幼子VSバルナード
ブッソーな森で、幼いころのクリムとストブたちは偶然出会った。だが、それと同時に何かが近付いてきた。それを察したクリムはストブたちに向かって叫んだ。
「後ろに下がって!」
クリムの声を聞いたストブたちは後ろに下がった。その直後、ストブたちがいた場所に巨大な木の枝のような物が現れた。
「うっひー、尖ってる」
「あれに突き刺さったら、死んでたかもね」
と、ストブとドゥーレがこう言った。攻撃を回避したヴァーナは腕組をして微笑んでいた。
「フッ、我らに向かって奇襲とは……卑怯なことを考える奴もいるものだ」
「足震えてるわよ」
クララの言葉を聞き、ヴァーナは小声でクララに見なかったことにしてと告げた。クリムは前の方を見て、魔法の杖を向けていた。
「何かが来ます。構えていてください」
「ああ。どんな奴かわくわくするな」
クリムの言葉を聞いたストブは、嬉しそうに構えをとった。それからすぐ、巨大樹モンスター、バルナードが姿を現した。
「何だあの木は? 動いてるし、目も口もある!」
「巨大樹モンスターバルナード。狙った獲物の養分や魔力を吸い取って生きる木のモンスターです。そういえば、図鑑にはこの時期になると動きが活発になるって書いてあったな……」
「あのばーさん、そんな状況でよく私たちをこんな所へ送ったな」
「修行なんでしょう。来ますよ!」
クリムはストブにこう言うと、風の魔法を発してバルナードの枝を斬り落とした。バルナードは悲鳴を上げたが、すぐに新しい枝が生えた。それを見たクララは、声を上げて驚いた。
「そんな! 斬ってもまた生えてくるなんて!」
「気にしないでください。確かに枝を落としても新しい枝が生えますが、ダメージは通ってます!」
クララにこう言いながら、クリムは魔力を開放して地面を殴った。その動きは見たクララは、また驚いた。
「まさかあなた、地面魔法を……」
「使ったことはありませんし、自分が使えるとは分かりませんが、一か八かです」
返事をしながらクリムは魔力を操った。その直後、地面に亀裂が走り、バルナードに向かって伸びて行った。
「すごい……まさか地面魔法を使えるとは……」
「ハッ!」
クララが驚く中、クリムは亀裂を広げて地面に穴を作った。しかし、バルナードを落とすまでには穴は広がらなかった。だが、バルナードの片足は亀裂に落ち、バルナードの態勢は崩れた。
「今だ!」
ストブは攻撃のチャンスだと察し、炎の拳でバルナードに殴りかかった。最初に三発はバルナードに命中したが、四発目の攻撃の最中にバルナードはストブに向かって枝を伸ばしていた。ストブはそれに気が付いたが、かわすことはできなかった。
「しまった……」
「全くもう、相手が倒れかかってるって思ってるからこうなるのよ」
と、クララが氷の剣で生えてくる枝を斬り落とした。ストブは地面に着地し、クララに礼を言った。その後、両手に発している炎を一つにまとめ、バルナードに向けた。
「いっちょどでかい奴を喰らわせてやるぜ!」
そう言って、ストブは巨大な炎の塊を放った。炎の塊はバルナードに命中して破裂し、バルナードを吹き飛ばした。その時、上空から笑い声が聞こえた。
「ハーッハッハ! 次は我の番のようだな!」
ヴァーナはそう言いながら魔力を開放し、雷の塊を作り出した。そして、それをバルナードの上に設置し、こう言った。
「破裂しろ! そして、黒の雷を響かせろ!」
「何言ってんだこいつ?」
ドゥーレが小さく呟いた直後、巨大な黒い雷がバルナードに命中した。この攻撃で、バルナードの体から生えている枝の三分の二が焼け落ちた。
「さーて、次は私の番だねっと」
ドゥーレは舞を踊るかのような動きをし、それに合わせて風の刃を発した。バルナードもこの攻撃がまずいと思ったのか、何とか風の刃をかわそうとした。だが、ドゥーレが放つ風の刃はバルナードの動きを追って行った。そのせいで、バルナードの表面は削れて行った。
「次誰か攻撃してー」
「私が行きます」
クララはそう言って目の前に無数の氷柱を作り、それをバルナードに向けて発射した。表面が削れたせいで、バルナードの防御は薄くなっている。そのせいで、バルナードが喰らうダメージは増えた。
「クリムって言ったっけ、トドメを任してもいい?」
「はい。任せてください」
クリムはクララにそう言うと、巨大な闇を発し、バルナードに近付いた。
「これで終わりにします!」
と言って、クリムは闇の魔力をバルナードにぶつけた。闇は荒々しい音を立てながらバルナードの体を削るように消していった。そして数秒後、バルナードは完全に消滅していた。
「か……勝った……」
「我らの敵ではなかったな! アーッハッハ!」
クララは緊張が解けてその場に座り込んだが、ヴァーナは勝利を察して大声で笑っていた。だが、ストブとドゥーレは呆れたような顔をしてこう言っていた。
「おーい、こっちを手伝ってくれー」
「この子、疲れて倒れちゃった」
と、二人は倒れて目を回しているクリムを肩で担ぎ、こう言った。
同時刻、ラーソンは上空からこの戦いの様子を見ていた。
「まさか、あの子らであのバルナードを倒すなんてのー」
感心しながら呟き、周囲を見回した。他の魔法使いが別のバルナードに苦戦しているため、ラーソンは巨大な光を発した。
「さーて、少しは手を貸してやるかのー」
と言って、光を上に向けて放ち、破裂させた。その後、光は雨のように別のバルナードたちに向かって降り注いだ。




