合成果汁との戦い!
シュウとリナサは合成果汁のアジトへ行く前に、どんな暴走族なのか情報を集めていた。地元警察によると、合成果汁に所属するメンバーは百人単位で、地元はもちろん全国の暴走族の中でもかなり有名なグループである。柄が悪いのはもちろんのこと、中には警察でも手が追えない暴れん坊な奴がいる。その為、警察だけでは彼らの処分ができないのである。
「ハッハッハー! 何だテメーら? クソガキに話なんかするわけがねーだろバーカ!」
と、成人男性と同じくらいの大きさの釘バットを肩に担いだ男が二人の前に現れた。だが、シュウの左手に持つ拳銃が自分の額に当てられたのを察し、冷や汗をかいた。
「お前たちに話の拒否権はない。洗いざらい話してもらうぜ」
「こ……このガキ……銃を持ってやがる……たしゅけて……」
「さっきまでの威勢はどうした? 話をすれば助けてやるぜ」
シュウは引き金を指にかけ、男にこう言った。男は全てを言おうとしたが、仲間たちが大声でこう言った。
「絶対に言うな! あのことを言ったら俺たちも無事じゃ済まねーぞ!」
「死んでもいい、だから仲間を売るようなことは絶対にやめろ!」
「お前のことは絶対に忘れないよ」
「おい! 助けてくれたっていいじゃねーかお前ら!」
男は涙を流しながら仲間にこう言った。だが、次の瞬間に発砲音が響いた。撃たれたと思った男は白目を向き、泡を吐いてその場に倒れた。
「非情な奴らだな。一度、お灸をすえた方がいいな」
「そうだねお兄ちゃん」
リナサはそう言った後、闇の魔力を放ち、周囲に闇の球体を発生させた。見たこともない闇の球体を見て、合成果汁のメンバーは驚いた。しかし、一部のメンバーは驚きもせずに武器を持って闇の球体に近付いた。
「ビビってんじゃねーぞ! 所詮は魔力の塊。ぶっ叩いてぶっ壊せばいいだけだ!」
と言って、闇の球体に向けて武器である大きな木の棒を振り下ろしたが、木の棒は闇に飲まれ、先端が跡形もなく消えてしまった。
「あら……嘘……」
「それ」
リナサが指揮者のように指を動かすと、それに合わせて闇の球体が動き始めた。
「うわあああああああああああああ! こっちに来る!」
「来ないで、来ないでェェェェェェェェェ!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア! まだ死にたくねーよ!」
「助けてェェェェェェェェェェェ!」
合成果汁のメンバーは、情けない悲鳴を上げながらリナサが動かす闇から逃げていた。それを上から見ていた一人の男が、高くジャンプしてシュウとリナサの前に降り立った。
「オイガキ共、人んちのアジトで好き勝手やってんじゃねーよ」
「お前がまとめ役か」
「そんなもんだな」
男は上着を脱ぎ、上半身裸になった。男の裸を見て、シュウとリナサは少し呆れてこう言った。
「すげー筋肉だけど……」
「それで勝てると思ってるんですか?」
「何を! 力こそすべて! 力があるからこそ勝利へとつながる! お前たちのようなクソガキは、この俺の拳で一捻り……」
男が話している途中で、リナサは闇の魔力を放った。闇の魔力は男に近付いて爆弾のように破裂し、男を吹き飛ばした。壁にめり込んだ男の股下に目がけ、シュウは弾丸を放った。男はめり込んだ弾丸を見て、目を丸くして驚いた。
「話す気になったか?」
「時間がないので、さっさとお願いします」
と、シュウとリナサはこう言った。二人の姿を見て、メンバーの一人は思い出したかのようにこう言った。
「あ……あいつら……バカップルのシュウと、エイトガーディアンのリナサ……」
「ゲッ、あんな大物と俺らやりあおうとしてたのかよ……」
「どうりで勝てる気がしなかったわけだ……」
メンバーは武器を捨てながら、小声で会話をしていた。
フルツエンターテイメントでメロたちの護衛をしているクリムとナギは、合成果汁の元へ向かったシュウとリナサの連絡を受けていた。
「分かりました先輩。これで脅迫メールの件は片付きました」
『だけど、合成果汁のアジトはここだけじゃない。他にもある』
「はい。ライブ当日までに合成果汁の全アジトを潰すのは不可能に近いので、一度戻って来てください」
『ああ。もう一度話をしよう』
「ですね」
連絡を終えたクリムは、チェリーポップの護衛をしているナギの元へ向かい、先ほどの話を伝えた。
「やっぱりそうね、合成果汁がこの件に関わってたのね」
「その口ぶりだと、予想していたかのように見えます」
「まーね。芸能界の裏情報で、チェリーポップのキウが元有名暴走族だってことは知ってたわ。まぁ、知ってたってだけで信じてはなかったけど」
「その手の情報は嘘の情報もありますからね」
「ええ。でも、今はとにかく護衛をしないと。ライブ当日まで何があるか分からないし」
「はい。先輩とリナサちゃんも戻ってくると言うので、後で話し合いをしましょう」
と、クリムとナギは話をしていた。だが、こっそり聞き耳を立てていたキウは、アジトの一つが潰れたことを知り、小さく舌打ちをした。それを見たレーモは、キウを見下したような笑顔で見つめていた。




