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不安な王女

 ドクロハンドのアジトにて。ワラフ王国に向かった部下たちの連絡がない事を察し、ドクダミはため息を吐いていた。そんな中、アベツアがドクダミの様子を察して近付いてきた。


「奴らからの連絡が途絶えたのか?」


「ああ。会議の後、奴らは自分から城に行って作業をするって言ってた。自信たっぷりにな」


「奴らの動きが今後の俺たちの動きを左右する可能性がある。いい方に行けばいいが」


「作戦の方も気になるが、奴らが無事だといいが……」


「無事なわけがないかもな。賢者様がいるんだし」


「お前が貰うはずだった肩書を奪った奴か」


「そうだ。クリムは必ず俺が始末する。このギルドで俺しか奴を倒す事はできないだろうしな」


 と、アベツアはそう言って去って行った。そんな中、ドクダミが持つ携帯電話が突如動き始めた。携帯電話の画面にはデジタルの地図で表記されたワラフ城の内部が映し出されていた。地図の一部には赤く点滅している箇所が存在した。それを見たドクダミはにやりと笑った。




 ワラフ城にて。戦士たちが倒したドクロハンドの侵入者は皆スネックとボーノによってギルドが呼び寄せた護送車に入れられていた。


「クソッたれ、後で覚えておけよギルドのクソ野郎共‼」


「娑婆に出てきたら真っ先にお前らを血祭りにあげてやる‼」


「やれるものならやってみろよ負け犬軍団‼」


 そう叫びながら、スネックは足で蹴飛ばすかのように侵入者を護送車に詰めていた。侵入者が全員護送車に詰めたことを確認した後、護送車は動き始めた。


「ふぅ、やれやれ……」


 護送車が去って行くのを見たスネックとボーノは、話しながら歩き始めた。


「まだこの調子で奴らが攻めに来るんかねぇ?」


「かもな。でも、奴らの正体がわかったからこの仕事はやりやすい部類に入るぞ」


「そうか? 奴らのアジトがまだ分からねーんだぞ。結局アジトの場所は言わなかったし」


「確かにな……」


「アジトの場所さえ分かれば一気に攻めに行ってぶち壊してやるってのによー」


「あんまり無茶をするなよスネック」


 無茶を言うスネックに対し、笑いで返した後、ボーノはパンジー王女と女子軍団プラスシュウが庭にいることを確認した。


「庭に出て大丈夫なのかよ」


「こもりっきりだし、少しは外に出した方がいいんじゃないか? それに、史上最強のバカップルもいるから大丈夫だろ」


 と、緊張感の欠片の無いスネックの返事が欠伸と共に帰ってきた。ボーノはバカップルの存在と凄腕のスナイパーであるティラの力を信じ、大丈夫だろうと思った。


 一方庭では、パンジー王女が庭にある花に水やりをやっていた。クララは庭にある花を見て、目を丸くして驚いていた。


「これ……かなり貴重な花ですよ」


「ああ、コレメチャレアですか? この花はとても希少ですが、我が国の植物研究で何とか種を残す事が出来たんです」


 パンジー王女はそう言って、コレメチャレアと言う花の説明をしていた。希少な花を見て感激するクララをよそに、ストブとフィアットは面白そうに周りを見渡していた。


「面白ーい、まるで植物園みたーい」


「ぶっふぉ、なんか変な草があるんだけど」


「ブフッ‼ ほんとだ。何なのこのヘンテコな草は?」


 二人は面白そうにその草を見ていたが、その草の上に少し大きなハエが飛んできた。その瞬間、パンジー王女は大声で二人に叫んだ。


「気を付けて‼ そいつはハエズキグサ‼ 飛んでる虫を飲み込んでしまうし、ハエズキグサは剣よりも鋭い牙を持っています。人の指なんて簡単にちょん切ってしまいます‼」


 パンジー王女の説明を聞いた二人は青ざめた様子で後ろに下がった。それと同時にハエズキグサは突如口を大きく開け、上に飛んでいたハエを飲み込んでしまった。中でハエの羽音がしていたのだが、しばらくして羽音は聞こえなくなった。


「何で怖いものが存在するの……」


「すみませねん。ハエズキグサもとても希少な植物なので……」


 パンジー王女が謝るようにこう言ったが、キャニーはパンジー王女の肩を叩いてこう言った。


「バカに謝る必要はありません」


 その後、バカップルはパンジー王女の周辺を守り、他の戦士たちはそこから離れた所を見張ることにした。今、バカップルがいるところは見渡しの良い所。こっちから敵の確認もできるが、下手すれば敵のスナイプもできそうな場所だ。だが、シュウはいつでも狙撃できるようにライフル銃を構えており、クリムも魔力を開放していた。そんなバカップルを見てか、パンジー王女はこう言った。


「本当にすみません……兄のせいでこんなことになってしまって……」


「大丈夫ですよ。慣れっこです」


「護衛の依頼過去何度もやってきました」


 と、バカップルはパンジー王女にこう言った。だが、パンジー王女は少し不安そうな顔をしていた。


「私……怖いんです。また兄が悪い人をここへ送って来るのではないかと思い……こんな気持ちになるとしたら、王位を兄に譲った方がよかったのかもしれません」


「あの男は王には向いていません。バラ女王の話を聞きました。ドクダミ元王はわがままで身勝手な愚か者。更に自分の目的のためには他者他国を簡単に傷つけてしまうとんでもない男です。愚かとしか思えません。そんな奴がまた王になったら、とんでもない事になります」


「奴が攻め込んで来たとしても、俺たちがあなたを守ります。絶対に守ります」


 バカップルの言葉を聞き、パンジー王女の不安は少し溶けた。そう思ったバカップルは互いの顔を見合わせてよかったと表情で合図した。




 その頃、城内の見回りをしていたタルトとジャックは、城のある一室にいた。


「何だこれは……」


「マジかよ、こりゃー爆弾だぜ」


 二人が見つけたのは赤いランプが点滅している爆弾らしき物体だった。その一方で携帯電話を見ているドクダミは画面上で城内の様子を見ていた。その映像には、タルトとジャックの姿が映っていた。


「仕方ない、予定より早く行おう……」


 そう呟くと、ドクダミは手元のベルを強く叩いて鳴らし、ドクロハンドのメンバーを集めた。


「今からワラフ王国に攻め込みに行くぞ‼ 予定より少し早いが、了承してくれ‼」


「オッケーでさぁボス‼」


「さぁ、あの国の連中を血祭りに上げましょう‼」


「殺戮パーティーの始まりだぜェ‼」


 ドクダミの話を聞き、やる気満々のメンバーは大声を出して武器を振り回していた。


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