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弾丸の行方

 オミトはライフルを構え、メイスをスコープに納めようとしていた。その時、リナサとボーノの姿を見つけ、マスコミに悪戦苦闘する様子を見て心の中で笑っていた。


 作戦通りだ。


 オミトは誘う手のメンバーに、メイスのイベントがある近くのデパートで事件を起こせと命令していた。理由は、世間を騒がせてマスコミが周辺に来るように仕向ける。そうすれば、事前にメイスの護衛に来るだろうギルドの戦士や、後で合流するエイトガーディアンの仕事の妨げになるだろうと予測したのだ。


「さて、後はどのタイミングで始末しようか……」


 いつでもメイスを仕留められると考えたオミトは、余裕の表情を見せていた。そして、ライフルの引き金を引いてメイスのこめかみ部分に向けて弾丸を打ち込もうとしたその時だった。突如、どこからか弾丸が飛んで来て、メイスが持つライフルの銃口に入ったのだ。


「何!」


 驚いたオミトが声を上げた瞬間、ライフルの中で弾丸同士がぶつかり合ったせいか、ライフルは爆発した。オミトは台無しになったライフルを地面に投げ捨て、望遠鏡で弾丸が飛んできたであろう方向を向いた。その時、再び銃弾がオミトを襲った。弾丸はオミトの頬をかすり、地面に命中した。二発目の銃弾でオミトはどこから弾丸が飛んで来たか完全に把握した。方向はイオスコ。屋上にはライフルを構えたシュウが立っていた。


「あいつはバカップルのシュウ! 何故イオスコに?」


 そう叫んだ瞬間、再びシュウが弾丸を放ったのか、オミトの足元に弾丸が命中した。ここにいたら撃たれると察したオミトはすぐに立ち上がり、その場から走って去って行った。一度逃げよう。そう思いつつ、下の階に向かって走って行ったが、突如目の前から炎の渦が現れた。


「うわああああああああああああああああ!」


 現れた炎の渦から逃げるため、オミトは再び階段を上った。窓際に移動すればシュウの弾丸の餌食になるため、なるべく外には近づかないようにしようと思ったのだが、窓が割れる音が聞こえ、何が来たのかと驚いたオミトはその方向を見た。


「ふぃー、ここまで来るのに結構魔力を使っちまったぜ」


「な……貴様はエイトガーディアンのボーノ!」


「俺の名前知ってんのね」


 ボーノはそう言って、魔力を開放しつつ両手にナイフを持った。向こうはやる気だと察したオミトは、尻ポケットにある折り畳み式ナイフを手に取り、刃を出した。


「こうなったらやれるとこまでやってやる!」


 そう言ってオミトはボーノに斬りかかった。だが、ボーノはダンスのような動きでオミトの攻撃をかわした。


「狙撃の腕はそれなりにあるようだけど、ナイフの腕は素人以下だな」


「何を!」


 オミトはボーノに斬りかかったが、ボーノは再び攻撃をかわした。この野郎と思いつつオミトはボーノの方を睨んだ。だがその時、オミトは自分が窓の近くにいると気付いた。屋上を見ると、シュウらしき人影がまだいることを遠くから確認ができた。


「まずい……」


 そう呟いた瞬間、シュウが放った弾丸がオミトの足を撃ち抜いた。


「グアッ!」


「そらよっ!」


 オミトの体のバランスが崩れた瞬間、ボーノはオミトに蹴りを入れた。蹴りを喰らったオミトは小さな悲鳴を上げ、気を失った。


「終わったみたいですね」


 炎の渦を出していたクリムが、ボーノに近付いてこう言った。


「ああ。こいつも不運だな。まさかクリムとシュウがイオスコでデートしてるだなんて考えてもいなかっただろ」


 ボーノはクリムにそう言いながら、気を失ったオミトを縛っていた。その後、クリムはイオスコ屋上にいるシュウにすべてが終わったと電話をした。




 その後、イオスコを占拠していた誘う手のメンバーは全員シュウによって逮捕された。そのニュースはあっという間に速報で伝えられた。そんな中、メイスは車内で安堵の息を吐いていた。


「ふぅ……誘う手の連中は全員捕まったか」


「はい。そうみたいですね」


 運転手が欠伸をしながら答えた。もう危機が去ったと思ったメイスは、ハンカチで汗をぬぐい、笑いながら話した。


「いやー、裏ギルドの連中を扱うのは本当に危険だな。邪魔者の片付けでよく利用したが、下手したら自分が邪魔者扱いされるからな」


「言ったじゃないですか。裏の人間をそう簡単に信じてはいけないと」


「そうだな。だが、また邪魔者が現れたら……」


「そういうことを考えないでください。暗殺以外の手もあるでしょうが」


「だって~」


 その時、突如目の前にリナサが現れた。リナサは闇を発し、メイスたちが乗る車を止めた。


「な……何をするんだクソガキ! 私は政治家のメイスだぞ! 誰の邪魔をしてるのか分かってんのか!」


「邪魔? 私はあなたを捕まえに来ました」


 リナサはそう言って、タブレット端末の音量を上げた。そこからは、さっきの車内での会話が流れていた。


「な……何でさっきの会話が……」


「騒動の真っただ中、車内に盗聴器を仕掛けました。これであなたの黒い噂がはっきりしました。では、ギルドへ行きましょう」


 リナサは魔力を開放し、メイスにこう告げた。敵わないと察したメイスは、手を上げてリナサに近付いた。


 占拠事件もメイスに関する事件も解決し、タルトは安堵の息を吐いていた。


「私の運がよかったか、奴らの運がなかったか……まぁ、どちらにせよ何もかも綺麗に終わることができてよかった」


 そう言って、タルトはコーヒーを飲んだ。だが、ハヤテとスネックが書類の束を持って部屋に入って来た。


「タルトさーん! 急遽この書類全部ハンコ押してくれって!」


「今日中にやれって言われたよ」


 二人が持ってきた書類の束を見て、タルトは心の中で涙を流した。


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