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飲んだくれおばさんと機関銃

 違法な酒を作って販売している酒場、ワルーヨに入ったティラは、ガラの悪い連中に取り囲まれた。だが、そんな中でもティラは酒場の空気を吸っていた。店の中には酒の匂いが充満しているのだ。


「酒……酒……」


「な……何だこの女?」


「ただの飲んだくれか?」


「違う、こいつはギルドのガンナーだ。雑誌で見たことがある」


「俺もだ……こいつはハリアの村の女ガンナー、ティラだ!」


 ガラの悪い男は武器を持って用心してティラを囲んだが、ティラは男たちを無視し、カウンターを飛び越えた。


「ヒィィィッ!」


 カウンターの奥には避難のため移動したマスターがいたのだが、ティラはマスターのことを無視し目の前にあるボトルを手にし、ふたを開けた。


「あああああああああああああああ! 俺がキープしてた酒ー!」


 男の一人がこう言ったが、ティラはその言葉を無視して酒を近くにあったコップに注ぎ、一気に飲み干した。しばらくぶりの酒の味はティラの喉を潤した。口の中に広がる果物の風味、そして喉を少し刺激する炭酸。それらすべてを数年ぶりかのように堪能したティラは、笑顔を作った。


「んんんんんんんん……うまい!」


 ティラの行動を見ていた男たちは、ぽかんとしていた。違法な酒の取り締まりに来たのか、酒を飲みに来たのか分からないからだ。そう思っていると、クリムたちが店に飛び込んで来た。


「はいはーい、ギルドの戦士でーす!」


「お前ら全員捕まえる!」


 クリムは水の魔法を利用し、男たちのみ動きを封じ、シュウが銃を使って男たちが持つ武器を弾き飛ばした。


「うわっ! バカップルだ!」


「逃げるんだ!」


「逃げれません!」


 飛び込んでたった数秒で店内にいた男たちは確保されてしまった。だが、騒動を聞きつけた大柄な男たちが、店内に入って来た。


「おいお前ら、俺たちのなじみの店で何やってんだ?」


「少し痛い目を見るが……覚悟しておけよ?」


 大柄な男たちの登場で、その場の雰囲気に緊張感が走った。しかし。


「ウィ~ヒック! 久しぶりに酔っちまったぜェ~」


 この場の雰囲気を無視し、ティラは次々と酒を飲んでいた。ティラが飲んでいることを察したバカップルは、声を上げてティラに近付いた。


「ちょっと、何やってんですかティラさん!」


「飲んじゃダメって言われてるのに飲まないでくださいよ!」


「うるへー! 酒場ってのは酒を飲む場と書いて酒場と言うんだよ! 酒場に来たら飲まなきゃダメじゃねーか!」


 そう言ってティラは手にしたボトルに口を付けて酒を飲み始めた。大柄の男の一人が、ティラの持つボトルを見て声を上げた。


「あああああああああああああああああああああ! 俺がキープしてたボトル! あのおばさん、ラッパ飲みで飲んでやがる!」


「やべーな、お前あのおばさんと間接キスじゃねーか」


「嫌だなー。あんなおばさんと間接キスだなんて」


 おばさん。その単語を聞いたティラの目は野獣のように光った。手にしていたボトルの酒を一気に飲み干し、両手にアサルトライフルを手にして大柄な男たちに銃口を向けた。


「誰だ今おばさんって言ったクソ野郎はァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 ティラは叫びながら両手のアサルトライフルの銃口を引いた。バカップルや男たちは悲鳴を上げながら弾丸をかわしていったが、最初にクリムが氷漬けにした男たちは逃げれなかった。


「いやああああああああああああああああああああ!」


「俺たちにげれなーい!」


「助けて死にたくなァァァァァァァァァァい!」


 男たちが悲鳴を上げて逃げる中、ティラは狂ったように笑いながら銃を撃っていた。


「ヒャーッハッハッハ! か! い! か! んんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」


「叱られるようなフレーズを言うのはやめてください」


 そう言ってティラの後ろにいたシュガーが、クロロホルムがしみ込んだナプキンをティラに押し付け、眠らせた。何とか助かったと思った店のマスターはその場からこっそり逃げようとしたのだが、近くにいたシュガーがマスターの襟元を掴み、こう言った。


「逃しませんよ?」


 その時のシュガーの目を見て、マスターはさっきのティラ以上に恐怖を感じた。




 その後、違法な酒を販売したマスターと、その酒を違法だと知って飲んでいた男たちは捕まった。ティラも飲んでしまっていたのだが、過度な禁酒で精神が少しあれだったということで何とか罪にはならなかった。(この作品はフィクションなので、現実で似たようなことがあっても捕まる方の確率が高いと思う)


「いやー、久しぶりの酒の味はよかったなー」


「本当だったらティラさんも捕まってますが、今回の活躍で大目に見てくれたんですよ」


「師匠、次は本当に気を付けてください」


 バカップルは笑いながら歩くティラにこう言った。ティラは分かったと連呼し、クリムたちとハリアの村へ戻ろうとした。だがその時だった。


「おっ。地元で作られた酒か。お土産に……」


「師匠?」


「ティラさん?」


 シュウは銃を持ち、クリムは魔力を開放してティラを睨んだ。シュガーは何も言わなかったが、手には見ただけで物騒な物だとわかる薬品が入った瓶があった。ティラはため息を吐き、三人の肩を叩いてハリアの村へ戻ろうと告げた。


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