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ラーソンの言葉

 強盗系裏ギルドのリーダーはラーソンの言葉に苛立っていた。力のないジジイが俺たちに逆らうんじゃねーと思っているのだ。だが、ラーソンが解放した魔力を探知し、リーダーの額に冷や汗が流れていたのだ。


(何故だ? あのジジイの魔力を感じて汗が出てきやがった)


「心の中では、わしを恐れているな」


 と、ラーソンはにやりと笑ってこう言った。その言葉を聞き、リーダーはさらに魔力を強めて叫びながら言葉を返した。


「ふざけるな! お前みたいなクソジジイ、恐れるまでもない!」


「おーおー、強がっちゃって。それがお主の限界か?」


「黙れ! ここでくたばるお前に語る言葉はない!」


 リーダーは魔力を一点に集め、弾丸のような形を作った。それをラーソンに向け、勢いよく飛ばした。


「俺のありったけの魔力をぶち込んだ魔法の一発だ。こいつは体を貫通する威力もあるし、体の中に入ったら勢いよく破裂する! そして、こいつを避けれた奴は一人もいない!」


「あっそう。じゃあわしが最初に避けた奴となろう」


 飛んで来る弾丸を見て、ラーソンはこう言った。弾丸はラーソンの周りにあるバリアを貫通し、ラーソンに向かって突っ込んでいった。だがしかし、ラーソンに命中する寸前で弾丸は音を立てて消滅した。


「な……何故消えた?」


「分からんか坊主? 周りにはカミソリのような刃で作られた風がある。こいつに触れれば、どんな物でもミリ以下の単位で斬り刻まれる。お主の弾丸はわしの風に斬り刻まれたんじゃよ」


 ラーソンの言葉を聞き、リーダーは後ろに後ずさりした。先ほどの攻撃でほとんどの魔力を消費したため、攻撃の手段は一つもないのだ。


「グッ……」


「部下の銃を使っても無駄じゃぞ」


 近くに倒れている部下の銃を拾おうとしたリーダーを見て、ラーソンは再びにやりと笑ってこう言った。だが、その笑みを見て更に苛立ったリーダーはその言葉を無視し、銃を手にしてラーソンに向けて銃を放った。


「全く。無駄じゃというのに」


 呆れたラーソンは魔力を使って運動神経を強化し、高く飛び上がってリーダーの背後に回った。


「なっ!」


「遅いんじゃよ」


 ラーソンはそう言って、強大な魔力の波動をリーダーにぶつけた。波動を喰らったリーダーは悲鳴を上げながらぶっ飛び、ガラス窓を突き破って外に出た。外にいたマスコミ陣はリーダーを見て驚いたが、すぐにカメラを気絶したリーダーに回した。そんな中で、バカップルは目を丸くしてラーソンを見ていて、ローラは呆れてこう言った。


「全く、やりすぎだっての……」




 その日の夜、シュウたち男性陣は風呂に入っていた。


「今日は大変だったね」


「そうだな。あの後の処理が大変だった」


 シュウとラックは湯船につかり、こう話していた。そんな中、ジャックがやってきてシュウの横に座った。


「話は聞いたぜ。あのじーさんが強盗系裏ギルドを一人でぶっ飛ばしたってな」


「最後にリーダーをぶっ飛ばしたせいで、銀行の窓が壊れて大変だったよ」


「誰が弁償するか問題になるよな、それ」


「倒すのは問題ないんですがね」


 三人が話をしていると、女湯の方で悲鳴が聞こえた。シュウは慌てて塀の方へ近付き、クリムに向かって叫んだ。


「どうしたクリム!」


「またおじいちゃんが覗きをしたんです!」


 この言葉を聞き、シュウは思わずずっこけてしまった。その直後、ラーソンの言葉が響いた。


「わしを見損なうなよ、わしはロリコンではない! 未成年の裸に興味はない。わしが見たいのは美人のアッハーンな姿じゃ!」


「いい歳こいて何やってんだいこの変態もっこりジジイ!」


 ローラの声が聞こえた直後、雷が落ちる音とともに、ラーソンの悲鳴が響いた。それからしばらくして、丸焦げになってボロボロになったラーソンが女湯から放り投げだされた。地面に激突したラーソンは、すぐに立ち上がった。


「全く、あと何年生きれるか分からない哀れな老人を何だと思ってるんだ?」


「あと二十年は生きれると思いますよ」


 と、ラックは人外的な生命力を持つラーソンに向かってこう言った。


 その後、シュウたちは風呂から上がり、マッサージチェアに座っていた。マッサージで癒される中、ラーソンはシュウの右腕を見て話しかけた。


「シュウと言ったな。その右腕の傷は?」


「これですか? 子供の頃、クリムを庇ってできた傷です」


「そうか……孫を助けてくれたんじゃな」


 ラーソンはそう言ってシュウの右腕を手にした。すると、今まで柔らかい目つきだったラーソンの目つきが、厳しい物に変わった。


「どうかしましたか?」


「少し無茶してるんじゃないか?」


 ラーソンの言葉を聞き、シュウは少しドキッとした。これまで依頼の中で、無意識のうちに何回か右腕を使った記憶があるのだ。シュウの顔を見て、ラーソンは続けてこう言った。


「君は孫に愛されている。他の誰よりもな。わしからの頼みじゃ、孫をもっと信頼してくれ。君に何かあったら、クリムは深く悲しむじゃろう」


 この言葉を聞き、シュウはラーソンを見てこう言った。


「分かりました。だけど、俺はいつもクリムを信頼しています。俺に何かあったらクリムが悲しむことも知っています。だから、いつもクリムと一緒にいます。いつもクリムと一緒に戦っています」


「……そうか、わしが心配することはなかったか。男の子だから一人で無茶をしているのかと思った。偏見じゃったな、すまない」


「いいってことです。それに、スケベだと思ってたんですが、クリムのことをしっかり考えてたんですね」


「そりゃそうじゃ。わしの大事な孫じゃからな」


 と言って、ラーソンは笑い始めた。それから二人は軽く雑談を始めた。


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