ハリアの村のギルド戦士の活躍
パンジー王女を狙うドクダミは、周囲を見回していた。
「パンジーはどこかに隠れたか」
その言葉を聞いたアベツアは、魔力を探知しながら言葉を放った。
「おそらくクリムが護衛についているだろう。で、他の連中が団員の相手をしていると」
「雑魚は雑魚のお片付けってか? ゲヒヒヒヒヒヒヒヒ‼ このまま奴らの所に遊びに行っちゃおっかなー!?」
フォンは剣を振り回しながらこう言ったが、フォーヒャはため息を吐いてフォンの頭を叩いた。
「止めんかバカ。戦力が減ってきている」
フォーヒャは手にしたスイッチを見ながらボタンを押すタイミングを見計らっていた。ツバチたちが動いたのは彼らの独断である。ドクダミが勝手に動いていいと言っていたため、彼らは勝手に城に攻め入り、暴れてラックたちにやられた。しかし、彼らが仕掛けた探知機能が付いた爆弾が予想以上にギルドの戦士たちを苦しめる結果となったのだ。
「さて……これからどうするか」
「俺は雑魚の掃除をしに行くぜ‼ アベツア、ドクダミ王をちゃんと守れよ‼」
じっとしているのが嫌になったフォンは、勝手に動き出した。フォーヒャはフォンを止めようとしたのだが、ドクダミがフォーヒャを止めた。
「リーダー、奴を好きにさせていいのか?」
「構わん。お前も好きに動いていいぞ。真面目なのはいいが、たまにはストレスを発散させるために好き勝手動け」
「……いいんですか? 私が動いたら大変なことになりますよ」
「かえって奴らが混乱する。時間稼ぎになる」
「分かりました。では私も好き勝手動きます」
「怪我するなよ」
ドクダミの言葉を受け、フォーヒャも敵と戦いに行った。だが、アベツアはパンジー王女の所にクリムがいることを確信し、ドクダミと行動を続けた。
ジャックたちの戦いっぷりを見て、団員たちは動揺していた。
「何だあいつら? 化け物みたいに強いぞ」
「クッ、エイトガーディアンの他にもバケモンはいたのか」
「強い、強すぎる‼」
動揺している団員に対し、容赦ないジャックの攻撃が襲った。攻撃を受けて宙に舞う仲間を見て、他の団員は悲鳴を上げながら逃げようとした。だが、ミゼリーが発した痺れの霧が彼らを襲い、体中を痺れさせた。
「が……あ……」
「痺れる……」
「悪いけど、あんたたちを逃すわけにはいかないのよ」
ミゼリーが倒れている団員に向かってこう言った。その時、後ろから闘志を燃やしている団員がミゼリーを襲おうとした。しかし、突如落雷が発生し、団員を倒した。ミゼリーは後ろを振り返り、ラックにこう言った。
「ありがとねラック」
「いえいえ」
ラックは剣を鞘に納め、ミゼリーと共にジャックの元へ向かった。すると、ゾンビのような動きをする団員を率いてシュガーとティラが戻ってきた。
「うーす。こっちは大丈夫のようだね」
「それ何?」
「私の薬で操れるようにしたんです~」
と、愛らしい笑顔でシュガーがこう言った。可愛い笑顔とは真逆の物騒な言葉を発したシュガーを見て、ジャックは相変わらずシュガーは恐ろしいと心の中で呟いた。その時、上空から何かが現れた。
「ゲーッヘッヘ‼ なんか強そうな連中はっけーん‼」
現れたのはフォンだった。ジャックはため息を吐いて剣を構えた。
「頭がおかしい奴が現れたな」
「おかしい? ふざけたことを言うクソ野郎だな。気に食わねー、血祭りにあげてやる‼」
フォンはこう言って、大きな刃の付いたブーメランを二つ手にし、片方をジャックに向けて投げた。武器の性質を察したジャックはブーメランを叩き落とし、迫って来たフォンの攻撃を防御した。
「皆、今だやれ‼」
「はい‼」
ラックはフォンに接近して斬りかかり、ティラはライフルを構えてフォンに向けて発砲した。しかし、フォンは接近したラックを蹴り飛ばし、ティラが発したライフル弾はあっけなく防御された。
「バカそうな奴だが意外とやるなー」
ライフル弾を防御されたティラは、感心してこう言った。その言葉を聞いて苛立ったフォンは、声を上げてこう言った。
「お前みたいな雑魚と一緒にするな、クソババア‼」
フォンのクソババアと言う発言を耳にし、ティラはバズーカ砲を取り出した。
「もういっぺん言ってみろネジが外れた腐ったミカンの脳みそ(ピーーー!)野郎‼」
「ティラさん、その発言はまずいですよ」
シュガーが笑いながらこう言ったが、ティラは問答無用でバズーカを放った。フォンは襲ってくるバズーカ弾をかわしているが、その動きに合わせるかのようにティラはガトリングガンを二丁装備して攻撃を仕掛けた。
「おいおい、あのクソババアどこから武器を出してるんだよ?」
フォンは次第にティラに対して恐怖心を抱いていた。そんな中、突如体に痺れが発生した。後ろを見ると、魔力を開放したミゼリーが何かを発していた。
「おいおいねーちゃん、何したんだ?」
「麻痺作用のある霧を発生したのよ。あなたが鼻や口を押えても小さな隙間から霧は入る。それに、完全に抑えても耳の穴や小さな毛穴から霧が入るわ」
「霧使い……か……それも完璧な……」
フォンは体中に走る痺れを我慢し、ティラが放つガトリング弾を回避していった。しかし、完全に避けることはできず、ついにガトリング弾が命中した。
「グウウウ‼」
「これで止めじゃァァァァァァァァァァ‼」
ティラはフォンにとどめを刺すべく、ロケットランチャーを装備して発射した。
「おいおい……何でそんなもん持ってるんだよ!?」
襲ってくるロケット弾を避ける事が出来ず、フォンはロケット弾に命中してぶっ飛んだ。痺れはなくなったのだが、ロケット弾の爆発のせいで大ダメージを受けた。
「く……クソ……虐殺祭りかと思ったんだがな……」
「そうはさせませんよー」
フォンが倒れた所の近くにシュガーが立っていた。シュガーを見た瞬間、フォンはティラ以上の恐怖を感じた。今までフォンは相手に対して恐怖や威圧などを感じたことはなかった。どんな敵でも自慢のブーメランで切り裂き、始末していたからだ。その為、彼は自分が一番強い戦士だと思っていた。しかし、そんな彼でもシュガーから感じる得体の知らない恐怖を感じていた。何故こんなガキに俺はビビっていると自分で自分に問いかけるフォンだが、その理由は分からなかった。シュガーは逃げようとするフォンの首を掴み、手にしている注射器を刺した。
「な……何をした!?」
「さっき作った薬です。適当に薬品を込めて作ったので、どうなるか分かりません。ただ、死にはしないので安心してください」
シュガーの言葉の後、フォンは急にめまいを発した。めまいどころか、頭痛や吐き気、更には手足の感覚がなくなった。それどころか、急に視界がぐにゃぐにゃしてきたのだ。
「な……何だこれは……」
フォンはこう言った後、気を失って倒れた。シュガーは気を失ったフォンを見て、小さく呟いた。
「うーん……ちょっと毒が強すぎたかなー」




