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守る剣VS奪う剣

 フォーヒャはタルトの事を話には聞いていた。腕のいい剣士がエイトガーディアンにいると。しかし、簡単にフォーヒャの攻撃を喰らい、あっさり地面に倒れてしまった。タルトの実力を察し、フォーヒャは少し残念と思った。


「あなたはここで死んでもらいますよ。あなたのような正義感ぶった愚かなバカ野郎がいると迷惑なのでね‼」


 タルトに接近して止めを刺そうとしたフォーヒャは、確実にタルトを始末するため剣を心臓に向けて突き刺そうとした。しかし、間一髪タルトは剣を盾にしてフォーヒャの攻撃を防御した。


「へぇ……」


「これが本気か?」


「ええそうですよ。私は確実に相手を殺すために自己流で生み出した剣技を使います。今も心臓を一突きしようとやろうとしたんですがねぇ」


「ははっ……すまなかったな、簡単に命を渡すわけにはいかないのでな」


 タルトは剣を振り回し、フォーヒャに攻撃を仕掛けたが、簡単に動きを見切られてしまい、フォーヒャは後ろに下がって攻撃をかわした。だが、フォーヒャは察していた。先ほどの動きは攻撃のためではなく、自分との距離を開くためだと。


(そうか、先ほどのダメージを回復するために……)


 さっきの蹴りの攻撃のダメージがまだ完全に治っていない。そう考えたフォーヒャはまだタルトのダメージが治りきる前に、さっさと止めを刺そうと思った。タルトは大きく呼吸をし、腹の痛みを和らげつつ剣を構えた。


「何もしないつもり!?」


 剣を構えているだけのタルトを見て、フォーヒャは確実に始末できると思った。接近して力を込めて剣を振り下ろしたが、剣から伝わる感触は人を斬る感覚ではなく、固いものがぶつかった感覚だった。


「グッ……グググググググ……」


 タルトは剣を逆手に持ち、フォーヒャの攻撃を受け止めていた。しかも、その時のタルトの動きはびくともしなかった。フォーヒャは力をさらに込めてそのまま剣を振り下ろし、タルトの腕を斬ろうとしたが、びくともしなかった。


 攻撃を諦めたフォーヒャは後ろに下がって呼吸を整え、そのついでに手にしている剣を目にした。刃を見ると、少し欠け、ひびが入っていた。


「クソッ‼」


 もう使い物にならないと判断したフォーヒャは、剣を投げ捨てて予備の剣を手にした。


「もう捨てるのか?」


「ああ、使えない剣はただのゴミだからな」


「そうか……君は剣士としてはまだ未熟だな」


 タルトの言葉を聞き、フォーヒャは苛立ちを覚えた。これまでドクロハンドとして、フォーヒャは確実に剣で仕事をこなしてきた。ドクロハンドに入る以前にも、剣を使って裏の仕事や喧嘩、暗殺などを行ってきた。その経験があってか、フォーヒャは剣の腕に自信があった。


「侮辱しているつもりか? 悪いが、私は今まで戦った相手は全て剣で斬り捨てた。貴様もいずれ私の剣技によってくたばるだろう」


「君は確かにいい剣の腕を持っている。しかし、それを人を傷つけるために使っている」


「剣は人を斬るための道具だ‼ 剣を使って人を斬って何が悪い? 人を斬り殺して何が悪い!? それが剣本来の使い方だろうが‼」


「そう思っている時点で、君はまだ未熟だ」


 その言葉を聞き、更にフォーヒャは激高した。


「私よりお前の方が強いというのか!? なら、私を倒してみろ‼」


 フォーヒャは叫びながらタルトに向かって走って行った。タルトに接近し、怒りと力に任せて剣を振り下ろそうとしたが、その前にタルトはフォーヒャの腹を一閃した。


「な……」


「君は自分の目的の為に剣を振るっている。人を傷つけたり、殺すために、しょうもない自己満足のために。私は剣という武器を使って、誰かの為に悪人と戦う。自分のためではない。他人の為に」


 タルトはそう言うと、膝をついたフォーヒャに向かって再び口を開いた。


「これで君がどれだけ未熟か分かったかい? 自分の為に剣を振るうよりも、誰かを守るために剣を振るう方がよっぽど強い」


「……誰かを守るために誰かを傷つけるのはよくないんじゃないか?」


「人を傷つける奴は大体しょうもない奴だ。痛い目を見せなければ反省しないからね。私はそう言う奴を何百人と見てきた」


「そうですか……裏ギルドに入るような奴は救いようのない大バカというわけですか……」


「反省して真人間になれば大バカではなくなる。後は君がどう動くかだ」


「その前に……私は処刑されるかもしれませんよ。綺麗ごとを言うなよ」


「……すまないな」


 タルトの言葉を聞き、フォーヒャはそのまま気を失った。




 ドクダミとアベツアは城の周りを歩き続けていた。その中で、ドクダミは庭に入り、人が入った跡のある草に近付いた。


「誰かがここに入ったんだな」


「ただの雑草じゃないか。こんな所にお姫様が隠れているのか?」


「その通りだ」


 ドクダミはアベツアに着いて来いと言い、奥へ向かった。草木が行く手を阻むように生い茂っているため、歩くには困難だった。ドクダミは手にしているナイフで草木を斬りながら奥へ進んだ。


「ったく、ひでー庭だな。ジャングルみたいだ」


「何かを隠すために、わざと草木の手入れを行っていないのだ。ほら見ろ」


 ドクダミは奥にあるシェルターを見て、にやりと笑った。アベツアは目を閉じて魔力を探知し、魔力を開放した。


「あの中にクリムがいる……」


「やはり姫の護衛には大物に任せたか」


「奴は俺に任せろ、絶対に始末してやる。ドクダミは自分の妹をぶっ殺して来い」


「ああ。頼んだぞアベツア」


 会話を終わらせた後、二人はシェルターに向かった。


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