無茶したレースンの運命
一人でブラッドシャドウのアジトへ向かった。それらしい場所の入口には見張りらしき人物が二人立っていた。二人の服は黒いスーツで、ホームレスなどがいる町外れにしては異様な姿だった。あれがアジトだと察したレースンは、物陰に隠れてアジト周辺を望遠鏡で見渡した。入口の他にも見張りはおり、その数は約六人である。入口の見張りと合わせると八人の見張りがいることになるのだが、まだレースンのことを察していないようだった。
今ならいけると思ったレースンは、サイレンサー付きのスナイパーライフルを取り出し、見張りに向けて銃を向けた。スコープで標準を合わせ、見張りの胴体部分に向けて銃を放った。放った弾丸は見事見張りに命中した。だが、レースンは続けて近くにいる別の見張りに標準を合わせ、引き金を引いた。その後、すぐに別の見張りがいる場所にスコープを向け、騒ぎにならないために連続で見張りを撃ち抜いた。八人の見張りを倒した後、レースンは身を隠しながら移動し、ブラッドシャドウのアジトへ向かった。
「ぐ……誰だ……俺たちを撃ったのは?」
「分からない……連絡を……」
「ダメだ……腕を伸ばすだけで痛みが走る……」
見張りは全身に走る痛みに耐えきれず、体を動かすことはできなかった。そんな中でレースンが近付き、見張りの近くに落ちていた通信機具を破壊した。
「悪いな、お前らは俺が倒すぜ」
「お前か……」
「やられ役はオネンネしてな」
レースンはそう言うと、二人の見張りを殴り、気を失わせた。
バカップルは町外れに移動し、レースンの後を追っていた。
「レースンさんはどこへ行ったのでしょうか?」
クリムはそう言いながら周囲を見ていると、少しだけ魔力を感じた。すぐに隣にいるシュウの方を向き、シュウにこう言った。
「魔力を感じます。恐らく、ブラッドシャドウのメンバーです」
「ああ。俺も察した。あと、風に乗ってか硝煙の臭いがした。銃を撃ったなあいつ」
「戦いが始まってるかもしれません。早く行きましょう」
会話後、バカップルは急いでレースンの後を追って走って行った。
ブラッドシャドウのアジトでは、うっすらと聞こえた見張りの悲鳴を聞き、団員たちは動揺していた。だが、ボスのスボダヨが机をたたき、団員の動揺をかき消した。
「どこのどいつが俺たちのアジトに攻め込んで来たのか知らねーが、返り討ちにしてやれ」
「分かりました、スボダヨさん」
団員たちは一礼した後、銃を持って去って行った。スボダヨはソファに座りなおし、考え事を始めた。
(うーむ、ナイシが俺たちのことをギルドに話したのか? マッツクからの依頼だとばれたら、俺たちに金は入らない……そもそも、ギルドと戦いになると騒ぎが大きくなる。あちらさんは騒ぎが大きくなるのを嫌がってるからな……)
スボダヨは考え事を一度止め、頭をスッキリさせるために水を飲んだ。
レースンは拳銃を使いながら迫ってくる団員たちを撃ち抜いていた。
「クソッ、やられた!」
「あの小僧、かなりやるじゃねーか!」
「だが所詮は一人だ! 小僧一匹ぶっ殺してしまえ!」
団員は返り討ちでレースンに向かって剣や槍などの武器を振り回していたが、レースンは団員の持ち手に向かって発砲し、次々と武器を落としていた。
「ぐ……クソッたれ……」
「援軍をよこせ!」
「ダメだ、もう奴はいない!」
団員たちがあれこれ話していると、すでにレースンの姿はいなかった。レースンは襲い掛かってくる団員を倒しつつ、ボスのスボダヨがいる部屋に向かって移動していた。だが、レースンが予想していた以上に団員の数が多く、予備の弾丸は減って行った。
「あと六発か……」
レースンは残りの六発の弾丸をリロードし、周囲を見回した。周りに倒れている団員は剣や槍などの装備で、銃を持っていない。倒した団員から弾丸を奪おうとしたのだが、その予想は裏切られた。
「仕方ない、隠れて移動しよう」
隠密行動で移動すると考えたレースンだったが、直後発砲音が聞こえ、それと同時に飛んできた弾丸がレースンの右足を撃ち抜いた。
「な……ぐあああああああああああああああああああああああああああ!」
レースンは右足を抱えながら甲高い悲鳴を上げた。それから次々と遠くから放たれる弾丸がレースンを襲い、手足を撃ち抜いて行った。
「ぐ……うう……」
「無様なもんだな」
遠くから足音と共に男の声が聞こえた、近付いてくる足音の主はスボダヨとその部下だった。部下の手には銃が握られていて、自分を撃ち抜いたのは部下だとレースンは察した。
「見つけたぞ……クソ野郎……」
「フン。その傷を負ってまだ強がるつもりか。バカな小僧だ」
スボダヨは部下に銃をしまえと合図をした後、倒れているレースンに近付き、力強くレースンの腹を踏みつけた。
「グガッ!」
「どうだ? このまま殺すのはもったいないからじわりじわりと痛めつけた後で殺してやろう。そうだ、それだけじゃ面白くないから貴様の体をバラバラにしてギルドに送りつけてやろう。ギルドがどんな反応するか楽しみだな」
手足をやられ、もう後がないとレースンは察した。この状況をどうやって打破するか考えたが、答えは出なかった。そんな中、突如スボダヨの部下の悲鳴が聞こえた。それと同時に、とんでもなく強い魔力が周囲を包んだ。
「何だこの魔力は!」
「ボス、大変です! あの有名な最強バカップルが来ましたギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
報告してきた団員が爆風と共に吹き飛んだ。その後ろには魔力を開放したクリムと、銃を構えたシュウが立っていた。




