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会議中での出来事

 シュウたちはアウが作った護衛用の椅子に座り、会議の開始を待っていた。それから数分後、次々と議員が会議室に入って来た。


「うわー、結構有名な人がいるねー」


「ええ。僕の国、ネリオン王国にも各地で活躍する政治家がいます。まぁ、誰もが優秀とは胸を張って言えませんが」


「何か裏であれこれやってるんですね」


 リナサの言葉を聞き、アウは小さく返事をしてこう言った。


「ええ。自ら進んで海外へ行きたいという政治家を調べたら、裏でその地の裏ギルドやその関係と会いに行ったという話を聞きました」


「そういうのって誰が調べるんですか?」


「僕が信頼するスパイさ。政治家専用のね」


 クリムの質問に答えると、シュウは少し戸惑いながらこう言った。


「なぁ、スパイを使ってもいいのか?」


「この国の政治家の一部は裏で犯罪行為をして違法に儲けています。父さんはその裏金を受け取ってその事件をもみ消したりしていましたが、僕はそんなことをしません」


「あんたの親父を反面教師にして育ったんだな」


「まぁそんなところです。僕自身、ワガママな所がありますが……」


 アウはそう言った後、周囲を見回してマイクを手にした。


「ではこれより会議を行います。本日の課題は急な政権交代後の国民の心配を減らす方法について話を行いたいと思う」


 アウがそう言った直後、一人の議員が手を上げた。それを見たアウはその議員を睨みながら名を呼んだ。


「何か話でも、スベル議員」


「失礼だとは思いますが、国民の心配、不安を消すよりも今後の税金対策を練った方がいいと思います」


「それについては簡単だ。君たち議員の給料を下げる」


 その言葉を聞き、議員たちはどよめいたが、アウはため息を吐いてこう言った。


「僕たちはこの国の為に苦汁を飲まなければならない。君たちは国の為に覚悟を持って選挙を行い、この場にいるはずだ。まさか、金の為にここにいるとは考えていないだろうな?」


 その言葉を聞き、一部の議員は口を閉じた。だが、スベルは咳ばらいをして反論した。


「私たちはこの国の為に毎日働いています。なので、国民よりも給料が上でなければ……」


「スベル議員。君は金と国民、どっちが大事だ?」


「グッ……」


 スベルはアウの質問に対し、すぐに答えることはできなかった。そのことを察したアウはため息を吐いてスベルにこう言った。


「国民は僕たちより少ない給料で生活しているんだ。君たちみたいに無駄に豪華なマンションや家を建てて豪勢に暮らしてはいない。一部芸能人やスポーツ選手なんかは違うけど、君たちは政治家だ。国のため、その身を捧げて働くべきではないのか?」


「ウッ……し……失礼しました……」


 言葉を失ったスベルは、そのまま黙って席に座った。それから国民の不安をどう対処するか話し合いが始まった。アウは提案として、メディアなどを利用して国民へメッセージを送り続けることを提案した。だが、それに対して異議を唱える議員が現れた。


「すみませんが私は反対ですねぇ」


「どういった理由で、ザガエ議員?」


 ザガエは自慢げに立ち上がり、アウにこう言った。


「先代国王はメディアに出演したり、メッセージを出したりすることは一切しませんでしたよ。そんなことをしなくても、国民は不安にならないと知ってるからでしょうねぇ」


「先代国王のことは子である僕が一番知っている。あの人は怠け者だ。国民に対してメッセージなどを出すことを面倒だからという理由でやっていなかった」


「ほう。では、あなたはやると? メディアに出るというのは外に出る機会が多い。ということは、命を狙われる可能性があるということですぞ? そんなことを知らないとは全く無知な王様ですねぇ」


「無知なのは君だ。よく会議中に居眠りをする君が偉そうに言える立場ではない。それに、今はギルドの戦士たちがいる。今後いなくなったとしても、僕の城には優秀な兵士がいる。移動用には対策を練った車を使う」


 ザガエはこの言葉を聞き、戸惑いを見せた。だが、次に大声でこう言った。


「しかし! 私はあなたの身を案じてこう言ったのですよ! 国民のことなんかよりも政治家として税金を上げて私たちの給料を……」


「怒りと焦りのせいで本音を出したな」


 アウはそう言うと、ザガエの方を見て扉の方に指を指した。


「君はこの会議に出る資格は無い。会議前日に歓楽街で飲み歩き、税金を上げて自身の給料を上げることしか考えない奴だと僕は知っていた。いずれ、君は処分するつもりだった」


 その直後、会議室の扉が開き、兵士たちが入って来た。そして、ザガエを抱えて会議室から去って行った。その様子を見た議員は冷や汗をかいていたが、アウはその議員たちに対してこう言った。


「君たちもやましいことをしないように。父さんの時代にやっていたとしたらそれはもう過去のものとして問題にしないが、今やっていたら即刻議員の資格を取り消す。自分の私腹を満たすような奴に議員の資格は無い」


 アウの言葉を聞いた議員は、返事をしてアウの方を見た。




 それから会議は順調に進んでいった。そんな中、リナサは少し震えながらシュウにこう言った。


「ごめん、トイレに行ってくる」


「ああ分かった。俺とクリムと父さんが護衛するから」


「気を付けてね、リナサちゃん」


「うん」


 バカップルの言葉の後、リナサは急いでトイレへ向かった。用事を済ませて戻る中、リナサは先ほど連れていかれたザガエを見た。ザガエはリナサに気付いていない様子で、何度も壁を殴ってこう言って行った。


「あのクソ野郎……前の国王だったら許してくれたのに……チクショウ、俺も他の奴らみたいにあいつの命を狙う裏ギルドを雇えばよかった」


 その言葉をこっそり聞いたリナサは、すぐにバカップルとタルトの元へ戻って行った。


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