ジャックの災難
ある日、ジャックはミゼリー、ティラと共に詐欺行為を行うと噂されている宗教団体の調査を行っていた。被害者たちがそこの宗教団体を調査してくれと依頼してきたのだ。
「この前のボイスヘブンの騒動もそうだったが、まーだこんなことをするインチキ宗教が存在するのか」
「悪意を持った人間はこの世にたくさんいるわ。私はボイスヘブンのようなことをする奴はまだいると思ってたわ」
「そんなことよりも、敵さんのお出ましだ」
ティラがそう言うと、ジャックは武器を構え、ミゼリーは魔力を開放した。ティラは周囲を見渡すと、一人だけ後ろを向いて逃げようとする人物がいた。
「ジャック。私とミゼリーで雑魚の相手をするから、あんたはあの逃げた奴を追って」
「了解。あとで合流しよう」
ジャックは猛ダッシュで逃げる信者を追いかけた。目の前にジャックを行かせまいと思ったのか、信者が現れたが、ジャックは蹴り飛ばして先へ進んだ。そして、逃げた信者を捕らえるのに成功した。
「さーて、いろいろとお話をしてもらいましょうかねぇ。お前はなんだ? このインチキ宗教のお偉いさんか?」
「無礼者! わしを開放しろ!」
「無礼者? 犯罪者が偉そうな態度とるんじゃねーよ」
ジャックは魔力で縄を作り出し、逃げ出さないように縛った。信者は縛られた状態でも、高圧な態度を止めなかった。
「今すぐこの縄をほどけ!」
「その前に俺の質問に答えろ。テメーはそれしか道が無い」
と、ジャックは武器を突き付けてこう言った。信者は歯を食いしばり、ジャックを睨んでこう言った。
「わしのことが聞きたいなら教えてやる。わしはこの宗教のトップ、ルペース様じゃ」
「ほう。案外口が軽いじゃねーか。それじゃ、あんたを捕まえていろいろと聞きだすか」
「そうはいくか!」
ルペースはそう言うと、魔力を開放した。ジャックは武器を持って対処したが、ルペースはブツブツと何か言い始めた。
「ノロワレーロノロワレーロ、ワーシニヒドイ、コトヲスールヤツーハ、ノロワレテジゴクヲミテキンシャーイ!」
「何言ってんだお前?」
ジャックはルペースの頭を叩いてこう言った。ルペースはこの一撃を喰らい、気を失ったが、その瞬間ジャックは悪寒を覚えた。だが、気にすることなくジャックはミゼリーとティラの元へ戻った。
数日後、ハリアの村のギルド内でジャックの悲鳴が響いた。
「ジャックさん!」
「どうかしたんですか?」
ジャックの近くにいたバカップルが心配して駆け付けた。ジャックの頭にはやかんのフタがあり、周囲は濡れていた。
「悪い、カップ麺作ろうと思って湯を沸かしてたんだけど、足を滑らせてこぼしちまった」
「何もない所で滑るなんて珍しいですね」
と言いながら、シュウは雑巾を持ってきて床を拭いた。ジャックはシュウの手伝いをしようと考えて雑巾を手にし、濡らした床を拭こうとした。だが、そこはかなり熱い熱湯で濡れた個所だった。
「おあつ!」
「大丈夫ですか?」
クリムが水の魔力を出して冷やしてくれたが、上から何か音が聞こえた。
「何だこの音?」
ジャックが上を見ると、上にある電球がぐらついていた。あとで交換しようと思ったその瞬間、電柱はジャックの額に向かって落下してきた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」
電気がついていたためか、落下してきた電球はかなり熱かった。しかも、ジャックはそのまま水たまりができている所へ尻もちをついた。さらに、電球の電気部分が水たまりへ落下し、ジャックを感電させた。
「ビアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ジャックさァァァァァァァァァァァァァん!」
感電するジャックを見て、バカップルは悲鳴を上げた。
畜生、全くついていない。
ジャックはそう思いながら汚れた体を綺麗にするため、風呂に行こうと思った。男湯へ入り、服を脱いで風呂場へ向かった。だが、そこにいたのはミゼリーとストブ、クララ、ヴァーナ、ドゥーレだった。
「キャアアアアアアアアアアアアア! ジャック、何で堂々と女湯に入ってくるのよ!」
「やはりお前にも性欲はあったのか!」
「そういう人とは思っていませんでした! 最低です!」
「何だ、ムラムラしているのか?」
「ここまで堂々と入ってくると、逆に尊敬するよ」
「いや、違う違う! え? ちょっと待って、男湯じゃなかったのか? さっき男湯の看板を確認したんだけど」
その時、掃除のおばちゃんが顔を出してこう言った。
「ごめんねジャックちゃん。男湯と女湯の看板、間違えて設置しちゃった」
「ちょっとォォォォォォォォォ! そういう間違い止めてくれよ、変態だと思われるじゃん!」
ジャックは慌てて服を着て、男湯へ向かった。そして服を脱いで湯船へ入ろうとしたが、足元に石鹸が落ちており、それに気付かなかったジャックは石鹸を踏んでしまい、そのまま滑り出してしまった。
「おわあああああああああああああああああああああああああああああ!」
滑った先には男湯と女湯の境にある壁。ジャックはそれに強く激突してしまった。
「ジャック? ちょっと、何があったの?」
女湯の方から心配したミゼリーの声が聞こえたが、ジャックは目を回して返事をすることはできなかった。




