邪魔者はまたもや現れる
シュウと剣地の活躍により、アジトへ向かうのを邪魔した連中を倒すことができた。ルハラが風を使って敵を縛り、ヴィルソルとリナサが闇の魔力を開放して敵に向けていた。
「大人しくしておれ。変なことを考えればどうなるか分かっておるな?」
「私たちの言うことを聞いた方がいいですよ」
二人の言葉を聞いたのか、邪魔をした連中は大人しくしていた。だが、そのうちの一人が笑みを浮かべていた。笑みに気付いたヴィルソルが鎌を装備し、その一人の首元に刃を近付けた。
「その笑みは何だ? まるで、まだ仲間がいることをこいつらは知らないと言いたそうじゃのう」
「その通りだ。ま、奴がいる限りお前たちは先へは進めない。いや、ここで楽しいドライブはおしまいだ」
「勝手言ってくれちゃってもー」
ルハラがこう言った直後、何かの気配を感じ取り、後ろに下がった。剣地と成瀬、バカップルもすぐに戦えるように支度を取り、周囲を見回した。
「もう一人いたみたいだな」
「ああ。俺たちを足止めするのに雑魚を使うのを疑問視してたところだ。強い奴がいるなら納得」
シュウと剣地がこう会話する中、ヴァリエーレが立ち上がった。
「私がやるわ。少し休んでて」
「いいんですかヴァリエーレさん?」
「一人で大丈夫ですか?」
不安になったクリムとシュガーがこう聞いたが、ヴァリエーレは軽い準備運動をしながら答えた。
「ええ。奴らは残りの一人が強いって言ってるけど、魔力を感じる限り残りの一人はたいして強くなさそう。私一人でもすぐに終わるレベルよ」
ヴァリエーレの言葉を聞いた敵は文句を言おうとしたが、ヴァリエーレが彼らを睨み、黙らせた。
「それじゃ、行ってくるわ」
と言って、剣地たちに見送られながらヴァリエーレは残りの一人の元へ向かって行った。
ヴァリエーレ:車道
残りの一人はたいして強くはない。だけど、油断は大敵。敵の魔力はたいして強くないけど、どんな武器を使うのか、そしてどんな技を使うのかは分かっていない。弱い魔力でも技や魔力の使い方次第で十分戦える。しばらく走っていると、突如弾丸のような物が飛んで来た。私は咄嗟に近くの岩盤の裏に隠れ、弾丸をやり過ごした。カツンと二回ほど音がし、飛んで来た弾丸が岩盤にぶつかったと私は判断した。下を見ると、弾丸の破片らしきものが散らばっていた。素材はプラスチックのような物、そして弾丸の中に詰められていたのか火薬らしき粉が舞っていた。次の敵の動きを考えていると、突如上から日の雨が降ってきた。私は急いでその場から離れた。そこからの展開は私の考えた通り、降ってきた火の雨が火薬に命中し、周囲に爆発が起こった。
「ふぅ……簡易的な考えね」
この行動を見て、私は敵の動きを察した。敵は火薬が詰まった弾丸。あるいは小さな容器に火薬を詰め、容器を破裂させて火薬を散乱させ、火の魔力を使って周囲を爆発させる。
「チッ、あの爆発で生きていやがったか」
敵の声が聞こえた。少し離れた所にスリリングショットを持った男がいた。どうやらあれで火薬が詰まった弾丸を飛ばしていたようだ。
「あなたね、あの爆発の原因は」
「だったらどうする? 俺を倒すのか?」
「ええそうよ」
私はそう答えると、高く飛び上がって男の近くに着地した。そして手にしたレイピアで一閃しようとしたが、男は魔力を使ってバリアを展開した。バリアが展開した範囲は男の手の平より少し大きい程度。しかし、それでも私のレイピアの刃はバリアを通らなかった。それなりに頑丈なのだろう。
「こうなったらお前を火薬まみれにして、爆発させてやる!」
至近距離にいる私に向けて、男は手で弾丸を掴み、私に向けて投げた。飛んで来る弾丸を切ると、周囲に火薬が散らばる。そうなれば相手の思うつぼだ。私は弾丸をかわしつつ、男に近付いた。
「あなたの思い通りには行かせないわよ」
「グッ!」
おっと、攻撃が避けられたからか、男は私を殴りかかった。だが、殴り方が下手だ。ど素人以下だ。プロの格闘家が見たら激怒するようなパンチだ。そんなパンチが私に命中するはずがない。私は簡単に敵の攻撃をかわし、男のあごに向けて蹴りを放った。
「うごっ!」
蹴られた衝撃で男は上に吹き飛び、そのまま地面に落下して倒れた。それからすぐに男は立ち上がったが、少し慌てていた。
「まずい……これはまずい……」
男は体に付いた砂を払う仕草をしていた。それを見た私は男の状況を推理した。もしかしたら、隠し持っていた容器とかが壊れ、男の体中に火薬が付着したのだと。私は電気を発し、男に近付いた。
「あらあら、そんなに慌ててどうしたのかしら?」
そう言いながら私はさらに電気を激しく動かした。電気でもうまく使えば火を起こせる。それは男も知っているようで、私を見てビビっていた。
「来るな……頼む、来ないでくれ!」
「私は敵の言うことを聞かないわよ」
「止めろ! 俺の体がぶっ飛んじまう!」
「何で? 何であなたはそんなに慌ててるのかしら?」
私は意地が悪そうにこう言った。男は後ずさりして私から離れようとしたのだが、途中でこけてしまった。その隙に私は男に近付き、レイピアを向けた。
「さぁ、覚悟しなさい」
「ヒッ……ヒィィィィィィィィィィィ!」
レイピアの刃から飛び出る電気を見て、男は情けない悲鳴を上げた。私は電気が男の体に付いた火薬に付着しないように上空に発し、魔力を止めた。
「ふぅ……」
魔力を沈めて男を見ると、男は白目を向いて気を失っていた。




