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師匠が戻って来た

 ティラはバスジャック犯の事なんか構わず、酒を飲み続けていた。その行動を見たバスジャック犯の1人が、ティラに近付いた。


「お前、何をしている?」


「見て分かんねーの? 酒を飲んでんだよ」


「お前……正気か?」


「バスジャック犯に正気かとか聞かれたくないね」


 ティラはこう言って、酒を飲み続けた。その態度に腹が立ったバスジャック犯は、ティラが持つ酒瓶を打ち抜いた。


「死にたくなければ、大人しくしているんだな」


 そう言って、バスジャック犯は前に向かった。ティラは撃たれて半分に粉々になった酒瓶を見て、茫然としていた。そんなティラの事を知らず、バスジャック犯は外を見回していた。


「チッ、ギルドの連中が来やがった」


「メディアの奴らもいるぜ、盛り上げるために一発撃つか?」


「無駄撃ちは止めろ。ただでさえ銃弾が少ないのに」


 そんな会話をしていると、目の前からゆらりゆらりと体を揺らしながら、半分になった酒瓶を持ったティラが近付いてきた。


「貴様、さっきの酒飲みのおばさん」


「お? ば? さ? んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!?」


 おばさんと言う単語を聞き、ティラは目の前のバスジャック犯に酒瓶を叩きつけた。


「ぐへぇ……」


 酒瓶を叩きつけられたバスジャック犯は、情けない声を出し、その場に倒れた。強く叩かれたせいか、瓶の破片が頭に少し刺さっていた。


「何だこいつ!? この状況が分かっているのか!?」


「ただの酒好きのおばさんじゃないのか!?」


「おばさんと言った、あいつらにも言われたことなかったのに‼」


 ティラは叫びながら、倒したバスジャック犯の銃を奪い、目の前のバスジャック犯に向けて銃を放った。


「おわあああああああああああああ!?」


「ちっ、避けやがったか」


 腰を抜かしたバスジャック犯に対し、ティラは舌打ちをしてこう言った。


「何だよこのおばさん、頭のねじがぶっ飛んでるんじゃねーのか?」


「おばさん言うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ‼ こう見えても三十路超えて二年経ってんだよ‼」


 またもおばさん呼ばわりしたバスジャック犯に対し、ティラは何度も足で踏みつけた。そんな中、運転手を人質に取っているバスジャック犯がティラに向かって叫んだ。


「そこの美人さん‼ こいつが見えないか? 美人さんが変なことをすれば、すぐにこいつの頭を吹き飛ばすぜ」


 この言葉を聞き、ティラは運転手の頭に魔力の塊が近いという事を察した。だが、それがどうしたと言いそうな表情で、ティラは物凄い速さで銃を構え、そのバスジャック犯の腕を打ち抜いた。


「おぎゃああああああああああああああああああ!?」


 腕を撃たれたせいで、魔力の塊は上に向かって吹き飛んだ。その音で運転手と乗客は悲鳴を上げながら、頭を抱えた。その一方、腕を撃たれたバスジャック犯は、悲鳴を上げながら撃たれた腕を抑えていた。そんな彼に、ティラは悪魔のような微笑みで近付いた。


「さーて、こんなに暴れてみんなに迷惑かけた分……お仕置きしないとねぇ~」


「暴れたのはあなただけのような気が……」


「うっさい‼」


 ティラは文句を言ったバスジャック犯に対し、足で顔面を踏みつけた。




 スコープで様子を見ているシュウは、冷や汗をかきながらクリムとジャックにこう言った。


「まずい……師匠が暴れ始めた」


「おいおいおいおい、死傷者が出るぞ」


「早く止めないと」


 その後、シュウ達は急いでバスに向かった。シュウがバスに近付いた瞬間、バスジャック犯の1人が窓から放り出された。ジャックはボロボロになったバスジャック犯に近付き、棒で突きながらこう聞いた。


「おーい、生きてるかー?」


「ギルドの人ですか!? お願いですから我々を捕まえてください‼ 安全な牢屋の中へぶち込んで下さぁぁぁぁぁぁぁぁい‼」


 と、泣きながらジャックに抱き着いてきた。ジャックはため息を吐きながら、シュウとクリムにこう言った。


「俺はこいつを安全な所まで連れていく。後は任せた」


「分かりました……はぁ……」


「まだ暴れてるようですね……ティラさん」


「クリム、何かあったらすぐに師匠を止めてくれ。どんな方法でも構わないから」


「誰が誰を止めるって~?」


 シュウ達の会話を聞いていたティラが、窓から現れた。


「やっほー、スコープで覗いてたのバレバレだよー」


「師匠、バスの中で暴れるのは止めてください……うぇっ‼酒臭い‼」


「バスの中で一杯やってたー」


「バスの中で飲酒は禁止されてますよ」


 ジャックは呆れてこう言ったが、ティラは彼の尻を思いっきり強く叩いた。


「あだああああああああああ‼」


「細かいこと気にすんなよ。そうだ、中にまだ2人いるから、さっさと捕まえてこい」


「あんたがやれよ……」


「なんか言った?」


 ティラはジャックに銃口を向け、こう聞いた。命の危機を察したジャックは急いでバスの中へ入って行った。


「さて、後の事はジャックに任せて、と……」


 ティラはクリムに近付き、持ち上げた。


「ちょっと、ティラさん」


「大きくなったなクリム。身長どころか、おっぱいもでかくなりやがって。シュウの手ででかくされたのか?」


「そんな事言わないでください‼ せっかくの再開なのに‼」


「あははははは。わりーわりー」


 ティラは笑いながら、クリムを下ろした。その後、3人のバスジャック犯は捕らえられ、シュウ達はティラと共にハリアの村のギルドへ向かった。

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