滅びを望む者とのラストバトル
ヴァリエーレ:ケブルの村
ケンジたちが帰って来て翌日が経過した。長く行われた取り調べが終わったのか、スネックさんが大きな欠伸をしながら取調室から出てきた。
「やーっと話を聞きだせた……」
「お疲れスネック。あとは私たちに任せてゆっくり休んでくれ」
「それじゃあお言葉に甘えます。これ、取り調べの資料です。あとはお願いします……」
スネックさんはタルトさんにこう言うと、欠伸をしながら去って行った。それからしばらくして、私たちに情報が届いた。
奴らのアジトはテムペーンという山の山頂。そこに滅びを望む者のリーダーがいるという。
「この村からテムペーンまでは数日かかりますね」
クリムが資料を見ながらこう言うと、タルトさんがすぐに返事をした。
「そうだ。今すぐにでも行きたいが、連中が仲間を助けに……あるいは、再び石碑を使うためにこちらに来る可能性がある。なので、何人かはここで待機をしてもらいたい」
「つまり、攻め込む組と留守番組を決めるってわけですね」
「その通りだハヤテ」
タルトさんの返事を聞いた直後、ハヤテが勢いよく手を上げた。
「俺が行きます!」
「気迫はいいが、敵の戦力がどう来るか分からない。なるべく戦力を分けたいんだ」
この言葉を聞いたハヤテは、大人しくなった。その直後、ケンジとルハラが立ち上がった。
「俺たちが奴らをぶっ倒しに行きます」
「戻れるかどうか分からないし、少し奴らに対して苛立ってるんだよねー」
「しかし、ケンジ君とルハラちゃんは昨日戦いに行って戻って来たばかりだ。また戦いに行かせるのは体力的にもきついだろう」
タルトさんはケンジとルハラの体のことを心配してくれているようだ。それはそれでありがたい。だけど、あの二人の体力のことなら問題はない。私は誰よりもあの二人のことを知っている。
「大丈夫ですよタルトさん。私たちは元いた世界でいろんな事件に巻き込まれ、解決してきました。それで、体力に関しては全然問題はありません」
「いいのか?」
「ええ。むしろ、ここで大人しくしていたら、何をするか分かりませんよ」
私の言葉を聞いたのか、タルトさんは少し考えてケンジとルハラにこう言った。
「それじゃあ頼む。もし、何かあったらすぐに一緒にいる人に話すことだ」
「大丈夫です」
「りょーかーい」
「さて、じゃあ私たちも攻め込む組に入りましょうか」
「そうだね」
「我らがいればすぐに片が付くじゃろう」
と、ナルセたちがこう言った。タルトさんは少し不安な顔をしたが、ナルセが笑顔でこう言った。
「心配しないでください。私たちの強さは知っていますよね?」
「それはそうだが……まぁいいか。頼む」
というわけで、私たちハーレムパーティーが攻め込む組に入ることになった。これなら戦いやすいし、私たちも気が楽だ。私たちが攻め込む組に決まった直後、シュウとクリムとシュガー、リナサが手を上げた。
「私たちも行きます」
「怪我人の治療は私に任せて~」
「私も活躍したい」
「父さん、俺も行くよ。いいだろ?」
シュウたちの言葉を聞き、タルトさんは少し考えてこう言った。
「攻め込む組はこれで十人か。これなら戦力的にも問題ないな。シュウ、皆、任せてもいいか?」
タルトさんの言葉を聞き、私たちははいと返事をした。
翌日、バカップルたちはテムペーンへ向かって旅立った。車の中では、女子たちが仲良さそうに話をしていた。そんな中で、シュウと剣地は後部座席で話をしていた。
「そろそろこの騒動にも終わりそうだな」
「ああ。元いた世界にも戻れそうだ」
「戻ったら何をするんだ?」
シュウにこう聞かれ、剣地は少し考えて答えた。
「皆に今までのことを話す。異世界に行ったって信じてもらえるかどうか分からないけど」
「確かにな。こんなこと、ありえないよな」
「ああ」
と、笑いながら二人は話をしていた。そんな中、シュウの目に光が入った。その直後、話をしていたクリムが突如叫んだ。
「車を止めてください! 今すぐに!」
クリムに言われ、運転手はブレーキを踏んだ。次の瞬間、何かが車に命中する音が聞こえた。シュウは車の窓を開け、ライフルを持って周囲を見回した。
「こっちか!」
剣地はシュウとは逆の方向の窓を開き、周囲を見渡した。少し離れた所に銃のような物を持った影が見えたため、剣地はすぐに拳銃を手にして陰に向かって撃った。しかし、影はすぐに高く飛び上がり、剣地の弾丸をかわした。
「敵が来やがったか」
「俺たちがいつ来てもいいように見張りを送ってやがったな」
「ケンジ、我が行くか?」
ヴィルソルが剣地にこう聞いたが、剣地はシュウの方を見てこう言った。
「ここは俺とシュウが行く」
「他の皆はこの車を守ってくれ。すぐに戦いを終わらせて来る」
と答え、二人は外に飛び出した。クリムは二人が出て行ったのを確認し、運転手にこう言った。
「少し離れた所に停車してください。敵の攻撃から逃れましょう」
「は……はい」
運転手はクリムの言われた通りに車を今いた場所から離れた所へ動かし、停車した。そして、クリムは魔力を開放して周囲にバリアを張った。
「これで一安心です。さて、後は先輩とケンジさんが戻って来るのを待ちましょう」
クリムは成瀬たちにこう言って、周囲を見回した。




