表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

359/448

神速の足を持つ男

 蜘蛛使いの男、ダイラを倒したクリム一行は、ダイラの部屋を抜けて次の部屋へ向かった。


「うう~、また蜘蛛とか出てくるんじゃないでしょうね……」


「同じ技を使う敵は一度出たら出ないと思いますよ」


 クリムは苦手な蜘蛛と遭遇した成瀬を慰めていた。前を歩いている剣地は、何かの音を聞いてシュウの方を振り返った。


「何か聞こえたよな」


「ああ。だけど一体何の音か分からない」


「敵の可能性がでかいな。一発ぶっ放しとくか?」


 剣地は銃を取り出したが、シュウが剣地を止めた。


「敵が分からない今、無駄に弾丸を使ったり魔力を使うのは止めよう」


「いいのか? 先手を打てば戦いが楽になる」


「それもそうだが、敵の正体や戦法が分からない状況なら、様子見でわざと敵を動かすってこともできるぜ」


「敵の動きを見て戦い方を学ぶってか。それもそうだな」


 剣地がこう言った直後、目の前の扉が急に開いた。クリムは開いた扉を見て、にやりと笑った。


「どうやら敵は私たちが来たのを察知して扉を開けたようですね」


「私たちを相手にして勝つつもりなのかなー? 舐められてる?」


「そのようじゃの。全く、呆れたもんじゃ」


 ヴィルソルがため息を吐いて呆れた様子を見せた。その時、シュガーとヴァリエーレが前に出た。


「今度は私たちがやるわ」


「どんな相手か楽しみだねー」


 その言葉を聞き、剣地はシュガーを止めようとした。ヴァリエーレの戦力はいつも一緒に戦って来た剣地は察知しているが、一応ヒーラーだが、恐ろしい化学薬品を使うシュガーの戦力は少し不安なのだ。剣地は心の中で、シュガーが本アジト攻略に入って大丈夫なのかと思っていた。だが、剣地の不安をよそに二人は前へ向かって行った。


「あのちょっと、大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ、後ろにいて~」


 と、シュガーはウインクをして剣地の不安をほぐそうとした。だが、それでも剣地の不安はほぐせなかった。


 扉を抜けると、そこはスケボーの競技で使われるようなジャンプ台などがいくつかおかれていた。


「何だこの部屋? スケボーを使って戦う敵がいるのか?」


 シュウがこう言うと、走るような足音が聞こえ、シュウは反射的に拳銃を抜いた。だが、何かがシュウに向かって飛んで来た。


「あぶねッ!」


「先輩!」


 シュウを守るため、クリムと剣地が魔力を使って飛んで来た何かを吹き飛ばした。地面に刺さったそれを手にした成瀬は、それをシュウに見せた。


「ガラスの破片。こんなものが物凄い勢いで飛んで来たら深い傷を負ってたわ」


「そんなもんまで武器にするのか……」


「それが俺のやり方だからね」


 聞いたことのない声が聞こえた。その直後、クリムたちから少し離れた場所に半袖半ズボンの青年が現れた。上半身はあまり筋肉が付いていなかったが、下半身の方はかなり鍛えているためか、筋肉がかなりついていた。


「うわぁ……上半身と下半身のバランスが酷い……」


「もう少しうまく鍛えていればいい体になっていたのに」


 青年のアンバランスな体を見て、思わずリナサとティーアは呟いた。


「ふっ、俺は俺流のトレーニングをしただけだ。そこの長耳のお嬢さんも俺を見て嫌そうにしているが……」


「また相手が男かよ。女だったらセクハラできたのに」


 ルハラの答えを聞き、青年はバランスを崩した。しかし、すぐに本調子に戻り、自慢げに笑いながらこう言った。


「俺の名前はピード。滅びを望む者の中で神速と言われている。俺の武器はこの足だ」


「そう。それじゃあ見せてくれないかしら?」


 魔道武器を持ったヴァリエーレがこう言った。その言葉を聞いたピードはにやりと笑い、クラウチングスタートのような構えをとった。


「じゃあお望み通り見せてあげるよ!」


 その直後、ピードは走り出した。そのスピードは、目にも見えないほどの早さだった。




ヴァリエーレ:滅びを望む者の本アジト


 神速と言われているピードと言う男だが、神速と言われている通り走るスピードはとんでもなく早い。魔力を感じていないため、かなり鍛錬をして手にしたスピードだと私は推理した。


「ハーッハッハ! これでも俺に勝てるというのか!」


「ま、やってみないと分からないわ」


 私はそう答えると、魔道武器を構えた。相手の戦法は素早く走って相手を惑わせ、ガラス片などの尖った、鋭い武器を投げるか、蹴り飛ばして相手に攻撃する。この状況で分かるのはこの程度だ。相手はまだ魔力を使っていない。どの属性の魔力なのか、どんな使い方をするのかまだ分からない。ピードはまだ手を隠している。


「そうれ、行くぞ!」


 私に向かって何かが飛んで来た。さっきシュウを襲ったと同じガラス片だ。私はガラス片の軌道を読み、隙の無い動きで回避した。


「ヴァリエーレさん、援護しますか?」


 入口にいるシュウが銃を持ってこう言った。ケンジも援護をしてくれるのかしら、銃を構えている。だけど……。


「大丈夫よ。私もまだ本気出してないから」


「そうですか……」


「いざとなったら援護に入りますんで」


「ええ。でも魔力と弾丸は残しておいて。この敵は私とシュガーで倒せるレベルよ」


 二人を安心させるため、私はこう言った。この言葉を挑発として聞こえたのか、ピードは私に向かって無数のガラス片や刃のような物を一斉に投げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ