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現れたのは風使い

 ストブとヴァーナのコンビが話を聞かず、勝手にアジトに攻め込んだ。ジャックはラックたちと共にアジトに突入して暴れ始めたが、心の中ではやれやれと思っていた。だが、二人の奇襲により、アジトの防御は大きく崩れた。団員は武器を持っているが、動揺して困っており、近くに来ても手を出さなかった。


「最初は驚きましたが、逆に事態がいい方向に流れましたね」


 横にいたラックがこう言うが、ジャックはにやりと笑って言葉を返した。


「まぐれだよ。まぐれ」


「確かにそうですが、この波にうまく乗れば事態は早く片が付きますよ」


「だな」


 会話を終えたと同時に、武器を持った団員がジャックとラックに向かって走ってきた。雑魚が来たと思ったジャックだったが、ドゥーレの風が団員を吹き飛ばした。


「ふぃー、危機一髪だったねー」


「そうでもねーさ。雑魚二人の相手なんてすぐにできる」


「本当?」


「ああ」


 ドゥーレに言葉を返しつつ、ジャックは水の魔力を使って戦っているクララの元へ向かった。


「苦戦してるようだな」


「そうでもないです。数は多いですが、一人一人の戦力は大したものじゃないです」


「言ってる割には苦戦してるように見えたけど」


「策を練っていたのです。どうすれば早く敵を片付けるかを」


 そう言うと、クララは何か思いついたのか、水の魔力を操って巨大な波を発生させた。


「何だあの波は?」


「ビッグウェーブだ! あーあ、サーフボード持ってくればよかった」


「そんなこと言ってる場合じゃない! 飲み込まれるぞ!」


 団員はクララが発した波から逃げ出したが、すぐに波に追いつかれて飲み込まれ、そのまま外へ流されて行った。


「ふぅ、これで一通り雑魚は片付きました」


「ご苦労さん」


 ジャックがこう言うと、ストブとヴァーナがクララに近付いてこう言った。


「クララ! 私たちの獲物を横取りするなよ!」


「結局お前も暴れてるではないか!」


「あんたたちのせいでしょうが! 作戦を練って行動しようにも、あんたたちが勝手に動いたから、こっそり素早くことを解決するつもりが台無しになっちゃったじゃないの!」


 クララの説教を聞き、二人はしょぼんとなった。そんな中、ラックとドゥーレが何かを感じ、ジャックたちの方を向いた。


「魔力を感じます!」


「こりゃ結構大きいよ。大物がいるね」


 その後、上の階の扉が開き、そこから灰色のスーツを着た男が現れた。


「君たちかい? 人のアジトに攻め込み、物騒に暴れてるのは?」


「テメーがこのアジトのボスか?」


 ジャックが剣を向けたが、男はしかめっ面をして指を鳴らした。その瞬間、強い風が発し、ジャックが持つ剣を吹き飛ばした。


「礼儀を知らないのか君は? 初対面の人間に武器を向けるのは礼儀どころか常識さえ外れている。ルールを一から学びたまえ」


「ケッ、裏ギルドのバカに礼儀に関してあーだこーだ言われたくねーよ!」


 ジャックは叫びながら斧に持ち替え、男に向かって飛びかかった。男は飛んで来るジャックを見て、ため息を吐いた。


「はぁ。本当に救えないバカだな」


 そう言うと、男は再び指を鳴らした。その瞬間、男の周囲には暴風雨が発生した。宙にいたジャックは飛んで来た雨が目に命中し、その場に落ちて行った。


「グガッ!」


 落ちた際に尻もちをついたが、それから強い風がジャックを吹き飛ばした。


「ぐ……ぐぐ……風以外にも水を使うのか……」


「その通り。じゃあくたばれ」


 男はまた指を鳴らした。その瞬間、ジャックを濡らしていた水は突如熱くなり、破裂した。




剣地:目的地へ向かう道


 目的地へ向かう車内の中、ミゼリーさんは携帯電話で誰かと話をしていた。多分ハリアって村の人と話しているのかな?


「お願いしますティラさん。ジャックたちがハリアの村の近くにある、滅びを望む者のアジトへ向かっていますが、苦戦する可能性があります。今からそちらの方へ向かってください。え? 二日酔いで動けない? それでも動いてください。今は一人でも助けが欲しいので。それでは」


 会話後、ミゼリーさんは呆れたようにため息を吐き、携帯電話をしまった。


「ねぇ、誰と話してたのー?」


 と、ルハラがミゼリーさんに近付いた。どさくさに紛れてミゼリーさんの胸を揉もうとしたのだが、手の動きで察知したのか、ミゼリーさんはルハラの手を掴み、ルハラを横の座席に座らせた。


「ハリアの村の仲間よ。ティラって言うんだけど、お酒好きで毎日飲んでるのよ。この前の健康診断で控えるようにって言われたのに……」


「その飲んだくれの人に援護を頼んだのですか?」


 成瀬の質問にミゼリーさんはそうだと答えた。飲んだくれの人に仕事を任せるなんて、人手が足りてるのか?


「酔っ払いに仕事を任せても大丈夫なの?」


「ええ。やる時はやるし、ティラさんはシュウの銃の師匠でもあるのよ。それと、シュウとクリムの親代わりでもあるの」


 シュウとクリムの親代わりか。そうだ、休み時間の時にシュウやクリムが話をしてくれた。シュウは赤ちゃんの頃に母親と死に別れ、クリムはギルドの仕事で両親が死んだ。そんな二人の面倒を見たのがティラって人なのか。飲んだくれと言われているが、どれだけ強いのだろう。


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