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別ギルドの応援要請

 ハリアの村から車で片道二時間ほどかかる町、スエラン。ハリアの村より広く、それなりに有名な町である。だが今、スエランではある事件が多発していた。


 ある朝、スエランのギルドは緊急連絡を受けてスエランの駅の方へ向かっていた。ギルドの戦士は通報者の話を聞き、周囲を見回した。駅のホーム近くには青いシートで覆われた物があり、それが通報の原因だと察した。


「中を見せてくれ」


「ああ……悲惨なもんだぜ」


 青いシートの近くにいた警官はギルドの戦士に場所を譲り、手で口を抑えながらその場から離れた。ブルーシートに覆われていたのは、無残に殺された男性の死体だった。


「うわっ……こりゃ酷い」


「何の恨みがあってこんなことをしたのか……」


「三人目か。これで本格的な連続殺人事件になっちまったな」


 戦士の一人が青いシートを元の位置に戻し、ため息を吐いた。今、スエランでは連続して殺人事件が発生している。ギルドの戦士は現場から離れ、話し合いを始めた。


「どうする? これで三件目だ」


「俺たちだけじゃ対処できないかもしれんぞ」


「だな。うーむ……賢者様に任せるか?」


 この言葉を聞き、別の戦士はそれがいいと言ったが、もう一人は首を振ってこう言った。


「俺もそうしたいが、俺たちのギルドには奴がいるだろ」


「そうだけど、奴じゃ頼りないからな」


「奴に任せるよりも、凄腕を雇って協力してもらおう」


「だな。それがいい」


 話を終えた後、戦士たちはギルドへ戻って行った。




 バカップルはキッチンで食事をしながらニュースを見ていた。ニュースの速報で、スエランの事件のことが流れていた。


「またスエランで殺人事件ですか」


「これで三件目。一体向こうで何があるんだか」


「被害者の身元が分かれば、どんな人物が狙われるか、どんな目的かはっきりするんですけどねぇ」


 そんな話をしていると、ギルドの役員がバカップルの元へ走ってやって来た。


「シュウさん、クリムさん。スエランのギルドから応援要請が来ています」


「話がくれば何とやら。きっとあの事件のことですよ」


「俺たちが推理するのかな?」


「事件が解決するまで、町を守ってほしいとのことです。詳しいことはスエランのギルドマスターから聞いてください」


 役員から話を聞き、バカップルは慌てて役員室へ向かった。役員室に到着したバカップルは、電話の方へ近づいた。


「私が対応します」


「頼むクリム」


 クリムは受話器を取り、話を始めた。


「お待たせしました。私がハリアの村所属のクリム・カスタードです」


『おお賢者クリム。忙しい中本当に申し訳ない。私はスエランのギルドマスター、ナホックだ』


 ナホックはそう言った後、咳ばらいをして話を続けた。


『大体の話は役員に話した。今、スエランの町は連続殺人事件のせいでパニックだ。早く解決したいのだが、事件のことは警察に任せる。私はこの事件の模倣犯やパニックに便乗して騒ぎを起こそうとする裏ギルドが出てくると思う』


「確かにそうですね。悪い奴らは何か大きな騒ぎがあると、それに合わせるかのように動きます」


『そうです。私たちの要望としては、事件が収まるまでスエランを守ってほしいのです。私たちのギルドの戦士も優秀ですが、あなたとガンナー、シュウほど強くはないので……』


「分かりました。準備が終わり次第そちらへ向かいます」


 クリムの言葉を聞き、ナホックは声を上げて喜んだ。


『お返事ありがとうございます。あなたたちが来てくれるだけでも心強い』


「私と先輩が来るまで、少し待っていてください」


『はい。お待ちしています』


 クリムは電話を終え、シュウの方を見た。シュウはすでにやる気満々の用だった。


「よしクリム、飯を食べ終えてすぐに準備だ」


「はい先輩!」


 バカップルは会話をすると、急いで戻って行った。




 スエランのギルドでは、ナホックは安堵の息を吐いていた。


「よかった……賢者クリムとその彼氏、シュウが応援で来ます」


 その話を聞いたギルドの女性陣は、黄色い歓声を上げた。彼女らはイケメンで人気のあるシュウが来るということを知り、喜んでいるのだ。


「シュウ君が来るって。いやー、いい服買っておいてよかったー」


「あーん、こんなことになるんだったらちゃんとお化粧すればよかった」


「ハリアの村からここまでは時間がかかるわ。まだ準備する時間はある」


「ちょっと支度してきます」


 そう言って女性陣たちは一斉に部屋から出て行った。ナホックは女性陣を止めようとしたのだが、できなかった。


「やれやれ……イケメンが来るから張り切ってるなぁ」


「そんな奴らが来なくても、俺一人で何とかできますよ」


 と、ナホックにこう語る少年が現れた。ナホックは少年の方を見て、ため息を吐いてこう言った。


「レースンか。お前一人ではこの事件を解決できない」


「決めつけないでくださいよ。俺だって立派なガンナーだ。誰よりも強い自信がある」


 レースンはそう言って片手にハンドガンを装備し、窓に向けて発砲した。窓は弾一つ分通るくらいの隙間があり、その先には木が立っていた。レースンが放った弾丸は窓の隙間をすり抜け、木に命中した。


「これで分かっただろ。この町を守るのにバカップルは必要ない。俺一人で十分です」


 と言って、レースンは去って行った。


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