だが、その周りにはギルドの戦士たちが見張っていた。その中に、大型スナイパーライフルを構えたシュウと、愛用のハンドガンを構えているレースンがいた。


「クリムに手を出したらぶっ殺す。クリムに手を出したらぶっ殺す。クリムに手を出したらぶっ殺す……」


「シュウ、殺意を抑えろ。それでばれちまう」


 仕事をするよりクリムを守ることを考えているシュウに対し、レースンは小さな声でこう言った。その言葉を聞いたのか、シュウから発する殺意は抑えられたが、小声は抑えられなかった。


 おとり作戦が始まって数分後、クリムは足音が近くで聞こえたことを察した。その直後、スマホを持った黒い服装の男らしき人物が現れた。早速来たと思ったクリムだったが、武器らしきものを持っていないため、ただの通りすがりの変質者かもと考えた。黒い服装の人物は手にしているスマホの画面をクリムに見せた。画面には、怪しげな色の変な模様が描かれていた。それを見た瞬間、クリムは意識を失いそうになった。


「さぁ、俺の言う通りにするんだ」


 この言葉を聞き、クリムは催眠術のような物で操って被害者を誘拐したのだと理解した。意識を持ってかれそうになったクリムだが、何とかこらえた。強い根性と精神力のおかげで催眠術にはかからなかったものの、敵はクリムが催眠術にかかっていないことを察していないようだった。


「うし。また一人作業員をゲットだぜ。さぁ、俺に付いて来い」


 黒い服装の人物は仕事を果たしたようにこう言うと、クリムに命令をした。その言葉を聞いたクリムは、はいと小さく答えて黒い服装の人物について行った。その後を追うように、ギルドの戦士は音を立てず移動を始めた。だが、その前にシュウが大型スナイパーライフルを黒い服装の人物に向けていた。


「あの野郎、その汚い顔を一瞬で腐ったトマトのようにぐちゃぐちゃにしてやる」


「落ち着けシュウ。今は暴れる時じゃないって」


 殺意を放っているシュウを抑えるため、レースンは仲間と共にシュウを抑えた。




 数分後、黒い服装の人物はクリムを町外れの工場へ連れて行った。その工場を見たレースンは、小さく驚きの声を上げた。


「あいつら、こんな所にアジトを作っていたのか」


「廃工場かつ誰も来なさそうな場所だ。アジトや秘密基地を作るにはうってつけだろうな」


「クリムが中に入ったら俺たちも突入するぞ。一気に片を付けよう」


 シュウの言葉を聞き、レースンやギルドの戦士たちは返事をした。そして、工場の扉が開いた瞬間、ギルドの戦士は一斉に動き出した。


「え? 何今の音?」


「作戦開始ですね!」


 クリムはそう言って黒い服装の人物に向かって魔力の水を放ち、凍らせた。


「え? おわっ! ギャアアア!」


 突如体が凍ったため、黒い服装の人物は驚いた表情をした。その直後、ギルドの戦士の一部が到着した。


「この男の身柄は我々が確保します」


「早く中に入って敵をぶっ倒しましょう」


「ええもちろん!」


 クリムがこう言うと、シュウとレースンがその場に到着した。


「さーて、今回は絶対にあの変態女を捕まえないとな」


「はい。あの女との因縁はここで終わらせましょう」


 バカップルはそう言うと、急いで工場の中へ走って行った。その後を追うように、レースンとギルドの戦士が走り出した。




 一方、騒ぎを知らないメッズーニは自室で寝ていた。


「うーん……うーん……もう、うるさいわねぇ!」


 外の騒ぎのせいで、寝付けないメッズーニは苛立ちながら叫んだ。外に出ると、部下たちは催眠術で操った女性たちの膝枕を利用し、快適に寝ていた。この光景を見てイラッとしたメッズーニは、部下たちの腹を強く踏みつけた。


「うげっ!」


「うぷっ!」


「ありがとうございますっ!」


「ぐっすり寝てる場合じゃないわよ! なーんか外がうるさくない? それに、今日人を補充するって言って出かけて行った奴が帰ってこないじゃないの」


「ありゃま、確かに」


 メッズーニの言葉を聞き、異常事態が発生したと部下は察した。その直後、激しい爆発音と共に扉が吹き飛んだ。吹き飛んだ扉は、部下の一人に命中した。


「何者!」


「久しぶりですねぇ、メッズーニ!」


「今度こそテメーらを捕まえてやる」


 聞いたことのある声を聞き、メッズーニの中に恐怖心が芽生えた。目の前の通路には、無数のギルドの戦士とバカップルの姿があったのだ。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! バカップルだァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


「ヤベェ! 逃げろ!」


 部下は急いで逃げようとしたのだが、その前にクリムの水の魔力が部下を襲い、身動きが取れないように凍った。


「うわーん! 動けないよー!」


「助けてメッズーニ様!」


「逃げるんじゃないわよ! 忘れたの? こっちには催眠術で操った女共がいるじゃない」


 その言葉を聞いた部下は、操った女性たちに目の前に来るように命令した。すでに武器を構えていたギルドの戦士は、盾になるように現れた女性たちを見て動揺した。


「あいつら、人質を取りやがったな」


「汚い連中だ」


 女性たちを傷つけないよう、ギルドの戦士は武器を下ろした。レースンもこの状況のため、銃をしまった。だが、クリムは魔力を少しだけ解放し、にやりと笑っていた。


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