世界の中央都市
リザードブロスとの戦いから翌日、バカップルは一緒の部屋の一緒のベッドで眠って行った。
「むにゅむにゅ……むふふぅ……せんぱぁい……」
クリムはシュウの腕の中で抱かれながら、微笑みながら寝言を呟いていた。クリムを抱いているシュウも、とっても安らかな寝顔だった。だが、そんなバカップル共の幸せな時間の終わる時が来た。
「朝だぞ起きろォォォォォォォォォォォォォォ‼」
突如、ティラ部屋に入ってきて雄叫びのような声を発したのだ。その声を聞いて驚いたバカップルはぱっと目が覚めたのだ。
「朝からうるさいな……」
「いいから起きろ。起こしに行けって言われたんだよ。ほら、行くぞ」
「ちょっと準備位させてください……」
と、寝癖を付けたクリムがこう言った。その言葉を聞き、ティラはため息を吐いてこう言った。
「5分で身支度しろ。寝癖なんて水を流してぱーってやれば直るんだから」
その後、バカップルは急いで支度を整え、ギルドへ向かった。その途中、シュウのファンの群れが一斉に集まり、シュウを取り囲んだ。
「全く、いつもいつも懲りない人達ですね‼ 先輩と付き合ってるのは私なんですからって何度言わせば分かるんですか!?」
頬を膨らませながら、クリムは女子の群れに入り、シュウを連れ出した。この光景を見たティラは、欠伸をしながら呟いた。
「毎朝こんなことやってんのね」
ファンが散った後、3人はギルドのカウンターへ向かった。
「何で朝一番でカウンターへ向かったんですか?」
「昨日、あの時戦ったリザードブロスの事をある人に伝えたからな」
「ある人って?」
「シェラールのギルド連中」
シェラール。この言葉を聞いてシュウとクリムは驚いた。シェラールはこの世界の中央に維持する大都市である。ハリアの村とは比べ物にならないほど、大きな都市であり、この世界の心臓部ともいわれている。その位でかくて重要な都市なのだ。
「何で師匠みたいな酒飲みがシェラールのギルドの人と関りがあるんですか?」
シュウの質問を聞き、ティラはシュウの頭を叩いてこう答えた。
「一言多い‼ 妹の知り合いにシェラールのギルドで働いてる戦士がいるんだよ。そいつから最近変なモンスターがいるって聞いたから情報を手に入れてくれって頼まれてんだよ」
「では、昨日戦った異常に大きなリザードブロスも……」
「ああ。あれも誰かがやった奴だ。普通、モンスターの中でもまれに変異を起こす奴はいる。ただ、それはあくまで自然のいたずらのようなもんだ。だが、あれほど異様に大きなリザードブロスは自然のいたずらってレベルじゃない。あれは確実に人の手で起こされたもんだ」
「何の為に……」
「そこまでは分からん。誰がやったのかさえ、見当がついてない」
この話を聞き、シュウは察した。ティラはこの事件を解決するためにこのギルドに戻ってきたのだと。そう考えていると、ティラはにやりと微笑みながらシュウを見ていた。
「何ですか?」
「何かお前、私がこの事件を解決したらまた出ていくんじゃないかって思ってただろ?」
「いえ、違います」
「心配すんな! この事件を解決しても私はこのギルドに残るから‼ どこにも行かねーよ‼」
この言葉を聞き、シュウとクリムは残念そうな顔をした。
「おい、何だよその顔? 何で不満そうなんだ?」
「「ベツニソウデモアリマセンヨー」」
文句を言うティラに対し、シュウとクリムは棒読みでこう言った。
数分後、3人はギルドのカウンターに来ていた。ティラの姿を見た受付嬢が、一枚の紙を取り出してティラに渡した。
「ティラさん、シェラールのギルドに所属しているデアと言う方から依頼です」
「そろそろ来ると思ってた」
ティラは依頼表を受け取り、中を見た。だが、見当違いの事が書いてあったのか、渋い顔をした。
「何だよ、マフィアを潰してくれかよ……」
「結構大掛かりな依頼じゃないですか」
シュウはティラが持つ依頼表を見て、こう言った。クリムも横から覗き、ある文章を見てこう言った。
「麻薬の販売をしている可能性が大きいから、潰してくれですか……」
ティラはこの言葉を聞き、真剣な顔になった。
「……久しぶりにドンパチやれるかもな」
「師匠、嬉しそうに言わないでください」
「いいじゃねーか別に。それに、なんか裏もありそうだしな。うし、この依頼は私とシュウ、クリムで受ける。そう連絡してくれ」
「はい」
その後、3人は待ち合わせの時間が来るまで、朝食と装備のチェックを行っていた。そんな中、クリムはシュウと会話をしていた。
「今回の事件、結構大事になりそうですね」
「ああ。師匠のあのセリフじゃあマフィア以外にも、何かが絡んでいるな」
「マフィアは薬を売ることは出来ても、作ることは出来ませんから。誰かが作った薬を売っているという話もありそうですね」
「誰が絡んでいるのか、それさえ分からばいいんだけど」
「ですね」
会話をする中、ティラが部屋に入って来た。
「準備は出来たか?」
「はい」
「銃の手入れもばっちりです」
バカップルの返事を聞き、ティラはよし行こうと言った。数分後、ギルドの外で待つ3人の前に、大きな車がやって来た。
「よー、久しぶりだなデア」
「お久しぶりです、ティラさん。そちらの子供が……今回の依頼の同行者ですか?」
デアと呼ばれた運転席に座る男性は、シュウとクリムを見て不安そうにこう聞いた。それに対し、ティラは笑って答えた。
「大丈夫だって、こう見えて一流の戦士なんだぜ‼ シュウは私が銃の腕をみっちりと教えた弟子、そんでもってクリムは最強の賢者だ‼ 不安要素なんて何一つねーぜ‼」
「そうですか。分かりました。では、今扉を開けますので入ってください」
その後、3人は車に乗り込んだ。
「では、発車します」
デアはそう言って、アクセルペダルを踏み込んだ。




