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意外な黒幕

 数分後、シュウたちギルドの戦士たちはバラ女王の所へ来ていた。周りの兵士たちが慌てながらシュウたちの周りに集まり、バラ女王に敬礼をした。


「皆さん。娘のパンジーの命を狙う輩の正体がわかりました」


「本当ですか!?」


「じゃあ自白剤は必要ないねー」


 クリムやシュガーがこう話す中、ジャックは二人に静かにしろとジェスチャーした。その後、バラ女王はため息を吐きながら話を続けた。


「パンジーの命を狙うのは……パンジーの実の兄、ドクダミです」


 この話を聞き、タルトは小さな声でやはりなと呟いた。クリムもやっぱりと思いつつ、バラ女王を見つめていた。


「一部の人は黒幕が分かっていたみたいですね」


「ええ。ドクダミが起こした事件は有名ですから」


「まだ生きていたのですね」


 と、タルトとクリムの話を聞いていたのだが、シュウやキャニーはこの話を聞いて分からないような顔をしていた。それを見て、クリムはシュウに近付いた。


「先輩、覚えてないんですか?」


「ああ。確か俺が赤ちゃんの頃だったかなー、テレビかなんかでそんな事件があった事を見たような見なかったような……」


「では、改めて話をします」


 バラ女王はそう言うと、咳ばらいをして話を続けた。


「今から十五年前、私の夫はドクダミに王位を譲って天へ旅立ちました。ですが、ドクダミは王位を手にした時からやりたい放題の政治を行い、民の批判を買いました。私もドクダミにこれ以上やりたい放題をすると更に評判が悪化すると言ったのですが、ドクダミは自分の言う事を聞かない奴は殺してやると言い、自身の事を悪く言った民の虐殺を始めたのです。その件があったため、私はドクダミから無理やり王位を奪い、家族の縁を切ったうえで彼を追放しました」


「それが、パンジー女王が王位を継ぐと聞いて殺しにかかってきたんだな」


「そうです。先ほど、ドクダミから連絡があったのです。俺に王位を譲れ。さもなくば妹を殺すと」


 ドクダミから連絡があった事を聞き、ボーノは驚いた顔をした。


「あちらさんは攻撃的だねぇ。直接こっちに連絡しに来るとは」


「ドクダミがどうやって今の私の連絡方法を手にしたか分かりませんが……とにかくドクダミが絡んでる以上、パンジーの護衛を強化してください。ドクダミはきっとパンジーを殺しに来ます……」


 バラ女王の話を聞いた後、シュウたちは一斉に威勢のいい返事をした。


 その後、女性陣とシュウは再びパンジー女王の部屋で護衛を続け、男性陣で城の守備を固めることにした。シュウは部屋の中でパンジー女王に話しかけた。


「話は聞きました。実の兄に命を狙われるなんて考えてもいませんでした」


「私も驚いています。あの時はまだ四歳だと思います。その頃の記憶は覚えてないんです。だから、兄がいたなんてことは思ってもいませんでした」


「兄と言ってもかなり歳が離れています。先輩、これがドクダミの情報です」


 クリムはシュウに近付き、ドクダミの情報を見せた。


「あの事件の時は十九歳か……十五年前って言ってたから今は三十四位か」


「どーして歳が離れてるんですか?」


 と、シュガーが顔を出してクリムにこう聞いてきた。クララもその話が気になったのか、クリムに近付いた。


「分かりません。まぁ、なんかいろいろあったんでしょう。その辺はプライバシーなので、気にしないという事で」


「面白そうなのにな~」


「人のプライバシーを楽しむのは失礼だと思いますが……」


 シュガーがつまんなそうにこう言うと、クララが冷ややかな目でこう言った。




 同時刻、ワラフ王国の国境付近にある大きな廃工場の中。一人のマントを羽織った男が工場内へ入り、中央にある大きなドラム缶を蹴り飛ばした。ドラム缶の下には地下へつながる梯子があり、それを使って下に降りた。降りた先には扉があり、男は扉を蹴って中に入った。


「お? 機嫌が悪そうですねぇドクダミ元王‼」


 と、中にいた女性と絡んでいる男が大声で茶化しながらこう言った。マントの男、ドクダミは剣を持ち、茶化した男の開いた足の間に剣を突き刺した。


「冗談のつもりでも俺の事を元王と呼ぶのは止めろ。早死にしたいならそう言ってもいいんだけどな」


「ケケケケケケケ。冗談だよじょーだん‼ それよりか、おめーんとこのババアには話が通ったか?」


「ああ。王位を譲らなければパンジーを殺すと伝えた」


「ケーッケケケケケケケケケケ‼ 面白くなってきたなぁ‼ 王位の為に妹を殺すか、正気じゃねーなやっぱり‼」


「王位の座を奪おうとする奴は妹であろうと殺す。あのババアもいずれ始末してやる。俺が王になったらすぐに処刑で首を落としてやる。奴が愛した民の目の前でな」


「綺麗なワラフ王国に汚ねーババアの血の雨が降るってか。ケケケケケケケケケ‼ すんげー悪趣味‼ 俺様が一番だーい好きな奴だ‼」


 男が下品な声を上げながら笑っていると、後ろから別の男のドロップキックが後頭部に命中した。


「何すんだフォーヒャ!? 酒がこぼれちまったじゃねーか‼」


「下品な声を出すなフォン。俺はお前の笑い声が嫌いだと何度注意した?」


「知ったことかよクソ真面目‼ ここでテメーを血祭りにしてもいいんだぜ?」


「止めろフォン。仲間同士で殺し合いなんてするもんじゃない」


 と、フォーヒャとフォンの喧嘩を止めるかのように一人の男が間に入った。フォンは男を見て、舌打ちをして魔力を抑えた。間に入った男はドクダミに近付き、こう聞いた。


「俺の情報網によると、パンジー女王の護衛に賢者のクリムがいると聞いた。その話は出たか?」


「あのババアがそこまで言うはずないだろ。お前の情報網が確かなら、いると思う」


「そうか……やっとこの機会が来たか……」


 男はそう言うと、炎を発して興奮し始めた。フォンは男を見て、慌てながら近くにいれてあったバケツの水をかぶせた。


「オエ‼ フォン、その汚水で俺を濡らすな‼」


「そこで燃えるお前が悪いだろうがァァァァァァァ‼」


 と言って、二人は口喧嘩を始めてしまった。ドクダミはいつもの事だなと思いながら、自室へ戻った。


 ドクダミが絡んでいる連中は裏ギルド、ドクロハンドである。ドクダミは追放された後、ドクロハンドを結成し、妹であるパンジー女王の命を奪うタイミングを見計らっていた。それが今、始動しようとしているのだ。


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