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そして誰かが呪われる

 大会が始まって時間が経過した。医務室で横になっているクリムたちはテレビで試合を見ていたが、放送事故レベルの惨劇が流れているためか、顔面が青くなっていた。試合の中で参加者たちは血塗れとなっていたのだ。血塗れなのはまだいい方のレベルであり、中には腕が切れかかった者、腹を斬られて中の物が出てきそうになった者、指を斬り落とされる者など重傷者が出てきたのだ。さらには、首を斬られて命を落とす者もいる。


「ルール無用の戦いをテレビで……しかも朝に流すなんて……」


 テレビで流れる惨劇を見て、クリムはぞっとしていた。シュウは早く体調を治さないとと思い、焦っていた。




 ジャックはカーボン、タルトと共に呪いの剣がある場所へ向かっていた。


「あ、カーボン選手! 次の試合があと少しで始まるのですが」


「用がある。もし、間に合わなかったら失格で構わない!」


 カーボンは声をかけてきた関係者にこう言うと、ジャックに小声でこう言った。


「俺も協力する。この件を見逃したら本当にやばいことになる」


「感謝するぜ」


 会話後、三人は呪いの剣がある場所へ走った。だが、呪いの剣が収納されているケースの前には武装した警備兵が数名立っており、簡単に剣を取り出すのは不可能となっていた。


「クッ……これじゃあ剣に近付くことはできないな……」


「私に任せてもらおう」


 タルトが前に立ち、警備兵に近付いた。警備兵はタルトに気付き、敬礼をした。


「た……タルト殿! これはこれは」


「どうかしたのでしょうか?」


「私がこの剣を見守る。試合が始まるまで退屈なのでな」


「しかし、これは我々が村長から受けた依頼です」


「村長の言うことを聞かなければ、給料が減らされます」


「これでどうだ?」


 タルトは懐から封筒を出し、警備兵に渡した。封筒の中を見た警備兵は目を輝かせてこう言った。


「え? 本当にいいんですか?」


「ああ。もし、給料が減らされてもこの分でまかなえるだろう」


「ありがとうございます! 実は言うと、あんな村長の言うことを聞きたくなかったんですよ」


「これを機に職を変えます。ありがとうございまーす!」


 タルトから封筒を受け取った警備兵は、喜んで去って行った。あの中に金が入ってたのだろう。ジャックはそう思い、思わず苦笑いを作った。だが、これで呪いの剣を壊すことができる。こんな物騒な大会を終わらし、ついでに村長の悪行を暴こう。ジャックはそう思いながら呪いの剣があるケースに近付いた。


「うわ、間近で見ると禍々しい物を感じるぜ……」


 呪いの剣を見たジャックは、恐ろしそうに呟いた。剣は鞘に収まっているのだが、それでも剣から禍々しい物を感じていた。鞘は黒く染まっていたが、古の返り血なのか、所々色が変色していた。剣全体を見ても、派手に戦ったのか所々欠けている場所があり、変色した返り血も存在した。


「早く壊そう。見てるだけでも吐き気がしてきた」


 カーボンが手で口を抑えながらこう言った。その意見に賛成したタルトは、ケースを取って腰に携えてある剣を手にしようとした。その時だった。突如タルトの顔面が青くなり、体が震えだしたのだ。


「タルトさん? どうしたんだ?」


「声が……声が聞こえる?」


「声? いや……何も聞こえぬが」


 突如声が聞こえるとタルトが言ったが、ジャックとカーボンは何の声だか分からなかった。聞こえてくるのは、試合中の戦士の奇怪な叫び声だけである。


「な……何だこの声は……止めろ……止めろ!」


「ちょっとタルトさん。医務室行った方がいいですよ」


「ジャックさんの言う通りだ。あとは我々で剣を処分しますので」


「が……があああああああああああああああああああああああ!」


 タルトは大声を発し、近付いてきた二人を弾き飛ばした。そして、呪いの剣を手にしてしまった。


「タルトさん! あんた、何やってんだ!」


 突如奇怪な行動を起こしたタルトを見て、ジャックは止めようとした。だが、ジャックが止める前にタルトは呪いの剣を鞘から引き抜いてしまった。


「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!」


 タルトは勢いを付けてジャックに斬りかかった。寸の所で攻撃を回避したジャックだったが、突如タルトがジャックに斬りかかったのを見た周りの関係者は、悲鳴を上げて逃げて行った。


「タルトさん……あんた、どうしちまったんだ?」


「ジャックさん、どうやらケースを開けた時にタルトさんは呪われた可能性がある」


 カーボンはタルトに近付き、こう話した。その声が聞こえたのか、タルトは奇妙な笑い声を発した。


「ケッケッケ……そのごっつい奴の言うとおりだ。お前ら三人は俺の邪気に耐えられた。その中でこいつが一番強そうだったからなぁ。だから、近付いた時を狙って呪いをかけ、俺を取り出すように操ったのだ」


「お前……もしかして……」


「察しの通り。俺はこの剣だ」


 剣に呪われたタルトは、手にした剣を前に突き出してこう答えた。ジャックは武器を持って構えたが、カーボンが前に出てこう言った。


「俺がタルトさんを抑える。ジャックさんはシュウたちの元へ行ってこのことを伝えてくれ!」


「耐えられるか?」


「俺も剣士の一人だ。やってみせる!」


 その時、タルトがカーボンに襲い掛かった。カーボンはタルトの一撃を剣で受け止め、ジャックが逃げる隙を作った。その隙に、ジャックはすまないと小さく呟いて医務室へ向かった。

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