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独裁者に制裁を

 ドクダミはバカップルがパンジー王女の護衛任務を行う事を知った後、前もってバカップルの情報を手にしていた。新聞やテレビなどで二人の存在は知っていたし、エイトガーディアンや仲間のギルド戦士たちと共に難事件をいくつも解決したことを把握していた。だが、解決したことしか話を把握できず、二人がどのくらい強いのか細かい事までは把握できていなかった。その為、裏の情報屋や知り合いなどから二人の事を聞いていた。


 その話を聞くうち、ドクダミはシュウの右腕の傷の事を知った。アベツアがクリムと戦う事を予測していれば、自分がシュウと戦う可能性が高い。その為、シュウの弱点である右腕を狙えば確実に倒せるとドクダミは考えた。


(入り込んで来たか。バカな奴)


 めり込んだ跳弾を見て、ドクダミはにやりと笑った。シュウの隙を見て、手にした包丁で右腕を突き刺し、行動不能にしてやろうと考え、ドクダミは音を立てず行動を始めた。長年の裏世界の生活のせいか、ドクダミは音を立てず移動できる技を身に着けていた。この技のおかげで、いくつも難を逃れた。


(ここでお前は死ぬ、確実にな‼)


 シュウの背後に回ったドクダミは包丁を構え、シュウの右腕に向かって突き刺そうとした。しかし、シュウは前を向いたまま後ろのドクダミに向けて銃を放った。


「なっ!?」


 銃を構える行動を見て咄嗟に横に飛んで移動したため、弾丸を回避することはできた。しかし、シュウに自分の居場所がばれてしまった。


「あんたが元王か」


「黙れ、元王という言葉を使うな、無礼者‼」


 やけくそになったドクダミは手にした包丁をシュウに向けて投げた。シュウは体をそらして飛んできた包丁をかわし、ドクダミに近付いた。


「痛い目にあいたくなければさっさと捕まるんだな。お前の相方もやられたようだし」


 シュウの言葉を聞き、ドクダミはアベツアがクリムによって倒された事を知った。


「グ……クソッたれェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ‼」


 ドクダミはシュウに襲い掛かったが、軽く足を蹴られ、その場に転倒した。その時、近くに置いてあった木箱の角に頭をぶつけてしまった。


「ググググ……」


「俺用の対策でいろいろやったみたいだけど、逆に足をとられる結果になったな」


 シュウの言うとおり、罠を張って準備をしていたが、それが逆にドクダミの行動範囲を狭めてしまった。


「このクソ坊主……裏ギルドのボスを甘く見るなよ……」


「お前は今まで戦った裏ギルドのボスの中でかなり弱い。あんまりでかい態度をとらないことをお勧めするぜ」


「ふざけるなよ小僧‼」


 ドクダミはシュウに殴りかかったが、シュウは足元にあった包丁を手にし、前に突き刺した。それを見て、ドクダミは慌てて後ろに下がった。


「隙だらけ」


 そう言うと、シュウはドクダミの足元に向かって銃を放った。ドクダミは慌てて木箱の後ろに隠れたが、シュウは手にしている包丁を木箱の裏にいるドクダミに向けて放り投げた。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアア‼」


 目の前に落ちてきた包丁を見て、ドクダミは悲鳴を上げた。顔のギリギリを包丁はかすめたのだ。


「な……何だこの坊主は……」


「こう見えても修羅場はくぐっている。あんたより物凄い修羅場をな」


 シュウはそう言うと、腰を抜かしているドクダミに近付いた。しかし、これはドクダミがとっさに考えた作戦だった。わざと腰を抜かしたふりをし、近付いたシュウを近くにあった鋭い木の切れ端で刺そうと考えたのだ。


「グ……確かにお前は強いよ。だけどな……」


「だけど……何だ?」


「まだお前は甘い‼ 倒したからって油断すんなよ‼」


 そう言ってドクダミは木の切れ端をシュウに突き刺そうとした。しかし、ドクダミは急に寒気を覚えた。


「ど……どうして急に寒く……」


「私の先輩に何かしようとしましたね?」


 と、扉の外にいるクリムが物騒なオーラを放ちながらこう言った。クリムは水の魔法を使い、氷のようにしてドクダミの周囲に移動するように操り、温度を下げていたのだ。


「き……貴様は……」


「私たちの事を知っているならば、ご存じのはずですよ~」


 クリムが来たことを知ったドクダミは分が悪いと思い、逃げようとした。だが、ここはシェルター内のキッチン。窓はない、唯一の逃げ道である出入口の前には魔力を開放したクリムが立っている。


「そんな……バカな……」


 もうダメだと思ったドクダミはその場でうずくまり、大きなため息を吐いた。




 数分後、シェルターの奥で不安と恐怖で怯えているパンジー王女やそのほかの皆さんは、バカップルの無事を祈っていた。


「どうか……ご無事で……」


 激しい音が聞こえるたび、パンジー王女は小さく呟いた。しばらくして、音は完全に聞こえなくなった。どうなったのだろうと思ったのだが、兵士の一人が前に出た。


「私が調べてきます。皆さんはここにいてください」


「俺も行く。一人じゃ不安だ」


 その後、二人の兵士が見回りのため外へ向かった。その数分後、二人の兵士は慌てて戻ってきた。何かあったのかと思い、パンジー王女は急いで駆け付け彼らに話しかけた。


「どうかしたのですか!?」


「戦いは終わりました‼ ドクダミとその仲間はシュウさんとクリムさんが倒しました‼」


 その声を聞き、パンジー王女はほっと安堵の息を吐いた。


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