殴り込みの時
3日後、夜。シュウ達はイステッドブラッドのビルの前に来ていた。
「さーて、久しぶりに暴れますかねー」
ティアは手首を鳴らしながらこう言った。その横で、バカップルがティラにこう伝えた。
「無茶しないでくださいね」
「ティラさん、この3日間ずっと酒を飲んでましたから」
「お前らだってずっとイチャイチャイチャイチャしてたじゃねーか。風呂の時まで一緒にいやがって。不順異性交遊はんたーい」
「皆さん……会話はその辺にして先に行きましょう」
話を聞いて、呆れていたデアはこう言った。その言葉を聞いてシュウ達はすぐに戦闘できるように準備をした。ティアは周りを見回し、人がいるかどうかを調べた。
「この辺に人が来ないようにはしたか?」
「はい。すでにこの周辺地域の住民は皆避難させました」
「よろしい。クリム、一発ぶっ放してやれ」
「はーい」
ティアに指示され、クリムは魔力を溜め始めた。
「この魔力は……」
クリムの近くにいたデアは、あまりの魔力の衝撃に耐え切れず、後ろに倒れそうになった。クリムの前には、巨大な火炎玉が発していた。
「いきますよ~」
クリムはそう言うと、その火炎球をイステッドブラッドのビルに向けて放った。火炎玉がビルに命中し、大爆発を起こした。
「た~まや~」
「師匠、呑気なことを言ってる場合じゃないですよ。突入しますよ」
「おう」
先制攻撃を当てた後、シュウ達はビルの中へ入って行った。
ビルの中は大混乱となっていた。イステッドブラッドの団員が、慌てながら消化器などを持って消火作業を行っていた。
「一体どこの組のもんや!?」
「わしらにカチコミ入れるなんて偉い度胸しとる奴やのう‼」
「逆にやっちまえ! その前に火を消せ!」
団員達の声を聞いたのか、上の階から黒いコートを着た男が降りてきた。
「誰の仕業か分かったか?」
「あ、ディアボ親分‼」
「いえ、まだ調べてはいません‼」
「そうか……そうだな、先に消火作業をして被害を食い止めろ」
イステッドブラッドのボス、ディアボは部下に消火を命令し、部屋に戻ろうとした。その時、サイレン音が鳴り響いた。
『緊急事態です‼ シェラールのギルドが乗り込んできました‼』
「なんやて!? あいつら、ついに実力行使に出たか‼」
「ま、いつかはこうなると思ってたがな……」
シュウ達が乗り込んで来たのを察知したディアボだったが、彼は冷静だった。慌てている団員達は、こんな時でも冷静なディアボの事をずっと見ていた。
「流石親分や、こんな時でも冷静だなんて」
「何十年も頭張ってるから、いろいろと経験を積んでんやろうな」
「口より手ぇ動かさんかい‼ 侵入者の相手は俺とスパル、リアハでやる‼」
スパルとリアハ。この名前を聞いた団員達は驚いた。この2人はイステッドブラッドの中でも優秀な幹部なのである。
「あいつらと俺で対処すれば、ギルドの戦士なんて楽にひねりつぶせる」
「そうですね、親分、お願いします‼」
「戦えないわしらの分までやって来てください‼」
「おうよ」
ディアボは団員に返事をした後、下の階へ向かった。
「スパル‼ リアハ‼ お前らの出番だ‼」
ディアボが叫んだ後、隣の部屋からラフな服装の男と、ライフル銃を持った女が現れた。
「俺達の出番ですか~?」
「侵入者の相手位、下っ端にやらせればいいのに……」
「団員達には消火活動を行ってもらう。スパル、リアハ。お前らは魔法使いの連れを始末しろ。俺は魔法使いを始末する」
「あーい」
「了解……」
返事をしたスパルとリアハは、別方向へ散って行った。やる気のなさそうな2人を見て、ディアボは不安そうに息を吐いた。
同時刻、シュウ達は団員達を倒しながら上の階へ向かっていた。
「侵入者はどこだ!?」
「下の階にいるぞ‼」
「加減はするな、始末しろ‼」
上の階から、続々と団員達が現れてきている。シュウは銃を撃って応戦しているが、数が多いせいで攻撃が間に合わない。クリムも魔法で応戦しているが、少し加減をしている。
「このままじゃあボスと戦う前に力が尽きるな……」
「まじーなこれ」
ティラは腰に付けているポシェットを見て、舌打ちをした。
「あまり使いたくねーんだけどなー」
渋々こう言うと、ポシェットに手を突っ込んである物を投げた。それを見て、団員達は驚いた。
「グレネードだ‼」
「おわあああああああああああ‼」
「爆発するぞ、下がれ‼」
ティラはシュウとクリムを抱くように飛びついた。その直後、ティラが投げたグレネードが大爆発を起こした。
「ゲホッ、ゲホッ……」
「大丈夫かデア?」
「ええ……何とか」
「無茶しすぎですよ師匠……」
「これはやりすぎです」
バカップルは煙が晴れ、周辺が崩れ落ちた階段を見てこう呟いた。
「ま、危機を脱出できたからいいじゃねーか」
ティラは笑いながらこう言っていたが、急に真剣な顔になった。
「皆伏せろ‼」
ティラの言葉を聞き、シュウ達は一斉に伏せたが、デアは少し動きが遅かった。すると、銃声が響いた。
「グアァッ‼」
「デア‼」
ティラは急いでデアに駆け寄り、傷の様子を調べた。
「左肩を撃たれたか……」
「すみません……」
苦しそうに詫びの言葉を言うデアに対し、ティラは動くなと指示をした。その後、シュウとクリムにこう言った。
「お前らは先に行け。スナイパーは私が仕留める。それと、デアの治療もする」
「分かりました」
「お願いします」
シュウとクリムは返事をした後、上の階へ向かって行った。




