攻め込んで来たドクロハンド!
攻め込む支度を終えたドクロハンドの連中は、ワラフ王国まで暴走するようにバイクを走らせていた。そんな中、警備をしていた警察官がドクロハンドのバイクを見つけ、ため息を吐いた。
「こんな時間に暴走族かよ」
「全く、しょうがない連中だな」
警察官は白バイにまたがり、ランプを点滅させてドクロハンドに向かって走って行った。ドクロハンドの後ろの方で走っている男たちは、後ろから白バイ隊員が走って来る事を察し、前で走るドクダミにこう言った。
「ボス‼ 後ろからうざいのが来ていますが‼」
「邪魔されると面倒だ。始末しろ」
「アイアイサー‼」
部下は魔力を開放し、火の玉を白バイ隊員に向かって放った。突如飛んできた火の玉に驚いたが、白バイ隊員は見事なバイクテクで攻撃を回避した。その後、通信機で連絡を入れた。
「こちらホワイト・カワサーキ。ワラフ王国国境付近で暴走する集団を発見。攻撃をしてきたため、応援の方をお願いしたい‼」
『了解。ワラフ国境警備隊に連絡を入れる。彼らと連携をとり暴走集団を捕まえろ』
「了解‼」
話を終え、白バイ隊員は仲間にこの事が国境警備隊に連絡が入った事を伝え、後でドクロハンドを捕まえることを報告した。
数分後、ドクダミは何もしてこない白バイ隊員に対し不信感を覚えていた。
「怪しい。後ろの連中があれ以降何もしてこない」
「ボス‼ 前を見てください‼」
部下にこう言われ、ドクダミは目の前の光景を見た。そして、舌打ちを入れて悔しそうにした。
「面倒だ。警備隊に知られていたのか……」
ドクダミは当初、警備が薄い状況を狙って無理矢理警備を突破しようとしていた。しかし、今はそう言うわけにはいかなかった。後ろを走る白バイ隊員が自分たちの事を知らせたのだ。
「あいつはドクダミ元王‼」
「裏ギルドを作ったという噂は本当なのか!?」
「そんな事はどうでもいい、捕まえるんだ‼」
国境警備隊は武器や魔力を使ってドクダミを攻撃してきたが、近くを走っていたフォンとフォーヒャ、アベツアが前に動いた。
「何をするつもりだ?」
「雑魚共を懲らしめるんだよ」
「状況が変わった。手荒なことをしなければならないようだな。本当はしたくないが」
「クリムと戦う準備運動だ」
三人はそう言うと、魔力の塊を作り出した。その大きな魔力の塊を見て、警備隊は驚いた。
「何だあの魔力は……」
「我らより強力だぞ‼」
「構わん、攻撃しろ‼ ここで防がなければ奴らがワラフ王国へ入ってしまう‼」
警備隊はそれでも攻撃を仕掛けた。しかし、三人が放った魔力の塊は警備隊の攻撃をかき消しながら飛んできた。
「よ……避けろ‼」
敵わないため、警備隊は避けることを選択した。しかし、フォンは笑いながらこう言った。
「バッカじゃねーの? テメーらごときが俺たちの攻撃をかわせると思うなよ」
この直後、三人が放った魔力の塊は破裂し、その破片が警備隊の体を撃ち抜いた。
「ギャーハッハッハ‼ レンコンみてーな死体の山の出来上がりってかぁ!?」
「バカを言ってる暇じゃない。先に行くぞ」
その後、ドクロハンドの連中は警備隊の死体をバイクのタイヤでズタズタにしながら先へ向かって行った。無残な死体となった警備隊を見て、白バイ隊員は腰を抜かしていた。
「こ……こりゃ大変だ……」
まずいと思い、急いでワラフ王国へ連絡を入れた。
一方、爆弾の対処を行っているタルトとジャックはこの事をシュウたちに伝え、城内の人の避難誘導を任せていた。タルトは爆弾処理を行っているのだが、かなり難しい爆弾で解除は出来なかった。
「クッ……こいつは難しい……」
「遠隔操作できるタイプか?」
「ああ。敵の好きなタイミングでドカンとやるつもりだ。シュウが言っていた。身を隠しながら行動する奴がいたと。多分、そいつの仕業だ」
「爆弾で騒ぎを起こし、その混乱で王女を始末するってことか。ふざけたことをするな……」
しばらくし、タルトは舌打ちをした後、ジャックを連れて外に出た。
「こいつは無理だ。下手したら私と君まで爆発に巻き込まれる‼」
「城はいいのか?」
「命の方が優先だ。死んだら何もかもおしまいだ」
「……確かにな」
その後、二人は近くの窓から外に飛び出て、下にいたバカップルと合流した。
「シュウ‼ クリムちゃん‼」
「父さん、ジャック先輩‼ 爆弾はどうなったんですか!?」
「解除は不可能だ。だからこうやって逃げてきた」
「それより王女や女王は?」
「避難のため、いざという時のシェルターに避難しました。皆さんは城内の人の避難が終わり次第戻ると言ってました」
「了解」
タルトがそう言った直後、突如城内の方で爆発音が鳴り響いた。
「伏せろ‼」
「バリアを張ります‼」
飛んで来る瓦礫に対し、クリムはバリアを張ってシュウたちを守った。何度も爆発する城を見て、ジャックは小さく呟いた。
「クソッたれが……あいつら……王女一人の命を狙うのにこんなことを起こすか?」
「裏ギルドの連中なんて大体目的のためなら何でもします。その為に、爆発テロの一つや二つ起こすと思います」
クリムがそう呟いた時、背後から魔力を感じた。クリムはバリアを解いて魔力を開放し、シュウは愛用のアサルトライフルを装備した。
「さーてと、敵さんのお出ましか」
「この騒動に決着を付けよう。今度ばかりは私も本気で戦うぞ」
ジャックは両手に剣を装備し、タルトは愛用の剣を強く握った。そして、離れた所にある丘から見えたランプを見て、クリムは大声でこう言った。
「敵が来ました‼」
「先手必勝‼」
「行くぞ皆‼」
タルトはそう言うと剣を強く振るって衝撃波を発し、シュウはアサルトライフルを敵に向かって乱射した。二人の攻撃で一部のドクロハンドが倒されたが、攻撃を避けたり運よく飛んでこなかった団員がスピードを上げ、一気にシュウたちの元へ駆け寄った。
「くたばれ戦士共‼」
「俺たちドクロハンドをなめるんじゃねーぜ‼」
「くたばるのは……」
「あなたたちの方です‼」
ジャックは剣で敵をバイクごと一閃し、クリムは電撃の魔法を放って敵を吹き飛ばした。シュウは前を見て、どんどんやってくる敵を確認し、軽く呼吸をして呟いた。
「総力戦の始まりだな」




