表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

368/448

犯人の影は

 バカップルはスエランのギルドの入口で再開したレースンを思い出しながら、ナホックの元へ向かっていた。


「皆さんもかなり疲れが溜まっているようですね」


「そのようだな。五件も誘拐事件があったから、世間もギルドもピリピリしているし」


 言葉を返しながら、シュウは周囲を見回した。ギルドの役員はバカップルを見て、簡易に挨拶をしたり、頭を下げたりして速足で仕事へ向かっていた。そんな中、役員の会話が耳に入った。


「またマスコミの嫌味な記事が載っているのか」


「そうだ。全く、こっちは必死になってやっているというのに、マスコミの連中は役立たずとか早くしろとか煽ってばかり」


「だったらお前らも協力しろと言いたいな」


「マスコミの連中は口だけだ。協力しても役に立たないだろう」


 この話を聞き、マスコミからも叩かれているという状況をバカップルは察した。


「先輩、絶対にこの事件を解決しましょう」


「ああ。犯人をとっちめてやる」


 絶対に犯人を捕らえる。バカップルは心にそう決心した。




 数分後、バカップルはナホックがいる部屋に到着した。ナホックはバカップルが部屋に入ってきたことを知ると、歓喜の声を上げて近付いた。


「お久しぶりです。賢者クリム、シュウさん」


「お久しぶりですナホックさん」


「事件の内容は大体把握しています。もちろん、今のこのギルドの状況も」


 バカップルがこう言うと、ナホックは机の上の資料を手にし、バカップルに渡した。


「理解しているなら話は早いです。今月起きた事件に関してはこの資料に載っています」


「そうですか……」


 返事を返しながらクリムは資料に目を通した。資料にはナホックの言う通り、事件に関する情報が細かく書かれていた。


「事件の発生は全て夜中に起きている」


「被害者はほとんどが若い女性か……卑劣な奴らだな」


「はい。犯行グループらしき連中からも身代金などの要求がないため、私たちは若い女性を裏で売買するだろうと考えています」


 ナホックはお茶を注ぎながらこう言った。この言葉を聞き、シュウは少し苛立ちながら呟いた。


「卑劣な奴らだな。裏でそうやって人身売買するなんて……」


「その話が本当だったら許せない話ですよ。このギルドにもスエランの町の裏で暗躍する裏ギルドなどの存在は察知して、壊滅を行っていますが、私たちの手の届かないように行為を行う連中もいるようで……」


 ため息を吐きながらナホックはバカップルにお茶を渡した。その後、クリムはお茶を飲みながらナホックにこう尋ねた。


「ナホックさん。レースンさんが見ている監視カメラの話ですが」


「見たいのですね。用意しています」


 と言って、ナホックは机の上のパソコンの画面をバカップルに向けた。そして、動画データの再生を始めた。


「監視カメラのデータがあったのは三件目と五件目だけです。それ以外は監視カメラが設置されていませんでした」


「データは二つだけですが、この二つで何か証拠を見つけます。絶対に!」


 そう言って、クリムは監視カメラのデータを見始めた。




 監視カメラのデータを見始めて数時間が経過した。クリムは細かい所までチェックするため、何度もデータをスローにして再生していた。シュウは資料を見て、五件の誘拐事件で犯人に関係する物がないか確認していた。そんな中、映像を見ていたクリムが驚きの声を上げた。


「どうした!」


「先輩、この部分を見てください!」


 クリムはシュウに分かるように画面に指を指した。クリムの指が示す場所には、犯人らしき人物が被害者の女性に向かって走るような姿があった。映像が鮮明でないため、顔や服までは分からなかったが、この人物が犯人であるとシュウは察しした。


「こいつが犯人か」


「分かったのですか?」


 資料を見ていたナホックがシュウの声に反応し、パソコンの前に移動した。クリムは横に来たナホックを見てこう聞いた。


「ナホックさん、もう少し画面を綺麗にすることはできませんか?」


「動画編集が得意な人を呼んできます。その人ならできるでしょう」


 クリムにこう返事すると、ナホックは慌てて部屋を飛び出した。数分後、動画編集が得意な役員が部屋にやって来た。役員はクリムが停止した動画の一部分をスクリーンショットして保存し、そのデータを手にしている小型パソコンに移動した。


「ここからは私の仕事です。このパソコンには乱れた映像や画像を鮮明にするソフトが入っています」


「なんかすごいソフトが開発されているな」


「聞いたことはあります。捜査関係で使われていると」


 バカップルは役員がパソコンを動かす中、邪魔にならないように小声でこう会話していた。しばらくすると、役員は鮮明にした写真をクリムたちに見せた。


「終わりました。これであの画像が前より見やすくなったはずです」


「ありがとうございます」


 クリムは礼を言った後、その画像を見た。それを見て、バカップルは驚きの声を上げた。


「先輩……こいつが着ている服って……」


「ああ。今回の事件、恐らく……いや、確実にあのアホが関わっている」


 バカップルの話を聞き、何が何だか分からないナホックは、クリムに尋ねた。


「知っている犯人ですか?」


「ええ。恐らく、この一連の誘拐事件の犯人はメッズーニ。何度もバカな犯罪行為をやって来ましたが、運がいいのか私たちから逃げ出した変態集団のボスです!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ