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討伐が終わった後は

「ふぃー、大分片付けたね」


 と、ティラは額に流れる汗をぬぐいながらこう言った。クララは周りを見て、ズノーベアーが去って行ったことを確認した。


「生き残ったのは私たちの力を恐れて逃げたみたいです」


「逃げた奴がいるってのか。厄介だね」


 ティラは息を吐いてこう言った。その時、別の方で戦いを終わらせたバカップルとカーボンがやって来た。


「師匠、無事でよかったです」


「そっちも片が付いたみたいですね」


「何事もなくてよかった」


 シュウたちが合流した後、上からタルトとスネックが現れた。


「父さん、スネックさん。服や装備は取り戻したんだね」


「何とかな」


「久しぶりに魔力を使って戦ったぜ。そっちも終わったみたいだな」


 スネックは周囲を見回してこう言った。だが、ティラは首を振って答えた。


「今はね。けど、奴らのことだから私たちが去った後でまた悪さに来るよ」


「そこだよな……」


 タルトもティラと同じことを考えていた。ズノーベアーはシュウたちには敵わないと察し、温泉街に滞在する間は襲ってこない。シュウたちが去った後で再び温泉街に襲いに来る。今倒してもまた来るのであれば結局無駄になってしまうのだ。どうしようと思った時、ティラの腹の音が鳴り響いた。


「とりあえず宿に戻って休もう」


「そうですね」


 というわけで、一度宿に戻って休むことにした。




 タルトとスネック、カーボンはシュウたちと別の宿をとっているため、一度別れることになった。女湯ではクララが温泉に入って疲れを癒していた。


「はぁ……極楽極楽……仕事で温泉に入れるなんて思ってもいなかった」


「ま、たまにはこういうのも必要だね」


 と、ティラが桶を持ってクララの隣に座った。クララは桶の中を覗くと、そこには酒の瓶が入っていた。


「ここへ来てもお酒飲むんですか?」


「いいじゃねーか。いい温泉と美味い酒。とてもいい組み合わせだろ」


「お酒の味は分かりません」


「大人になれば理解できる」


 と言って、ティラは酒の瓶を取って一口飲み、おっさんのような声を出した。一日ティラと行動し、改めてティラの銃の腕がどれだけ高いかをクララは理解した。だが、酒癖が悪いので、それが無ければ立派な戦士だろうなと思っていた。そんな中、クララはあることに気付いた。


「あれ? クリムとシュウさんは?」


「個室の温泉にいるよ。ここ、混浴が無いからさ」


「全く、あの二人は……」


 クララはバカップルが一線を越えないことを祈りつつ、呆れてため息を吐いていた。


 その頃、バカップルは個室の温泉でイチャイチャしていた。


「ふぅ、いい湯ですね」


「ああ。今日の疲れがぶっ飛ぶよ」


 シュウはクリムにこう言うと、山の方を見つめた。今日倒したズノーベアーはほんの一部。まだ山の方にはたくさんのズノーベアーが生息しているのだ。


「まだあの熊はいるんだよな」


「はい。私たちが去った後でまたここを襲いに来るでしょう。でも大丈夫です。手は考えてあります」


 クリムの言葉を聞き、シュウはクリムを抱きしめた。


「流石クリム。もう対策は練ってあるんだな」


「えへへ~、こうなることを予想してたんです。明日、ちょっと行きたい場所があるので一緒に付いて行ってもらってもいいでしょうか?」


「クリムと一緒ならどこへでも」


「はい。お願いします、先輩」


 そう言った後、バカップルは湯船の中でイチャイチャし始めた。




 翌日、タルトたちと合流したクララとティラは、武器を持って周りを見ていた。


「今日はいないようだね」


「私たちがいることを察して来ないんだ」


「で、俺たちが去った後でまた襲いに来る」


「何と悪知恵の働く熊なのだ……」


 カーボンはこう言うと、回りを見てバカップルがいないことに気付いた。


「あれ? シュウと賢者は?」


「今朝、用があると言ってどこかへ行きました」


「この町にそれなりに有名な発明家がいるらしい。そこの家に行ったって」


「発明家?」


 タルトがこう言ったその時、バカップルが現れた。


「おおシュウ。クリムちゃん。発明家の家に行ってたみたいだな」


「はい。この町にそれなりに有名な発明家がいるってことを思い出し、その人に協力してあるドローンを作っていました」


「ドローン? あ、もしかして」


 タルトは全てを察し、理解したような表情をした。クリムはその表情を見てにやりと笑った。その時、山の方でズノーベアーの悲鳴が聞こえた。それと同時に、サイレンのような音も響いた。


「ズノーベアー駆除用ドローン、ベアーキラーが活躍してるみたいですね」


「変なのを考えたわね。サイレンを鳴らして追い払うってこと?」


「はい。もし、奴らが温泉街に来ようとしたらビームが飛んで来ます」


「ビーム……山火事にならないか?」


 恐る恐るカーボンが聞くと、クリムは問題ないと言った。


「大丈夫です。火事の原因になるような火属性や雷属性の魔力は使っていません」


「クリムは水属性の魔力を使ったんだ。水のビームなら山火事になる心配はないって」


「水か……ま、問題が解決すれば手段は問わないか」


「カーボンさんの言うとおりです。さ、帰るまで時間がありますので、少し寄り道しませんか?」


 クリムの言葉を聞き、誰もが賛成した。それからシュウたちはしばらく温泉街を散策した。


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