バカップル大ピンチ!
バカップルは初めて危機感を覚えていた。クリムの魔法が効かず、シュウの弾丸も効果が無い。メッズーニのロボット、ヴァンガルはバカップルに対し大きな脅威となっていた。その事を察したメッズーニは、コクピット内でバカ笑いしていた。
「オーッホッホッホ! おまけのもう一つオーッホッホッホ! 見なさいあなたたち、あのバカップルの苦戦している様子を!」
「こりゃー傑作ですなぁ!」
「この顔をSNSに載せたらバズりますよ」
「悪の組織がSNSなんてやるんじゃないよ! そこから私たちの悪事がばれたらどうするんだい! とにかく、このまま勢いに乗ってあのバカップルをけちょんけちょんのごちゃごちゃにしてやるよ!」
メッズーニはバカップルを倒すべく、ヴァンガルのスイッチを押した。その直後、ヴァンガルの胸部分が開き、そこから大量のミサイルが飛んできた。
「嘘だろ、何であんなもんがあるんだ!」
「ここで撃ち落としたら周囲に被害が……ああもう、どうやっても周囲に被害が及びます!」
バカップルは悲鳴を上げながら逃げ出したが、ヴァンガルが放ったミサイルはバカップルを追尾していた。周りに被害が無ければ魔法や銃でミサイルを撃ち落とすのだが、ここは市街地で人もいる。避難が終わったのかどうかさえも確認ができない。ここでミサイルを破壊したら爆発の衝撃で破片が飛び、怪我人が出る恐れがある。ギルドの戦士として、周囲に被害を拡大させることはできないのだ。
どうすればいいのかと思いながら、バカップルは逃げていた。その時、クリムがあることを思いついた。
「破壊ができないなら、消してしまえばいいんです!」
と言って、ミサイルの方を見て闇の魔力を発した。それを見て、シュウはクリムの行動に納得した。
「そうか、闇の魔力で消し去ればいいんだな」
感心していたが、その後ろにはヴァンガルが迫っていた。シュウは銃を構えてヴァンガルの方を向き、銃口を向けた。ミサイル攻撃があった後、シュウは胸のミサイルハッチが開いたところを狙おうと考えていた。しかし、メッズーニはシュウの行動に感づいていた。モニターで銃を構えるシュウを見て、メッズーニはこう言った。
「おバカちゃん。ハッチが開いたのと同時に銃を撃ちこむつもりね。でもね、そう簡単にあんたの思い通りにはならないわよ」
その後、メッズーニは手元のボタンを押した。ヴァンガルの頭部がシュウの方を向き、こめかみ部分に付けられているバルカン砲がシュウを襲った。
「おわっ! バルカンまであるのかよ!」
シュウは驚きつつ、クリムを連れて後ろの壁に隠れた。バカップルは乱れた呼吸を整えながら、話を始めた。
「まさかあのバカ相手に苦戦するとは……」
「俺たちと戦う事を予想して、物騒なロボットを作ったんだろ。にしても……」
シュウは物陰からヴァンガルをこっそり見て、すぐにクリムの元へ戻った。
「あんな奴をどうやって倒せばいいんだ?」
「ここで私たちが食い止めなければ被害が広がりますし……闇の魔法が通じれば装甲ごと削り取るんですが……」
バカップルが話していると、突如何かの気配を感じたシュウがクリムに飛びついた。その直後、二人がいた後ろの壁を貫通し、ビームが飛んできた。
「魔力を感じないビーム……」
「あんなのありかよ!」
『ホーッホッホッホ! あんたたちをコテンパンにするために、科学でビーム砲を作ったのよ! これであんたらもおしまいね!』
と、スピーカーからメッズーニの笑い声が聞こえた。そして第二波のビームがバカップルを襲おうとした。その時だった。
「させないわよ!」
クララが現れ、ヴァンガル目がけて氷柱を発したのだ。
『フン、こんなもの効かないわよ』
クララが放った氷柱はヴァンガルの装甲をつらぬことなく、衝突した衝撃で跡形もなく消滅した。だが、これでビーム充電が中断された。
「全く、仲間がいたのね」
メッズーニはモニターを見て、先ほどまでいたバカップルが姿を消したことに気付いた。少し悔しい気分になったが、まだ自分が有利な状況になっていることを思い出し、笑い始めた。
クララが攻撃をしている隙に、ヴァーナはバカップルを連れて逃げていた。
「ありがとうヴァーナ。おかげで助かったわ」
「仲間を見捨てるなど、我にはできぬ」
「さて、一度この辺でストップしてくれ。クララとも合流したいし」
シュウの言葉を聞き、ヴァーナはその場で止まった。それからすぐ魔力を開放したクララと合流した。
「お待たせ。結構ごついのと戦ってるわねクリム、シュウさん」
「あのロボット、私と先輩の対策で作ったようです」
「銃も魔法も効かない。とんでもねーロボットだぜ」
「フッ、あんなポンコツ、我が裁きの雷で消し去ってくれるわ!」
「それが出来ないんでしょうが」
クララはそう言ってヴァーナの頭を叩いた。その後、四人はヴァンガルから距離を取りながら相談を始めた。
「どうやって倒そうか」
「ミサイルハッチが開いた時に狙いたいんですが、相手もその隙があることを察知しています」
「どんな物にも弱点はあるというけれど、本当に弱点なんてあるのかしら?」
「電気で動いているなら、我の電気でオーバーヒートさせてやろうか?」
ヴァーナの一言を聞き、クララはまたバカなことを言ってと心の中で呆れていた。だが、その言葉を聞いたクリムは何か思いついたような表情をしていた。




