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深い森の中で

 翌日、シュウたちは依頼主であるイナカーンの村長の元へ向かい、話を聞くことにした。


「いやはや、遠い所からよく来なさった。わすがイナカーンの村長だす」


 と言って、村長は深々と頭を下げた。村長は高齢のため、かなり腰が曲がっている。その状態で頭を下げたため、シュウたちは慌てて頭を上げるようにした。村長は礼を言いながら頭を上げ、シュウたちにこう言った。


「わすらの依頼はこの村の森に生息しているグルバンウルフというモンスターの討伐ですだ」


「グルバンウルフねー。物騒なモンスターが生息してるね」


 ドゥーレが珍しそうに呟いた。話に出たグルバンウルフというのは魔力を持った少し知能のある狼に似たモンスターであり、群れを作って他の動物やモンスター、人などを襲っている。魔力を持っている通り、口から火の玉などを発して攻撃するため、力のない人や戦士にとっては驚異的存在である。


「お願いですだ。わすらにとってはグルバンウルフは災害みたいな存在だ。しかも、あのグルバンウルフは他の奴と比べてかなりでかくて凶暴なんだ。わすらの村の戦士じゃ太刀打ちできないだ。頼む」


「分かりました。では、早速その森へご案内してください」


 クリムの言葉を聞き、村長はうれし泣きを始めた。




 会話後、シュウたちは森の中へ向かった。森の中を歩く中、シュガーが何かを見つけ木の根元へ近付いた。


「どうかしましたかシュガーさん?」


「珍しい薬草があったの。これはシビレリュー草と言って、麻痺性の毒がある危険な薬草なの。滅多にないからとっておこーっと」


「物騒な薬草を手にしないでください」


 クリムは少し焦りながらシュガーにこう言ったが、シュガーはクリムの言葉を無視し物騒な薬草の採取を始めた。そんな中、シュウが銃を構えて周囲を見回していた。


「いるな」


「だねー。風の中に魔力の気配がするよ」


 シュウとドゥーレの言葉を聞き、シュガーは動きを止めた。クリムはすでに魔力を少し開放しており、シュウに近付いていた。


「私の魔力を感じても逃げないようですね」


「普通の人ならクリムの魔力を感じただけで逃げる。だが、相手はモンスターだ。人間じゃない」


 シュウがこう言うと、周りを囲むかのようにグルバンウルフの群れが現れた。


「探す手間が省けましたね」


「ああ。向こうから出てくるなんて好都合だ」


 シュウはそう言って群れの一匹に向けて銃弾を放った。しかし、シュウが放った銃弾は簡単に回避された。


「流石にやるな」


 と言って、シュウは襲ってくるグルバンウルフを睨んだ。最初の一発はかわされるとシュウは思っていた。その時の為に、シュウは二発目の準備をしていたのだ。


「今度は避けれると思うなよ」


 襲ってくるグルバンウルフに対し、シュウはグルバンウルフの額に合わせ銃口を向けて発砲した。二発目の弾丸はグルバンウルフの額に命中し、そのまま頭を貫通した。


「流石ですね、先輩」


「一匹やったからって油断しないでねー」


 クリムとドゥーレの言葉の後、別の二匹が襲い掛かった。しかし、クリムとドゥーレの風の魔法が襲って来た二匹のグルバンウルフを切り裂いた。


「私たちを襲おうだなんて無茶なことをしますね」


「だねー」


 クリムは周りのグルバンウルフを見てこう言った。仲間がやられたとはいえ、それでも群れの闘志は消えることはなかった。シュウはため息を吐き、襲ってくる群れに対し銃を発砲した。クリムとドゥーレも魔力を開放し、襲ってくる群れに攻撃を始めた。しかし、先ほどの攻撃を見て学んだのか、群れは三人の攻撃を回避し始めた。


「意外とやるなこいつら」


「さっきの攻撃を見て、私たちの攻撃に対してどう動くか学んだんです」


「それなりに知恵があるって話で聞いたけど、ここまで知恵が回るだなんて思わなかった」


 三人が苦戦する中、何かを作っていたシュガーが三人にこう言った。


「皆、口と鼻を抑えて」


「え? ええ」


 その後、戦う三人はシュガーに言われた通り鼻と口を抑えた。すると、突如目の前に黄色い煙が発生した。


「何だこれ?」


「ま……まさか……」


 先ほどのシュガーの話を聞いたクリムは、恐る恐るシュガーの方を見た。足元にはお香らしきものがあり、焼かれていたのはシビレリュー草であった。それを見て、三人は察した。シビレリュー草を焼いて煙を発し、その煙で群れを麻痺らせたと。


「物騒で大胆なことを考えるねー」


「状況を打破するためには、時に大胆なことも必要なのだよ」


 と、どや顔でシュガーがこう言った。話を終え、シュウたちは麻痺で動けなくなったグルバンウルフを倒し始めた。しかし、運良く生き延びた一匹のグルバンウルフがこっそりとその場から去り、逃げ去ったのだ。


 生き延びたグルバンウルフは住処としている大きな木の下へ行き、高い所に立っているボスのグルバンウルフに近付いた。ボスのグルバンウルフは逃げたグルバンウルフを見て何かがあったことを察知し、遠吠えを発した。それに合わすかのように百匹以上いる下っ端のグルバンウルフが遠吠えを発した。


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