襲撃者の正体
インチの護衛依頼中、クリムたちは炎を使う何者かに襲われた。スネックは銃剣を構え、襲撃者をスコープに納め、発砲した。だが、空中にいる襲撃者は突如姿を消した。
「何!」
驚いたスネックは周囲を見回し、襲撃者を探した。その直後、魔力を感じ、スネックはバリアを展開した。それと同時にスネックに向けて炎が飛んで来た。
「下にいたってわけか……」
「黙れ、幻影を見分けられぬ大バカが」
襲撃者はそう言うと、スネックのバリアを破壊した。ガラス片のように散っていくバリアを見て、スネックは唖然としていた。
「嘘だろ……魔力を込めたバリアなのに……」
「スネックさん!」
ここでクリムがスネックの前に現れ、無数の風の刃で襲撃者を攻撃した。クリムの攻撃を受けた襲撃者は、羽織っていたローブを脱いだ。
「チッ、お前も強くなってたのか、クリム」
「あなたはエグゲ……」
襲撃者、エグゲを見てクリムは嫌な顔をした。その直後、シュウはエグゲに向かって発砲した。だが、エグゲはシュウの弾丸をかわし、接近してきたボーノに対し炎で作ったナイフで応戦した。
「おいクリム、こいつは何者だ?」
ボーノはクリムに近付きこう聞いた。クリムはため息交じりで簡単にこう言った。
「私と争った賢者候補の一人だった男です。私に負けた後、行方が分からなくなったんですが……」
「お前を殺すため、修行をしてたのだよ」
エグゲはそう言うと、周囲に無数の火の玉を発した。だが、ローラが水の魔力を発し、エグゲの火の玉を消し去った。
「久しぶりだねぇ、エグゲ。まさか賢者の称号の為に、人殺しを始めたなんて思わなかったよ」
「師匠……まさかこんな所で会うとはな」
「わしもいるぞー」
と、ラーソンが笑いながらこう言った。エグゲは近付いてくるラーソンに対し、火の玉を発したが、ラーソンは手にしている杖を振り回して飛んで来た火の玉をかき消した。
「一つ訪ねたい。トイスをやったのはお前か?」
「そうだ。高名と言ったが、所詮はただの老いぼれだ。なーに、あんたらもあの世へ送ってやるよ。クリムと一緒になぁ!」
エグゲは魔力を開放し、周囲に火柱を発した。インチはボーノに近付き、こう言った。
「私はどうすればいい?」
「安全な所……はもうないから、俺らから離れるな」
「すまない」
インチと会話した後、ボーノはスネックにこう言った。
「俺はインチを守るから、後は頼む!」
「ああ。ちゃんと守れよ」
スネックは額の汗をぬぐいながら、ボーノに返事を返した。
ラーソンは魔力を開放し、エグゲが発した火柱を消そうとした。しかし、強い魔力を込められて発しているせいか、なかなか火柱は消えることはなかった。
「エグゲの奴、チュエールから去ってかなり魔力を強めたようじゃの……」
「感心しとる場合か! こうなったら私らも本気で魔力解放するしかないよ!」
「そうじゃのー。めんどいけど……やるしかないのう」
ラーソンはそう言った後、一呼吸して魔力を開放した。その瞬間、エグゲが発した火柱の威力が落ちた。
「グッ! それでも俺は負けてない!」
エグゲは魔力をさらに解放し、再び火柱を出そうとしたが、ラーソンの魔力に負け、火柱は出ることはなかった。
「クソッたれが!」
舌打ちと共にエグゲは叫んだが、クリムが発した風の衝撃波でエグゲは吹き飛んだ。
「クソッ!」
「クリムだけじゃないぜ」
後ろにいたシュウが拳銃を構え、飛んで来たエグゲに向けて発砲した。エグゲは飛んで来る弾丸に対し、腕に炎を発して体を回転させ、竜巻を発生させた。その竜巻により、シュウが発した弾丸は地面に叩き落とされた。
「やるようだな……」
「そんなもんでやられる俺じゃないぞ!」
エグゲがそう言った後、何かの気配を感じて体を動かした。その直後、スネックが発した弾丸がエグゲの体をかすめた。
「チッ、勘の良い奴め」
スネックはそう言って銃剣のリロードを行った。エグゲは周りを見て、状況が悪いと判断した。
「ここじゃ戦いにくいな……それに、俺の獲物はクリムただ一人!」
エグゲはそう言うと、魔力を開放して周囲を爆発させた。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
「クッ! こんなことするなんて!」
エグゲの周囲にいたシュウとスネックは爆発の衝撃波で吹き飛んでしまった。
「先輩!」
吹き飛んだシュウを見て、クリムは助けに行こうとした。だが、目の前にエグゲが現れた。
「戦いに集中しろクリム! 貴様は俺が始末する!」
「どけ……どけェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
クリムは叫びながら魔力を開放した。だが、エグゲはクリムの言うことを聞かず、そのまま炎の大剣でクリムに襲い掛かった。
「グッ!」
攻撃を受け止めたクリムは後ろに吹き飛んだ。それに合わせ、エグゲは猛スピードでクリムに接近し、再び炎の大剣を振り下ろした。クリムは風を発して炎の大剣を消し、雷の魔力を右腕に発してエグゲを殴った。
「グホッ!」
「もう一度言います。今すぐどけ」
「断る。貴様を殺す」
「……分かりました。じゃあ……半殺しにされても文句は言わないでくださいね」
と、クリムは怒りの形相でエグゲにこう言った。




