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反撃を仕掛ける前に

 シェラールのギルドが襲撃されて翌日が経過した。ローラの手助けによって倒したウルトやボイスヘブンの信者たちはギルドの牢屋へ入れられた。シュウたちは戦いの疲れを癒すため、ギルドの寝室で休んでいた。


「ふぃー、久しぶりに魔力を使うと疲れるねぇ」


 そう言いながらローラは煎餅をバリバリと音を立てながら食べていた。クリムは呆れた目でローラを見ながらこう言った。


「おばあちゃん。一体いつまで私と先輩の部屋にいるんですか?」


「別にいいじゃないか。イチャイチャしたいなら私のことを気にせずすればいいじゃないか」


「できませんよ」


 シュウがこう言った直後、廊下から女性たちの悲鳴が聞こえた。シュウは呆れた目で外を見ると、そこにはナンパをするラーソンの姿があった。


「ねぇねぇお姉ちゃん。僕と一緒にドライブ行かない? おーい! そこの別嬪さん! 僕とお茶飲みに行こうよー!」


「全く。あのドスケベもっこり野郎が」


 ローラは雷でハンマーのような物を作り出し、廊下へ出て行った。それからしばらくしてラーソンの悲鳴と雷鳴の音が轟いた。




 数分後、シュウたちはエイトガーディアンの会議室に来ていた。


「さて、これからボイスヘブンに攻め込む計画を立てようと思う」


 と、ボーノが最初に声を出した。ボーノは咳ばらいをして周りを見渡すと、フィアットが手を上げていた。


「何か手はあるのか?」


「このままこっちの戦力フルで攻め込めばいいじゃん! シュウ君たちもいるんだし、何ならチュエールの賢者のおっちゃんおばちゃんがいるから大丈夫じゃん!」


「大丈夫じゃねーよ。タルトさんとスネックがまだ行方不明。ハヤテはまだ入院中。俺たちも昨日の戦いの疲れで満足に戦えねーんだぞ。そんな状態で攻め込んだらやられるだろうが」


 フィアットに期待した俺がバカだった。ボーノはそう思いながらため息を吐いた。そんな中、会議を見ていたラーソンがこう言った。


「そうじゃ。行方不明のお二人さんを見つけてやるぞ」


 ラーソンの言葉を聞き、この場にいた全員の目が点となった。


「そんなこと、本当にできるのか?」


「ま、老いぼれに任せておき」


 と言って、ラーソンは出て行ってしまった。ラーソンの後姿を見て、ローラはやれやれと呟いてこう言った。


「私も行ってくるよ。あのじーさんのことだし、行方不明の連中を見つけたらきっと町の中でナンパする」


「ちょっと、おじいちゃんおばあちゃん!」


 クリムは出て行く祖父母を見て、困り始めた。唸り声を上げながら答えを探り、しばらくしてその答えを皆に告げた。


「すみません。席を外します。あの二人を追いかけます」


「俺も席を外します。どうなるか気になります」


「分かった。もし、タルトさんとスネックが見つかったら連絡してくれ」


 ボーノの言葉を聞き、バカップルは会議室から去って行った。




 ドーデカイビル跡地。まだビルの残骸が跡地に残っていた。警察やギルド関係者が瓦礫撤去をして行方不明者を探しているが、まだ見つかっていない。そんな状況の中、ラーソンとローラが現れた。現場の見張りが突如現れた二人を見て、声をかけた。


「あの、お二人はなんですか?」


「チュエールの大賢者じゃよ。苦戦してるから助けに来た」


 ラーソンがこう言って、跡地に入って行った。ローラはすみませんと一言告げて頭を下げ、ラーソンの後について行った。それからしばらくしてバカップルがやって来た。


「あ、クリムさんシュウさん。先ほどチュエールの大賢者と申す人が無理矢理跡地へ……」


「大丈夫です。私の祖父母なので」


「えええええええええ!」


 クリムの説明を聞き、見張りは目を丸くしてラーソンとローラの方を見た。周りがざわめく中、ラーソンは跡地を見て、ふむと一言呟いてあごをかき始めた。


「思ったより瓦礫が多いが……ま、これくらいなら楽に飛ばせるな」


 そう言って魔力を開放し、瓦礫全体に風の魔法を発した。ラーソンの風によって瓦礫は空高く浮き上がった。


「おお!」


「これが賢者の魔法か」


「あれだけ苦労した瓦礫が簡単に上がるなんて……」


 現場の作業員はラーソンの風を見て、驚いたり感激の声を上げていた。ラーソンは作業員の方を向いて、呆れてこう言った。


「感激する暇があったら行方不明者を探してくれ。わしはこの瓦礫木端微塵にするから」


 そう言うと、風の刃を発して空に浮かした瓦礫を細かく斬り始めた。作業員はラーソンに言われた通り、瓦礫の下にいた人たちの救助を始めた。シュウは急いで跡地に入り、タルトとスネックを探した。


「父さーん! スネックさーん! いたら返事してくれー!」


 シュウは声を出しながら周囲を探し回った。すると、うっすらとシュウの名を呼ぶ声が聞こえた。


「父さん?」


 声を耳にした瞬間、シュウは急いでその方へ向かった。そして、クリムと協力しながらラーソンが浮かし切れなかった瓦礫をどかし、中を調べた。


「父さん、父さん! いたら返事してくれ!」


「シュウ……いるのか……」


「へへ……来ると……信じてたぜ……」


 再び声が聞こえた。今度ははっきりと聞こえた。この声を聞き、シュウはこの瓦礫の中にタルトとスネックがいることを確信した。


「先輩、少し離れてください」


 クリムは魔力を開放し、風を発して瓦礫を浮き上げた。その中には、傷だらけで少しほおがこけているタルトとスネックがいた。


「父さん……スネックさん……」


「すまないな……心配かけて……」


「無事じゃないが……死んじゃいないぜ」


 二人の声を聞き、安心したタルトはその場で泣き崩れた。


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