激戦の後
成瀬:滅びを望む者のアジト
変わったナイフを使って戦う男、サリーグと戦う私たち。剣地が前に出て戦ってくれたおかげで、私とルハラが奴に強烈な攻撃を当てるチャンスができた。私とルハラは上空から奇襲する形で奴に攻撃を仕掛けた。奴はケンジの相手に夢中で私とルハラには気付いていなかった。気付いた時にはもう遅い、私とルハラは攻撃に写っていたんだから。
「はァァァァァァァァァ!」
私は魔力を開放し、奴に向かって剣を振るった。私が持つ剣は解放した魔力に合わせる形で刃の周りに魔力のオーラが放たれていた。このおかげで攻撃範囲も攻撃力も倍以上だ。
「グッ!」
奴は剣地から離れ、ワイヤーを利用して私の攻撃を防御しようとした。だけど、ワイヤーごときで私の強烈な攻撃を防御することは不可能だ。魔力の刃は奴のワイヤーを切断し、奴の体を一閃した。
「グガァッ!」
ようやく強烈な一撃を与えた。そして、ルハラが私の攻撃に合わせて奴にかかと落としを決めた。
「ソイヤァァァァァァァァァァ!」
「ガッハァァァァァァァァ!」
ルハラのかかとが奴の頭に命中する音が響いた。すごい音だ、この一撃なら奴はもう立つことはできないだろう。そう思っていたが、攻撃を受けてすぐに奴は立ち上がった。意外とタフな奴。
「グ……やるじゃねーか……だけど、まだ俺は倒れるわけにはいかないんだよね」
「いーえ、もうあなたの負けよ」
と、ミゼリーさんがこう言った。魔力を開放しているため、何かしているのだと私は理解した。サリーグは何を言っているんだと言ってそうな顔をしていたが、すぐに表情は変わった。
「な……何だ? この感覚は……」
「あなたはもう私の幻術にかかってるわ。もうどうすることもできない」
どうやら、ミゼリーさんは奴が弱ったタイミングを見計らい、奴に幻術魔法をかけたようだ。私とルハラの攻撃で大きなダメージを受けた上、ミゼリーさんの幻術をかけられたんじゃどうすることはできないだろう。
「ぐ……グガァァァ……目が……頭が……アアアアア……」
幻術のせいでかなり困惑しているだろう。奴は苦しそうな声を上げ、その場に倒れた。
「さて、ボスも倒したことだし、連れて帰りましょうか」
「そうっすね」
剣地がそう言った後、私たちはサリーグの体を縛り、ケブルの村へ戻って行った。
剣地たちが戻って来たのは翌日の朝だった。剣地が扉を開けると、バカップルが出迎えた。
「お疲れさん。無事でよかった」
「ヴァリエーレさんたちが待っています。ロビーにいますので、話の前に一度会いに行かれては?」
「そうだな。そうすっか」
剣地はそう言うと、成瀬とルハラと共にロビーにいるヴァリエーレたちの元へ向かった。ミゼリーはサリーグをバカップルに見せ、話をした。
「こいつは私たちが倒したボスよ。ちょっと変な性格だけど、何か知ってるかもしれないわ」
「そうですか。でも、ぐっすりと眠ってるみたいですね」
「結構派手に戦ったからね」
ミゼリーの言葉を聞いた後、シュウはサリーグの体を調べた。
「派手な切り傷があるし、頭にはでかいたんこぶ。どんな戦い方をしたのやら」
「それは……まぁ後で話すわ」
ミゼリーがシュウに返事をした後、見慣れた影がこちらへ近づいてくるのを見た。
「あれ? ティラさんじゃない。誰かを連れてこっちに来るわ」
「ハリアの村の近くのアジトのボスを連れてきたんです。これで話が進みますね」
クリムはティラに手を振って合図をしながらこう言った。
その後、タルトとスネックによる取り調べが始まった。邪魔にならないようにシュウたちはロビーで待機していた。シュウは銃の手入れを、クリムや成瀬は本を読みながら時間を潰していたが、ルハラは手当たり次第にセクハラをしていた。
「もう、このセクハラエルフ! 私のおしりを触らないでよ!」
キャニーが後ろにいるルハラを追い払おうとしたのだが、ルハラは猿のように動き、キャニーの動きをかわした。そして次の獲物をナギに定め、高くジャンプした。
「ウッヒッヒー、次の獲物はお前じゃーい!」
「キャアアアアアアアアアアア!」
「止めんかルハラ。仕事の邪魔になるだろう」
ヴィルソルは闇の手を使い、ルハラを捕らえた。ルハラはちぇーと言いながらソファに座り、ゴロゴロし始めた。そんな中、ティラの声が響いた。
「いやー、朝から飲む酒は格別にうまい! いや、酒はどんな食べ物飲み物よりも格別にうまい!」
朝から酒を飲んでいるティラを見て、剣地たちハーレムパーティーはドン引きした。
「この人……朝から飲んでるよ」
発泡酒をコップに注ぐティラの姿は、ルハラでさえもドン引きしていた。シュウはため息を吐きながらルハラに近付き、ティラのことを話した。
「こんな人だけど……一応俺とクリムの育ての親……なんだよね」
「あの飲んだくれのおばさんが二人の……あー、反面教師にすれば立派な人になるかもね」
「なーにが反面教師だエルフさんよぉ? ヒック」
ルハラの言葉を聞いたティラが、しゃっくりをしながらルハラに近付いた。酒臭いティラの迫力に押され、ルハラは後ろに下がった。
「いやー、反面教師はそのー」
「こう見えても酔ってもわたしゃ記憶がいいんだよ! そんなことを言う悪い子はおしおきじゃー!」
と言いながら、ティラはルハラの体を触り始めた。
「ギャアアアアアアアアア! まさかこの私が逆にセクハラを受けるなんて! まさか! まさか! こんな日が来るなんて思わなかったギャアアアアアアアアアア!」
逆にセクハラを受けるルハラの姿を見て、ぽつりとティーアが呟いた。
「まさかルハラが逆にセクハラを受ける光景が見れるなんて思わなかった」
「うっせーぞテメーらァァァァァァァァァ! 仕事の邪魔じゃァァァァァァァァァ!」
と、取調室からスネックの怒号が聞こえた。




