バラ女王の電話相手
侵入者たちが城の周りに現れ、遠くからパンジー王女の命を狙っていた。しかし、スネック、ジャック、タルト、ラックの活躍により侵入者は倒され、捕まえる事が出来た。この報告を受けたバラ女王は安堵の息を吐いていた。
「分かりました。では、これからギルドの皆様にどうするかを伺ってきてください」
「了解です、女王」
兵士がバラ女王に向かって敬礼をした後、シュウたちの元へ向かって行った。話が終わった後、バラ女王は玉座に座り、深いため息を吐いた。
「一体誰がこんなことを……」
そう呟いた直後、玉座に置いてある携帯端末が鳴り響いた。バラ女王は手にして着信相手を見た。画面に映っている相手の名前を見て、言葉を失うくらい驚いていた。だが、いつまで経っても着信音が鳴りやまないため、バラ女王は恐る恐る電話に出た。
「もしもし? あなたとはもう縁を切ったはずよ」
バラ女王の会話を聞き、兵士たちは小声で会話をした。
「いつもお優しい女王が厳しい態度になってるな」
「きっと嫌な奴が電話相手なんだろう」
「女王に嫌われるとは、どんな奴なんだ?」
「知らねーよ」
そんな中、バラ女王の驚く声が響いた。兵士は驚き、思わず武器を持って周りを見回した。驚いた兵士を見て、バラ女王は何もないと伝えて安心させた。そして、再び電話を取ってこう言った。
「バカな真似は止めなさい。こちらには有名なギルドの戦士もいるのよ……たとえあんたがどんなことをしようとも、必ずパンジーの命は守るわ」
バラ女王の言葉を聞き、兵士たちは驚いた。バラ女王の電話相手はパンジー王女の命を狙う輩かもしれないからだ。それも、バラ女王の電話番号を知っている親しい仲。一体どんな奴なんだろうと兵士たちは考えた。
その頃、シュガーは城の周りで手に入れた薬草を使って薬を作っていた。
「ふんふんふ~ん」
テンポのいい鼻歌を歌いながらシュガーは手慣れた手つきで薬を作っている。だが、シュガーが手にしている試験管や、近くに置いてある薬を入れるビンには見るからに物騒な色をしている液体が入っていた。それを見て、キャニーは恐る恐るこう聞いた。
「あの、この中に入っている液体はなんなんですか?」
「薬草を混ぜて作った自白剤みたいなものだよー。これさえ飲めばどんな口が堅い人でもぺらぺらと秘密をしゃべっちゃうよー」
「それを先ほど捕まえた侵入者に使うんですか?」
「うん。大丈夫、害はないから。多分」
「多分!?」
シュガーとキャニーが話していると、フィアットが欠伸をしながら部屋に入って来た。
「ふぁ~あ、取り調べが終わらないよ~」
「まだ何も話さないの、あの侵入者たち?」
「うん。ティラさんとクリムちゃんの火使いの友人が脅すかのように取り調べをしてるんだけど、全く効果がないの」
「ちょっと待っててねー、自白剤を作ってるから」
シュガーの話を聞いた後、フィアットは暇つぶしに辺りを見回した。すると、近くにシュガーが作った薬を見つけた。バカなフィアットはそれをジュースと勘違いし、手にしてしまった。
「おいしそうなジュースがあるじゃん。いただきまーす」
「あああああああああああああああ‼ それは自白剤だよ‼」
慌てたシュガーがフィアットを止めようとしたのだが、時すでに遅し、フィアットは自白剤を一気飲みしてしまった。その後、フィアットの動きは止まり、目は虚ろで催眠術にかかったかのように大人しくなってしまった。
「あーあ、こうなったら明日までには戻らないんだよねー」
「全く、本当にしょうもない子ね……」
キャニーは呆れてため息を吐いた後、フィアットが声を出した。
「本当にしょうもないのはキャニーの方だー」
「何ですって!?」
「自白剤を飲んでるから、色んな事を答えちゃうの」
「私何も質問してないけど」
「きっと何か言ってるって解釈をしたんだよ」
と、シュガーがこう言うと、フィアットは再び口を開いた。
「やーいやーい、自分の解釈で先走りしやがって、おっちょこちょいのキャニー」
「自白剤を飲んだんですよね? なんかいつもと変わらない気がするんですけど!?」
「自白剤を飲みました。ちょっとオレンジジュースっぽい味がしておいしかったです。でもちょっと苦かった」
「うーん、多分フィアットさんはちょっとだけ薬に対抗できる抗体があるんだと思います」
「その通りです、私の体内は悪い病気に対抗するための抗体がめっちゃあります。なので、病気にかかったことはありません。キャニーと比べて体が強いんです」
「頭は弱いくせによく言うわね」
その後、シュガーとキャニーはぼーっとしているフィアットをその場に寝かした後、休みを取るために外に出た。部屋の外にはバカップルが立っていた。
「シュガー、自白剤を取りに来たんだが」
「中が騒がしかったので、話が終わるまでここで待機してたんです。なんかあったんですか?」
「それがね、フィアットさんが自白剤を飲んじゃったの」
「ジュースと間違えたんです。本当にしょうもない……」
二人の話を聞き、バカップルは少し呆れた。会話の後、バカップルは取り調べを行っている部屋に戻ろうとして歩き始めた。そんな中、慌てている兵士の姿を見つけた。