ギルドとボイスヘブンの激突
シェラールのギルドのベランダにいるシュウは、小さく深呼吸しながら気分を沈めていた。タルトが行方不明の中、ボイスヘブンの挑発のような宣言を聞き、怒りが爆発しそうになったからだ。シュウ自身は感情に任せての行動は危険だと理解しており、このままの状態だとダメだと察し、席を外したのだ。
「ふぅ……」
「先輩」
「お兄ちゃん」
入口の方からクリムとリナサの声が聞こえた。シュウは二人の方を振り返ると、悪いと一言告げた。
「ごめんな、奴らの言葉を聞いてたら腹が立って」
「誰だってそうです。私もあいつらの言葉を聞いてムカついています」
「私も。キャニーも奴らのことを自分以上のバカって言ってた」
「キャニーにそう言わせるとはなぁ……」
シュウは少し笑いながらこう言った。クリムはシュウの笑みを見て、少し気が落ち着いたのだと思った。クリムとリナサはシュウの横に立ち、話を続けた。
「先輩、一度落ち着いたらタルトさんを探しに行きますか?」
「ああ。その為に、手っ取り早くあいつらを倒さないと」
シュウの言葉を聞き、クリムはいつものシュウに戻ったと思いながらいつもの調子で話を続けようとした。その時だった。
「二人とも伏せろ!」
シュウが突如叫んだ。二人は言う通りにその場にしゃがんだ後、後ろの壁に着弾する音が聞こえた。
「敵ですか」
「クリム、分厚いバリアを頼む」
「はい」
「私も協力するよ」
クリムとリナサが分厚い強力なバリアを張った後、シュウは立ち上がって周囲を見回した。ギルドから少し離れた小さなビルに、人影が見えた。
「奴か」
反撃したいと思ったシュウだったが、道具は中の部屋に置いてある。反撃は出来ないと思った時、敵も攻撃が通用しないことと居場所がばれたことを察したのか、ビルの中へ逃げて行った。
「ボイスヘブンの奴ですかね」
「恐らくな。奴ら、もう動き出したのか」
「直接ギルドに来るなんて思わなかった」
リナサがこう言った直後、突如サイレン音が鳴り始めた。
『緊急、緊急! 怪しげな武装集団がこちらへ向かって来ます。中にいる戦士たちは防衛をお願いします!』
アナウンスが聞こえた後、シュウたちは戦いの準備を始めた。
会議をしていたジャックたちは各々の武器を持って外に出ていた。
「直接攻めに来るとは大胆な奴らだな」
ジャックは斧を構えてこう言うと、横にいたボーノはナイフを回しながら返事をした。
「天からの声だかが俺らを倒せって言ったんじゃねーの?」
「哀れな人たちですね。見えない物を信じるだなんて」
クララがこう言うと、キャニーがため息を吐いてこう言った。
「洗脳されてるか、ただ純粋に信じてるだけか」
「操られてるんだったら、私の薬で何とかするよ~」
と、シュガーが紫色の煙を放出する怪しげな液体が入った瓶を手にしてこう言った。それを見たクララとキャニーは嫌そうな顔をしてこう思った。あれを飲まされるであろう信者が可哀そうだと。そんなことを思っていると、信者の一部がバイクに乗って突進してきた。
「来たか!」
ジャックは斧を振りかぶり、突っ込んでくるバイク集団に攻撃を行った。ボーノはナイフに電撃を溜め、それを放出して攻撃を始めた。二人の攻撃でバイク集団の一部は倒れたが、攻撃を避けた一部がギルドに向かって突っ込んでいった。
「このままギルドを壊す!」
「天の意志だ。悪く思うなよ!」
まずいと思ったジャックとボーノは追いかけようとしたのだが、前から別のバイク集団や武器を持った信者たちが襲い掛かってきた。
「クソッ、後ろに任すか」
「それしかねーな」
二人がこう言った直後、後ろのバイク集団の悲鳴が聞こえた。
「すみません、遅れました」
「俺たちも参加します!」
ギルドの入口にはバカップルとリナサが立っていた。三人を見て、フィアットは大声でこう言った。
「全くもー、遅いんだよー!」
「悪い。支度に時間がかかったんだ」
シュウはそう言うと、アサルトライフルを構えて攻めてくるバイク集団に向かって発砲した。シュウの攻撃により、バイク集団はあっという間に壊滅状態に陥った。
「つ……強い」
「アサルトライフルだけで俺たちを倒すとは……」
「腕のいいスナイパーか……厄介な」
散って行ったバイク集団は、左手でアサルトライフルを構えるシュウを見て恐れをなしていた。そんな中、シュウはクリムの方を見てこう言った。
「あのスナイパーがいる。リナサ、皆の援護をしてくれ。クリムは俺に付いて来てくれ」
「分かりました」
「お兄ちゃん、無茶しないでね」
「ああ」
バカップルは急いでギルド内へ戻り、リナサはジャックたちの方へ向かって行った。
ギルドから遠くのビルにいるウルトは少し焦っていた。シュウがあの距離の射撃を察するとは予想していなかったからだ。
「こりゃー久々に強敵と戦えますなぁ」
焦りの中で、ウルトは強敵と戦える興奮を覚えていた。移動中、ウルトはライフルのマガジンに弾を込め、射撃が狙える場所を探した。
「ここがいい」
ウルトは窓を開き、ギルド全体がスコープで覗けるように銃を設置し、シュウを探した。
「さぁ、次の狙いはお前だ。確実に始末してやるぜ……」
ウルトはこう呟いた後、舌を出して口の周りを舐めた。




