二人一緒に任務
クリムが帰って来た翌朝。シュウは朝日のまぶしさで目が覚めた。
「う……もう朝か……」
「おはようございます。先輩」
目の前には、パジャマ姿のクリムが横になっていた。
「ん、おはようクリム」
シュウはクリムを抱きしめ、挨拶を交わした。その後、二人は身支度をしてギルドの集会場へ向かった。
「おはようございます。今日からクリムが世話になります」
「今日からギルドにお世話になるクリム・カスタードです。よろしくお願いします」
ギルドの受付嬢は賢者であるクリムを見て、目が点となっていた。
「い……いきなり言われても……」
「昨日、村長の方からギルド加入の許しは得ています」
「そ……そうですか。では、本日の依頼は……」
「今日はこの依頼に出ろ!」
と、ジャックが話に割り込んできた。
「どうかしたんですかジャック先輩?」
「お前らの激しいラブシーンを聞いて、ギルドのほとんどの女戦士がやる気をなくしたんだよ」
「聞いてたんですか?」
「そうだよ。まぁ、とりあえず早く依頼の確認をしておけよ」
と、二人はジャックから依頼の書類を受け取った。
「ふむふむ。ポイズンモスキートの討伐ですか」
ポイズンモスキートとは、猛毒を持った巨大な蚊である。刺されたら体中に腫物が発生し、最悪死んでしまうこともある。ただ、刺されてからすぐに回復魔法をかければ治るのだが、腫物は残る。
「こいつらの討伐なら、すぐに終わりますよ」
「俺とクリムで行ってきます」
「そうか。俺は別の連中と任務行ってくるから。いくら雑魚相手でも気を付けろよ」
そう言って、ジャックは去って行った。その後、二人は依頼を受注し、外にある車で依頼場所へ向かって行った。
数分後、二人を乗せた車は近くの草原へ到着した。
「では、依頼が終わり次第迎えに行きます。気を付けて」
と言って、運転手は去って行った。クリムは背伸びをして、周りを見回した。
「この辺にはいなさそうですね」
「ああ。奥の方へ行ってみるか」
「はい」
会話をした後、二人は手をつないで周辺を歩き始めた。歩く中、クリムは昔を思い出しながらこう言った。
「この辺り、全然変わってないですね」
「ああ。ここら辺は10年経っても変わってない。昔のまんまだ」
「そうですね。で、生息しているモンスターも変わってないようですね」
クリムはそう言いながら、襲い掛かろうとした狼型のモンスターを、炎の魔法で焼き尽くした。
「ああ。チュエールのモンスターと比べてレベルは低いだろ」
「そうですね。向こうのモンスターの方が強くて利口ですね」
「そんな奴らを相手に毎日修行してたんだろ?」
「ええ。最初は苦戦してましたが、2年目あたりになると普通に倒せるレベルに到達しました」
「へー。2年で結構強くなるもんだな」
「それでも賢者と名乗るのは程遠かったです。他にも学ぶことがたくさんあったので」
二人の会話の中、突如羽音が響き渡った。
「どうやらお出ましのようですね」
「ああ」
クリムは杖を持ち、シュウは左手にハンドガンを装備した。二人の周りには、無数のポイズンモスキートが飛び回っていた。
「向こうから来てくれるとは、都合がいいです」
クリムはそう言うと、右手を上に上げた。
「賢者の力、見せてあげましょう」
その直後、クリムの右手から巨大な氷が発生し、上に飛んで行った。そして、空から氷柱がポイズンモスキートに向かって落ちてきた。
「すごい技だな」
「こんなのは序の口です。もっともっとすごい魔法はあるんですが、雑魚相手に使うのはもったいないので」
「そうだな。魔力を派手に使ったら疲れるもんな」
そんな中、生き残ったポイズンモスキートが、クリムを狙って針を向けていた。だが、奇襲に気付いたシュウが一瞬で銃で狙いを定め、ポイズンモスキートを打ち抜いた。
「先輩は銃を使うんですね」
「ああ。慣れるのに結構苦労したよ」
シュウはハンドガンをしまい、クリムに静かにするように合図を送った。
「まだいますね」
「おびき寄せて一気に叩くか?」
「ええ。一気に終わらせましょう」
その後、二人は後ろを向いて逃げて行った。その後を追うかのように、後ろからポイズンモスキートの群れが追ってきた。二人が逃げた先には壁があった。しかも、左右にも壁があるため、逃げることは出来ない。
「ここならいいでしょう」
「よし、反撃と行くぜ」
シュウはアサルトライフルを構え、飛んでくるポイズンモスキートを撃ち始めた。クリムは両手に魔力を発し、両手を前に着きだした。
「焼き尽くします‼」
クリムの両手から、炎が放たれた。その炎はポイズンモスキートを飲み込みながら、激しく動き回った。
「うっひゃー、派手にやるなー」
「えへへ~、もっと褒めてくださ~い」
「よしよし」
シュウはクリムを抱き寄せ、頭をなで始めた。そんな時、通信機具からサイレンが鳴り響いた。
「どうかしました?」
『緊急事態発生! 村から西方面に超大型鳥獣族のモンスターが現れたとの情報‼ シュウさんとクリムさんは急いで西方面へ向かってください‼』
「分かりました。今すぐ行きます‼」
シュウは通信機具を切った後、クリムにこう言った。
「やばい事になった。西の方に超大型鳥獣モンスターが出たらしい」
「通信の声が聞こえました」
「今から行く。まだ、戦えるか?」
シュウの言葉を聞き、クリムはにやりと笑ってこう返事した。
「もちろんです。先輩、ここから車で西の方へ行くには時間がかかります。私に抱き着いてください」
その後、シュウはクリムに抱き着いた。
「はぁ、先輩の体が私の体を……」
「で、次はどうするんだ?」
「しっかり捕まっててください。そして、絶対に離さないでください!これから飛びます‼」
クリムは風の魔法を発し、高く飛び上がった。
「うおおおおおおおおおおおお‼ こんなこともできるのか!?」
「はい! 魔力を上手く使えば空を飛ぶことができるんです‼」
「クリム、本当にお前はすごいな‼」
「いやー、それ程でも~」
クリムはにやけ顔で照れながらこう言った。そんな中、二人は目の前に大きな鳥を発見した。
「あれが今言ってたモンスターですね!」
「多分そうだろ。この辺で降りれられるか?」
「はい‼ さぁ、暴れますよ‼」
その後、クリムは魔力を操って地面に着地した。