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窮地を救う一発の弾丸

 滅びを望む者のアジトでジャックたちはスゥーブと名乗るアジトのボスと戦いに入ったが、一対多数の状況でスゥーブはジャックたちを圧倒していた。そんな中、ティラが現れた。


「ティラさん。二日酔いでダウンしてたはずじゃあ」


「ミゼリーから連絡があったんだよ。なんかやばい状況になってるから、助けになってくれってね。で、話を聞いて来てみればこの状況だ」


 ラックに言葉を返しながら、ティラはスゥーブを見た。


「皆であいつをボッコボコにしようとしたら、返り討ちにあったってわけね」


「す……すまねぇ」


 と、ジャックは申し訳なさそうに頭を下げた。返り討ちにされたストブとヴァーナも、元気がなかった。そんなジャックたちを見て、ティラはため息を吐いた。


「あんまりしょぼくれるんじゃないよ。命はあるんだ。死んだらおしまいだよ」


「そうだな。お前の言う通り、死んだらおしまいだ。なら、お前もここでおしまいだ!」


 スゥーブは風を発してティラを攻撃した。それと同時にティラの目の前の巨大な氷の壁が現れ、スゥーブの風を防御した。


「クララー、ありがとねー」


 クララが魔力を使って守ってくれたと判断したティラは、クララに礼を言った。それに返事をするかのように、クララはティラに手を振った。その後、ティラは瞬時にライフルのリロードを行い、射撃の準備をした。


「さーてーと。反撃に参りますか」


「援護するよー」


 ドゥーレがティラに近付いたが、ティラは少し考えてこう答えた。


「私は大丈夫だ。怪我人の手当てをしてくれ」


「大丈夫なのー?」


「任せときなさいって。この場で一番経験積んでるの私なんだよー」


 ティラはそう答えた後、ライフルを持って氷の壁から離れた。スゥーブはティラが氷の壁から現れたことを確認し、攻撃を始めた。


「お前だけは絶対に殺してやる!」


「物騒な言葉は言わない方が身のためだよ」


 ティラはスゥーブの攻撃の合間を狙い、狙いを定めてライフルを撃った。その瞬間、スゥーブは攻撃が来ることを察知し、自分の周囲に竜巻を発した。


「フハハハハハハハハハハ! これでお前の弾丸は防げるぞ!」


 スゥーブの言葉通り、たった今放たれた弾丸は竜巻に妨害され、風によって周囲を動いていた。


「ありゃまー。こりゃーまずいね」


 風に舞う弾丸を見て、ティラはそう言ったが、この言葉の感情には危機感がなかった。まだ余裕の態度のティラを見て、スゥーブは少し苛立った。


「フン! その態度もいつまでもつかな? たかが狙撃手が俺を倒そうなどと、考えるんじゃない!」


「自分が一番強いって思ってるの? いいことを教えてあげる」


「いいこと?」


 スゥーブが問うと、ティラは少し間をおいてこう言った。


「自分が一番強いって思っているうちはただの三下だよ。常に上には上がいるってもんさ」


 その言葉を聞き、スゥーブの苛立ちは限界に達した。スゥーブは魔力を開放し、竜巻の威力を倍以上に増幅させた。


「クソ女が! 貴様は俺の竜巻でバラバラにしてやる!」


 強くなった竜巻は、周囲を吹き飛ばしながらティラに襲い掛かった。この様子を見て、クララは心配そうにジャックにこう聞いた。


「ねぇ、本当にティラさん一人で大丈夫かしら? 援護に行かなくていいのかしら?」


「何か手があるからあいつを挑発したんだろ。あの人は飲んだくれだが、やる時はやるんだ」


「そりゃまぁ知ってるけど……」


 クララは心配そうにティラを見た。ティラは危機感がなさそうに欠伸をし、その後にライフルを構えた。


「フン。弾丸は効果がないと理解してないのか?」


「理解してるさ。ま、黙って見てなさい」


 ティラはそう言うと、再び弾丸を放った。弾丸は竜巻に向かって勢いよく飛んで行った。


「バカが! さっきみたいに弾丸が竜巻に飲まれるぞ! 理解してないのか?」


「黙って見てなさいって言ったのに」


 スゥーブは一体何を考えているんだと思いながら、ティラが放った弾丸を見た。その時、何かがぶつかって弾ける音がした。


「何だ?」


 その直後、弾丸が勢いよく飛んで来て、スゥーブの右足の太ももを撃ち抜いた。


「な……な……」


 片足が崩れる中、スゥーブは何故弾丸が飛んで来たのか考えた。しばらく考えると答えは出たが、この攻撃を行うのは不可能だと思っていた。


「何で弾丸が飛んで来たか理解した?」


「貴様……まさか、竜巻に飲まれた一発目の弾丸を弾いて飛ばしたな?」


「その通り」


 ティラはどや顔でピースサインを作った。しかし、スゥーブは納得ができず、ティラにこう尋ねた。


「どうやって弾いた? 竜巻の中で弾いても再び飲まれてしまうぞ」


「だから威力を上げたんだよ。二発目の弾丸は一発目の奴より少し薄くできてて、火薬を詰め込んだ弾丸を利用したんだ」


「二発目の弾丸を破裂させて、飲まれた弾丸の勢いを飛ばしたということか。しかし、あの竜巻の動きで狙いが定まらなかったはずだ」


「私レベルになるとどんなもんでも撃てるんだよ。経験があるからね」


 と言って、ティラはスゥーブを捕らえた。




 ミゼリーはジャックたちのことを心配しつつ、剣地と成瀬とルハラと共にアジトに侵入していた。団員たちはミゼリーが放った幻により、行動不能に陥っていた。


「うーん……カワイ子ちゃんがいないなー」


「動けないのをいいことにセクハラをしないでね」


 敵のカワイ子ちゃんを狙おうとしたルハラに対し、成瀬がこう言った。その時、剣地とミゼリーは何かの音を聞き、後ろを振り返った。だが、そこには何もいなかった。


「気のせいね……」


「何か音がしたと思ったんだが」


 そう言って先に行った成瀬とルハラの元へ行こうとしたが、突然二人の足元が音を立てて崩れようとしていた。


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