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アジトの居場所を聞きだせ

ルハラ:ケブルの村


 シュウとクリムが戻って来た後、ティーアとヴィルソルとハヤテ、シュガーとリナサとスネックが続けて戻って来た。皆滅びを望む者の幹部クラスか重要な位置にいる奴を捕まえて戻って来た。これで話が聞ける……わけじゃないか。物事がこんな簡単に進むとは限らない。簡単に進んでほしいけど。奴らもそれなりに他の仲間を守るために簡単に口を開かないだろう。現にシュウとクリムが捕まえた奴の取り調べが始まって数時間は経過してるが、何も話していない。シュウとクリムの脅しにも屈していないようだ。団結力は認めよう。


「ここまで苦戦するとは思わなかったな。シュウとクリムちゃんのコンビでもなかなか話を聞きだせないとは……」


 予想外の展開だったのか、タルトさんが苦虫を嚙み潰したような顔で呟いた。確かに、最強のバカップルの取り調べでも、何一つ言わないんじゃお手上げだ。ティーアたちが捕まえた奴も何も言わないし、シュガーたちが捕まえた三人組は何故か気を失っている。


「もしもーし、起きてくださーい」


 シュガーは外に落ちていた木の棒を手にし、気を失った三人組の頭を叩いていた。それなりに強く叩いてたのか、ペシペシと叩く音がここまで聞こえる。


「シュガー、これはやりすぎよ」


 ミゼリーが何とかシュガーを止め、三人組を目覚めさせようとした。無駄だったけど。そんな中、取調室として利用している部屋から、疲れた表情のシュウとクリムが現れた。


「お疲れお兄ちゃん。どう? あれから何か聞きだせた?」


「リナサ、戻ってたのか。こっちはダメだ。何時間か取り調べしてたが、何も言おうともしない」


「そっか……」


「ごめんリナサちゃん、私たち少し休むね」


「うし、それじゃあ俺が中の奴の見張りをしておくぜ」


 シュウとクリムと変わるように、ボーノが部屋に入って行った。シュウとクリムは近くのソファに座り、大きなため息を吐いた。疲れてるようだし、コーヒーでも出してあげた方がいいね。さて、コーヒーメーカーはどこかな?




 バカップルと入れ替わるように取調室に入ったボーノは、部屋の中にいたスルミンに声をかけた。


「驚きの声も出ねーのか? 子供に代わってこんなハンサムが入って来たのによー?」


「あんたがハンサム? さっきのバカップルの片割れの方がもうちょいましな顔をしているわ。自分の顔を見たら? あんたの顔は平凡面よ」


「あんたも平凡面だ。ま、平凡面同士仲良くお話でもしようや」


「お話? 取り調べの間違いではなくて?」


「話をするってことには間違いないだろ」


 ボーノは相手の警戒を解くかのように、少し笑いながらこう言った。スルミンは決して問いには話さないと決めていたのか、ボーノを見下したような笑みでずっと見ていた。


「ずっと笑ってどうしたの? 俺はお笑い芸人じゃないぜ」


「あら? 笑っていたかしら?」


「笑ってたさ。不気味にね」


 そう言葉を返すと、スルミンは再び口を閉じた。それでもずっと見下すような笑みをしていたため、ボーノはバカップルが話を聞きだすのに苦労したんだろうなと理解した。


 それからボーノは取り調べよりも、スルミンが異様な行動を起こさないように監視をすることにした。取調室でコーヒーを飲んでいたボーノだったが、少しだけスルミンはボーノが持つコーヒーカップに反応した。時計を見て、ボーノはバカップルが戻って来て数時間が経過していることに気付いた。取り調べが始まってかなり時が流れている。ボーノは時折菓子を食べたりコーヒーを飲んだりして小腹を満たしたり乾いたのどを潤したりしているが、スルミンはこの長時間何も口にはしていない。もしかしてと思い、ボーノは袋に入っているチョコを手にした。


「腹減ってるのか?」


「さぁね」


 スルミンは表情を変えずにこう答えたが、チラッとボーノが持つチョコを見た。ボーノがチョコの包みをはがし、中に入っていたチョコを口の中に入れて食べ始めた。その時、ボーノはスルミンが少し残念そうな顔をしていたことに気付いた。そしてこう判断した。どんな気丈な相手でも、空腹やのどの渇きには勝てないと。


「さーてと。チョコじゃ腹は膨れないし、出前でも頼むかなーっと」


 そう言ってボーノは携帯を手にし、連絡を始めた。


「悪いタルトさん。外のコンビニで弁当か何か買ってきてくれませんか? 俺、見張りで動けないんですよ。金は後で渡しますので。すみません、お願いします」


 連絡を終え、ボーノはまたしばらくスルミンの見張りを行った。だが、この時のスルミンの表情はさっきと違い、ボーノを睨んでいた。次にボーノがどんな動きをするのか、スルミンは理解していた。


 数分後、弁当を持ったタルトが部屋に入って来た。


「買ってきたぞボーノ」


「すみません、ありがとうございますタルトさん。これで足りますか?」


 ボーノは財布を取り、千ネカ札を出してタルトに渡した。タルトはその時ボーノの近付き、小声でこう言った。


「何を企んでるんだ?」


「相手の空腹とのどの渇きを利用した作戦です。うまく行くか分かりませんが、話を聞きだすためなら何でもしないと」


「そうだな。頼むぞボーノ」


 会話を終え、タルトは部屋から去って行った。ボーノは嬉々としながら袋から弁当を取り出し、スルミンが見えるように机の上に置いた。


「さて、先にいただきます」


 と言って、ボーノは弁当を食べ始めた。スルミンは徐々に減って行く弁当の中身を見て、悲しそうな声を上げた。その時、ボーノはこう聞いた。


「欲しい?」


「少し……分けてほしい……」


「ふむ……やっぱダメ」


 そう答えると、ボーノは再び弁当を食べ始めた。スルミンはもう限界と思い、大声でボーノにこう言った。


「答えるから食事を与えて!」


 この言葉を聞き、ボーノはにやりと笑っていた。


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