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チュエールからの来訪者

 その日、バカップルはいつものようにちゃちゃっとギルドの仕事を終わらせ、自室でイチャイチャしていた。至極の時間を過ごす中、その時間と幸せ空間を破壊するかのように電話の音が鳴り響いた。


「誰ですか全くも~」


 少し苛立ちながら、クリムが自分の携帯電話を手に取った。画面に表示される相手の名前を見て、思わずクリムは声が出てしまった。


「どうしたクリム?」


 ベッドの上で座っていたシュウがこう聞いたが、クリムは電話の通話をすぐに消してシュウに答えた。


「私の祖父母です。チュエールにいたんです」


「じいちゃんとばあちゃんか。でも、どうして連絡を拒むんだ?」


「祖父はとんでもないスケベで、祖母はとんでもなく厳しいんです」


「なんか滅茶苦茶な人だな」


 シュウはそう言いながら考えた。片方はクリム曰くとんでもないスケベ。シュウの想像上だと、いつもエロ本をわきに抱えて道行く美女にナンパでもしてるんだろうなと思った。そして祖母の方はとんでもなく厳しいため、何をしても叱るようなイメージが浮かんだ。


「驚いたな、クリムにとんでもないじいちゃんとばあちゃんがいたなんて」


「あまり教えたくなかったんです。はぁぁ、これまでの活躍があの二人の耳に入ったんでしょう。チュエールは修行に専念するため、ネットとかテレビとか特別の時しか使えなかったので」


 クリムはそう言って電話の電源を消そうとした。だが、再び携帯電話が鳴りだした。クリムはしょうがないと思いつつ、通話を始めた。


「もしもし? 自分から進んで振り込め詐欺に騙されに来たんですか?」


『しょうもない冗談を言うのはおよし! これからあんたらの所へ行くって連絡をしたいのに、どうして無視するんだい?』


「おばあちゃんたちが来ると滅茶苦茶になっちゃうからよ。私は先輩とイチャイチャしてたいんです。お邪魔虫は出来るだけ入れたくないんですよ」


『祖父母をお邪魔虫扱いにするとはとんでもない孫だねぇ。とにかく、明日にはそっちに行くから出迎えの準備をしておくんだね』


「ええ~? そんな突然に来ないでよ~」


『暇があまりないんだよ私たちは。たまにはいいでしょ、孫の顔とあんたの彼氏の顔を見に行くぐらい』


「む~。分かった、私があれこれ言っても言うこと聞かないだろうし。で、どうやって来るの?」


『魔力を使って飛ぶに決まってんじゃないか。朝早くには来ると思うからね。それじゃ』


 と、ローラはそう言って電話を切った。クリムはため息を吐き、呟いた。


「やれやれです……明日は大変なことになりそう」




 翌日、バカップルはギルドの外でローラとラーソンが来るのを待っていた。その前にシュウや丁度そこにいたティラとミゼリーがバカップルに話しかけた。


「そんなとこに立ってて何やってるの?」


「今日、おじいちゃんとおばあちゃんが来るんです」


 クリムの話を聞き、ティラは声を上げて驚いた。


「急な話だな。一応私もクリムの育ての親ってところで、挨拶しなちゃな」


「そうですね、あの二人にもティラさんのことを伝えておきたいですし」


 というわけで、ミゼリーとティラも加わった。それから数分後、クリムはある魔力を感じてシュウたちにこう言った。


「おばあちゃんの魔力を感じました。そろそろ来ます」


「マジで飛んで来た」


「空を飛ぶくらいなら、あの二人にとっては簡単にできますから」


 クリムがそう話していると、空を飛んでこちらへ向かってくるローラの姿が見えた。その後ろから、少しボロボロになったラーソンが飛んで来ていた。


「来ました」


 クリムの言葉から少し経った後、ローラとラーソンはクリムたちの前に着地した。


「ふぅ、あそこから意外と距離があったね」


「ロ~ラ~、ナンパしてたからってボコボコにするのやめてよね~」


「うっさい。その程度の傷、すぐに治るくせに」


 ローラはラーソンにこう言った後、バカップルに近付いて話を始めた。


「話は聞いてるよ。それなりに活躍してるじゃないか」


「賢者として当然です」


「で、少し女っぽい顔をしてるのがクリムの彼氏かい」


「シュウ・クリーヴと言います」


「へぇ、エイトガーディアンのタルトの息子か。あのオッサンが若かったらきっとこんな感じなんだろうねぇ」


 ローラはシュウの顔をまじまじと見ながらこう言った。しばらくし、ローラはラーソンの方を振り返りながらこう言った。


「ラーソン、あんたも挨拶をし……ありゃ?」


 振り返った先には、先ほどいたはずのラーソンの姿がいなかった。どこに行ったと思いながら探すと、ラーソンがティラとミゼリーをナンパしている姿を見つけた。


「ねぇお姉さ~ん。僕と一緒にお散歩でもしない? もし散歩が嫌なら、お茶でもいいよ。この辺でおいしい喫茶店ある? 僕おごっちゃうよ~」


「何やってんだいこのバカたれが!」


 ローラは魔力を開放し、体を回転させて勢いをつけ、強烈な回転蹴りでラーソンを蹴り飛ばした。ラーソンは悲鳴を上げ、体を回転させながらぶっ飛んで行った。


「全く、ここまで来る途中で何回もナンパして……それで遅くなったってのが自覚してないのかいあのバカたれは!」


 ローラは呆れながらこう言った。シュウはそんなパワフルなローラを見て、ただぽかんとしていた。


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