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神速の敵の先には

ヴァリエーレ:滅びを望む者の本アジト


 神速と自称する男、ピードの相手として私とシュガーが戦っている。ピードの戦法は素早く移動しながらガラス片などを猛スピードで放ち、攻撃する。まだ他に奴の攻撃方法があるかもしれないけど、今の所分かるのはこれだけだ。ピードは私目がけてガラス片などを放ったが。私は魔道武器を振り回して全て叩き落とした。


「へぇ、やるじゃないか。その変ながらくたで俺の攻撃を防ぐなんて」


「これは魔道武器っていうのよ。レイピアにもなるし、銃にもなる。これだけ教えても、あなたが私たちに勝てるかどうか分からないけど」


「そうかい。じゃあ勝ってやるよ!」


 ピードはそう言って私目がけて飛んで来た。どうやら接近戦を行うようだ。


「キェェェェェェェイ!」


 奇怪な叫び声と共にピードの蹴りが飛んで来た。まずいと思った私は後ろに下がった。ピードの蹴りが私の服の左袖にかすった。違和感を感じたので袖を見ると、服の左袖は刃物で一閃を受けたかのように切れていた。


「チッ、あと少しで真っ二つにしてやったのに」


 と言って、ピードは態勢を直した。どうやら奴のもう一つの攻撃方法は蹴り。一瞬魔力を感じたため、一撃に魔力を込めて使う奴なのだろう。意外と厄介だ。私はどう対処しようか考えてると、シュガーが前に出た。


「今度は私がやります」


「え? ちょっと!」


 何を言ってるのかしら? ヒーラーのシュガーが敵う相手じゃない! 私は急いで守ろうとしたのだが、それより先にピードが動いていた。


「先に死にたいなら、お望み通りあの世へ送ってやるよ!」


 まずい! ピードはシュガーを狙って猛スピードで動き出した! 間に合うかどうか分からない! 私はシュガーの前に出ようとしたのだが、シュガーは私にこう言った。


「大丈夫です。策はあります」


 策はある? 一対策って何? そう思ってると、シュガーは左手でガラス片を持っているのに気付いた。さっき奴が攻撃で使った物だろう。それを一体何に使うんだ? そう思ってると、シュガーはガラス片を前に向かって投げた。


「おわっ! 危な!」


 目の前にガラス片が飛んできたためか、ピードは急に足を止めた。物凄い勢いでガラス片に命中したら、深い傷を負うだろうと察知したんだろう。ピードはよろつきながら立ち止まり、安堵の息を吐いていた。だが、奴はこの時に大きな隙を生んでしまった。


「隙あり~」


 と言って、シュガーは何かの液体が入った注射器をピードに突き刺し、液体を注入した。


「な……何だこれは? 一体何を入れた!」


「体の運動神経を爆上げするすごい液体です。よかったですね」


「よかったですねって……」


 え? ちょっと? 体の運動神経を上げる液体を敵に注入したの? それって、敵の運動神経をさらに上げるってことよね?


「ちょっとシュガー、敵を強化したら私たちが苦戦するじゃない!」


 私が問い詰めようとしたが、シュガーはのほほんとした表情でこう答えた。


「考えてみてください。運動神経抜群の人に運動神経を上げる薬を注入したらどうなると思います?」


「それは……もっと強くなる」


「確かに強くなります。それと同時に、体に物凄い負担がかかります」


 体に負担がかかる? まさか、わざと敵を強化して、敵の体に強い負担をかけさせて動きを鈍らすつもりなのかしら?


「あいつの足は神速と自分で言っています。ならそれを強化しちゃいましょう。より一層早くなりますが、今の状態でさらに強くなった自分の足をあいつは制御できません。それに、余計な力のせいでかかる負担も強くなります。おまけに、副作用も起こる可能性もあります」


「そんな薬を作って大丈夫なの?」


「はい。敵に使えば問題ないです」


「問題ない……のかしら?」


 大丈夫かなと思っていると、ピードが悲鳴を上げていた。


「ガァッ……体が熱い……足が熱い。めっちゃ熱い。筋肉が余計に動く……破裂しそうだ。あ……あ……あああああああああああああ!」


 その直後、ピードの足の筋肉がかなり膨張した。アンバランスな体系が、もっとアンバランスになった。


「グアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 さらに奴の足は膨張するようだ。音を立てながら奴の足は膨張し続けている。下手したら風船のように破裂するんじゃないかしら?


「戦いは終わったみたいですね。さぁ皆さん、先に行きましょう」


 と言ってシュガーはクリムたちに先に行くように告げた。皆は不安そうにピードを見て次の部屋へ向かった。私も皆の後を追うように部屋を出て行った。すると、風船の破裂するような音と共に、ピードの悲鳴が聞こえた。何があったのか考えないようにしよう。




「なぁ……さっきの相手、大丈夫かな?」


「このアジトの団員がきっと何とかするから大丈夫じゃね?」


 と、シュウと剣地はピードのことが気になり、話をしていた。その時、クリムが声を上げた。


「先輩、ケンジさん。この先から強い魔力を感じます」


 クリムの声を聞き、二人は目の前を見た。そこには前二つの部屋とは違い、大きく、派手に電飾がされている扉があった。剣地はそれを見た後、武器を構えた。


「この先にボスがいるようだな」


「滅びを望む割には、ずいぶん派手な物が好みのようだ」


 シュウはリボルバーを手にし、こう言った。剣地はクリムたちの方を向いて準備はできたかと質問をした。クリムたちはすでに武器を構えており、いつでも戦えると剣地に答えた。


「それじゃあ行くぜ! 覚悟しろよ、滅びを望む者!」


 剣地はそう言うと、目の前の扉を蹴り開けた。


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