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危険な森での修業

 ローラからすべてを打ち明けられた後、クリムは修行に励んだ。ローラに自分自身の成長を見せつけて安心させるため、そしてシュウの為に。


 クリムがチュエールで修行を始めて三ヶ月が過ぎた。ローラによる修行を受けてか、クリムは同時期に修行を始めた魔法使いよりも力が倍以上に増していた。他の魔法使いもローラによる修行を受けたのだが、あまりの厳しさに修行を止める者が出ていた。そんな中で、三ヶ月も修行を耐えているクリムを見て、他の魔法使いはまだ幼いクリムを注目していた。


「おい見ろよ、あの噂の女の子だぜ」


「まだ幼稚園か保育園に通う歳だろ、よくローラ様の修行に耐えれるなー」


「話によれば、あの子はローラ様とラーソン様のお孫らしい」


「へー。そのせいで厳しい修行を受けてんのかねぇ?」


「逆らしい。すぐに追い出すように厳しい修行をさせてたけど、逆に耐えて強くなったらしい」


「まだ子供なのに、根性あるねぇ」


 と、他の魔法使いはクリムを見て話をしていた。そんな中、館内にあるスピーカーからローラの声が響いた。


『修行中の魔法使いはすぐに中央グラウンドに集合。これから集団による修行を始めるよ』


『おーいローラ、はさみ見なかった? 袋とじを開けたいんだけど』


『そんなに開けたいなら開けてやるよ!』


『わー! 風の魔力を使わないで、せっかく下の町に行って買って来たエロ本が……あああああああああああああああああ! 袋とじごとズタズタにー!』


『あんたもズタズタにしてやるよ!』


『ああああああああああああああああああああああああああああああああ!』


 スピーカーからラーソンの悲鳴が聞こえたが、すぐにスピーカーの電源は切れた。その後、クリムたち修行中の魔法使いは中央グラウンドにやって来た。そこにはローラと絆創膏や包帯が巻かれたラーソンが立っていた。


「ではこれより、ブッソーな森で修行を始めようと思う」


 ブッソーな森。その名を聞いて、魔法使いたちはざわめき始めた。クリムもこの森の名を聞き、冷や汗をかいた。


 ブッソーな森はその名の通り物騒なモンスターや植物が生息している森なのである。チュエールでもここで修行をするのだが、大怪我を負う者、あるいは二度と動けなくなる者もいる。


「す……すみません、修行は強制参加ですか?」


 手を上げた魔法使いの質問を聞き、ローラは睨みながらこう答えた。


「当たり前だよ。全員参加。チュエールで賢者として認められた奴は全員あの森で修行をしたんだよ」


 ローラの答えを聞き、魔法使いたちはクリムを見ながらこう言った。


「ですが、今回の修行にはあなたの可愛い可愛いお孫さんがいるんですよ!」


「唯一の肉親じゃないんですか? この鬼ババア!」


「誰が鬼ババアじゃ!」


「いーや、誰がどう見ても鬼ババアだと思うんだけどねー」


 その後、鬼ババアと言ったラーソンと魔法使いはローラの炎によって丸焦げにされた。話が脱線してしまったので、ローラは咳ばらいをして話を戻した。


「ブッソーな森の奥にはそこでしか採掘されない永久水の塊という鉱物がある。それを欠片だけでも持ってきたら合格。期限は今日の夕暮れまで、できなければ明日もやるからね。この修行を終わらせなければ、次の修行は行けないよ」


 ローラの話を聞き、魔法使いたちは冷や汗をかいた。だが、一部のやる気のある魔法使いは声を上げながら森の中へ入って行った。それを見て、修行に抵抗を感じていた魔法使いも、こうなったらやってやるという気持ちで森へ向かって行った。




 クリムは森の中へ入り、周囲を見渡していた。永久水の塊に関してのヒントはもらえなかったが、水に関係するだろうとクリムは考え、水のある所へ向かっていたのだ。


「えーと……湖か池はどこかな?」


 きょろきょろと見渡しながら歩いていると、前から急いで走っている魔法使いの姿が映った。


「どうかしたんですか?」


「人喰い花だ! 逃げろ、食われるぞ!」


 その直後、魔法使いの足元にツタが生え、そのまま宙へ浮かしてしまった。奥から、うねうねと触手のように根っこを動かしながら移動している花の化け物が現れた。


「あれが人喰い花ですか」


 クリムはそう言うと、炎を発して人喰い花を灰にした。魔法使いの足を掴んでいたツタは急に黒くなって灰となり、風の中へ消えて行った。


「た……助かった……」


「大丈夫ですか?」


「た……立てない。腰を抜かした」


 魔法使いの言葉を聞き、クリムは魔力を開放して風を発した。


「チュエールまで風を使って運びます」


「大丈夫だ、まだ幼い君にこれ以上助けられては、大の大人として恥ずかしい。少し休んでから行くよ」


「そうですか。分かりました」


 クリムはそう言って魔法使いを下ろした。その時、魔法使いはポケットからチョコレートを取り出し、クリムに渡した。


「助けてくれたお礼だ。この先に行くんだろ? 気を付けるんだ。本当は俺も一緒に行きたいけど、こんな状態じゃ……」


「気にしないでください。あの鬼ババアのせいでそれなりに強くなってますので」


 と、クリムは笑顔でこう言った。


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